帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (15)前頭前野 3)前頭前野の全般的機能

帯状皮質って中間管理職なのか
(15)前頭前野
3)前頭前野の全般的機能
前頭前野は、脳の最高中枢として、定型的慣習的反応様式(無意識反応)では対応できないような状況において、1)「内外の状況を把握」し、それに対して2)「適切な判断」を行い、3)「行動を組織化」する、という役割を果たす。つまり、「意識」と強く関わる領域である。特に能動的意識と親和性がある。
◎基本的に、「前方から後方へ」向かって、表現される内容が「抽象的内容から具体的動作へ」と移り変わる。これは、前頭葉全般に当てはまる基本的規則である。
◎更に、大脳皮質全般で、内側に向かうほど、体内情報、即ち過去の記憶情報、辺縁系・脳幹情報への依存が大きくなり、外側に向かうほど、現在の生の感覚情報への依存が大きくなるという傾向がある。
前頭前野の前方部(最前部)では、他の脳部位から情報を集めるという側面は薄れ、前頭前野内でのやりとりが顕著になる。前方部は抽象的で長期間にわたる行動計画に関与し、後方部は具体的でより直近の行動計画に関与するという傾向がある。
前頭前野について、
1)「外側部」は、ワーキングメモリー(作業記憶)、反応抑制、行動の切り替え、企画・計画、認知・実行機能を主に担っている。
2)「内側部」は、心の理論、社会行動に関わる。安静時に活動性が増す。前帯状皮質をも含めた内側部は、社会的行動を支えるとともに、葛藤の解決や報酬に基づく選択、心の理論・社会性機能など多様な機能に関係している。
3)「眼窩部」(腹側部)は、下位からの情報を踏まえた情動・動機づけ機能と、それに基づく意思決定過程に重要な役割を果たしている。
◎脳における「情報処理システム」は、「感覚器官」からの情報が、「視床」を経由して1)「扁桃体」に転送される「情動」処理「腹側経路」と、2)「大脳皮質」を経由する「認知」処理「背側経路」の二重のシステム構造になっており、「前頭葉」が、それら1)情動処理経路と2)認知処理経路とが出合う場所である。その内で、2)「認知」処理系である「背外側前頭前野」で判断、計画が立案され、1)「情動」処理系である「眼窩腹内側部」で生物学(個人性優先)的、社会的(社会性優先)評価を行う。
◎強いストレスは、前頭前野内のドーパミン濃度を上昇させる。一方、老化に伴って前頭前野内のドーパミン濃度は減少する。どちらの場合も認知機能は低下する。
注)前頭前野ドーパミンは、認知課題遂行中に比して、安静時に前頭前野外側部では減少し、内側部では増加する。