帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (8)(帯状)膝下野(25野) 3)膝下野の機能やその障害 3)「うつ病」(その二)

帯状皮質って中間管理職なのか
(8)(帯状)膝下野(25野)
3)膝下野の機能やその障害
3)「うつ病
3-2)うつ病と「セロトニン」その他
◎前帯状皮質膝下野を中心とした情動関連神経回路(ネットワーク)が、円滑に働くように、セロトニンが潤滑油として機能する。しかしながら、慢性的ストレスなどでセロトニン神経が機能不全に陥ると、うつ病が発症する。
注1)「セロトニンが体内で増える」と、「積極的に行動しようとする気持ちや幸福感が増す」。逆に、減少すると気力が失せて、物事に無関心になり、症状が進むとうつ病になることもある。セロトニンを減少させる働きを持つ物質にストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」がある。コルチゾールは、ストレスに敏感に反応するホルモンとして知られていて、脳を覚醒させる働きがある。
注2)うつ病患者の海馬の萎縮が多数報告され、うつ病では視床下部・下垂体・副腎皮質系の機能障害による高コルチゾール血症(コルチゾールが過剰分泌されることより慢性的な高コルチゾール状態)が高率に存在し、これが海馬神経を傷害するともいわれている。
注3)脳内「セロトニン」を生成する「縫線核」群は、大脳皮質、大脳辺縁系視床下部、脳幹、脊髄など広汎な脳領域に投射する。
注4)セロトニンは、行動促進作用のあるノルアドレナリンドーパミンの「暴走を抑え」、心の「バランスを整える」作用のある伝達物質である。なお興奮性(活性化)神経伝達物質は、ドーパミングルタミン酸、アドレナリンである。逆に「抑制性伝達物質」には、「「GABA(ガバ)、グリシン、そしてセロトニン」がある。
注5)ノルアドレナリンは、うつ病の治療に使われる成分で、無気力や無関心などの症状を改善する。
3-3)うつ病と(長短)報酬予測とセロトニン
◎短期の報酬予測と長期の報酬予測に関与する神経回路は異なり、「セロトニン」神経は、その内で「長期の報酬予測の制御」に関与している。1)短期報酬予測条件では、前頭前野眼窩部や大脳基底核の一部で、2)長期報酬予測条件では、前頭前野外側部、頭頂葉大脳基底核、小脳、脳幹でセロトニン神経縫線核によってその活動が増加する。具体的には、1)セロトニンレベルが低い状態では、線条体の腹側部のみに短期の報酬予測に関わる活動が見られ、2)セロトニンレベルが高い状態では、線条体の背側部のみに長期の報酬予測に関わる活動が見られる。即ち、「セロトニン線条体の活動を調節」する。
参照)「報酬」に関しては、「5-2)前帯状皮質」の「4)「報酬」」
注)1)短期報酬予測課題では、眼窩前頭前野ー島皮質・線条体下部(腹側)を含む神経回路が活動し、2)長期報酬予測課題では、背側前頭前野ー島皮質・線条体上部(背側)ー背側「縫線核」を含む神経回路が活動する。「被殻」において、1)短期報酬予測には腹側(下)部が、2)長期予測には背側(上)部が関与するという時間的スケールに対応した分布が見られる。
「島皮質」は、1)腹側部から2)背側部に向けて、「報酬予測」値に相関する短い時間目盛りから長い時間目盛りという脳活動地図を持つ。同様に「線条体」でも、その腹側部から背側部に向けて、「報酬予測誤差」に相関する、同じ「時間軸目盛り地図」を持つ。つまり島皮質と線条体の間に部位対応する連絡が存在する。言い換えると、「線条体」では、腹側部(短期予測)から背側部(長期予測)にかけて「短期から長期の報酬予測」に関わる活動が行われる。
1)情動的な機能を司る「線条体腹側部」を含むネットワークが短期的な報酬予測に関わり、2)より高次な認知的機能を司る「線条体背側部」を含むネットワークが長期的な報酬予測に関わる。並列ネットワークは、「時間軸」を基にして機能分化をしている。
なお大脳基底核は、大脳皮質下にある尾状核淡蒼球視床下核被殻黒質で構成され、その内で尾状核被殻線条体と呼ぶ。
うつ病患者では、セロトニン低下により長期予測機能が低下している。その結果として、目先の短期的思考優位になり将来に希望がもてなくなる。