帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 6)ドーパミン(その二)

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-2)前帯状皮質(個別機能)
6)ドーパミン
6-2)腹側線条体嗅結節(匂い判別機能)
腹側被蓋野からのドーパミン神経系は、扁桃体・「嗅結節」・側坐核帯状皮質への投射経路を通じて、情動的な行動選択に対して、報酬回路としての役割を果たす。
◎腹側線条体の一部である嗅結節は、嗅覚一次中枢である嗅球から直接投射を受ける「嗅皮質領域」の一部であり、同時に側坐核とともに腹側線条体を構成する。
注)線条体は、新線条体(背側線条体)と腹側線条体に区分される。その内で腹側線条体は、側坐核と嗅結節で構成され、背側線条体は、被殻尾状核で構成される。
◎「嗅結節」には、「食べ物の匂い」を嗅ぐと食べたいという動機(意欲)が生じ、危険な匂いを嗅ぐと避けたいとの気持ち(嫌悪感)が生じる。嗅結節には、食べ物の匂いで摂食欲を引き起こす意欲神経回路と、危険な匂いにより忌避を引き起こす嫌悪神経回路が、別々に分かれて存在する。摂食行動では嗅結節の前内側部領域が活性化し、警戒行動を示す時には外側部領域が活性化する。つまり嗅結節は、匂いから食べ物か否かの判別機能を持つ。
注1)嗅結節は、食べ物の匂いに対する誘引行動だけではなく、幼少期に経験した匂いに対する誘引性など、香り・匂い一般への誘引性に関わる。嗅結節は、匂い情報に関してのゲート機構(検問所)の役割を持つ。
注2)「心地よい」においを嗅いでいる時には、「島皮質」が活性化するが、「不快」な状態の時には、「前帯状皮質扁桃体」とが活性化する。
◎第二次味覚野でもある前頭前野眼窩部は、不確実な報酬条件での意思決定に関与する。ここから腹側線条体および腹側被蓋野に投射する。つまり眼窩部は、嗅結節へ食品の情報(特に匂い)を伝える主要な部位でもある。
注)大脳辺縁系には、大まかに言えば、1)好き嫌い」を判断する「扁桃体」と、2)「やる気」を起こす「側坐核」と、3)「行動化」へと差し向ける「視床下部」とで成り立つ。
6-3)ドーパミンの内側皮質辺縁路(中脳-辺縁系路)
ドーパミンの内側皮質辺縁路(3)中脳-辺縁系路)は、中脳腹側被蓋野を起点とし線状体腹側(側坐核)、中隔核、扁桃体、分界条基底核に投射する。この経路は前頭葉にも投射する。
注)「中隔核」は、大脳辺縁系に属し、海馬や扁桃体と密接な関係にある。更に視床下部や脳幹とも連絡があるので、「自律神経の上位中枢」として働く。中隔核には脳幹の縫線核からセロトニン作動性神経の入力があり、自律神経機能と情動の形成に深く関わる。
◎内側皮質辺縁路ドーパミン(3)中脳-辺縁系路)は、特に皮質下において、摂食、摂水、性行動などの「欲求行動」の制御と深く関連する。従って動機付けや報酬の神経機構として機能する。この経路の刺激は動物の「環境探索行動」を増大させる。逆に、この経路の活動性低下は、随意行動や強化を減少させる。
帯状皮質は、その内側皮質辺縁路と密接な相互線維連絡を有している。この経路を介して、前頭葉は間接的に欲求、動機付けを上位から制御している。故に、この経路の損傷は、時に極度の無感情と随意運動の欠如を特徴とする無動性無言を生じさせる。
前頭葉帯状皮質⇒内側皮質辺縁路⇒大脳辺縁系(扁桃体側坐核)
6-4)腹側被蓋野ドーパミン神経は批評家
◎始めは単なる「中性的感覚情報」に過ぎなかった情報が、「報酬系領域」で、その感覚情報は、ドーパ ミンによる「報酬情報との添付統合」によって、「高次報酬の価値」として意味付けされる。オペラント条件付けでは、ある行動が「強化」という機能によって「能動的に」学習される。
注)「強化」とは、条件づけの学習の際に、「刺激と反応を結びつける」手段、働きである。広義には報酬、罰などの強化子(仲介者)も含める。つまり、ドーパミンは、報酬系の強化(子)として反応促進剤(触媒)の役割を果たす。
線条体(側坐核)では、報酬を伴う刺激や行為の情報が、ドーパミン信号によって価値のあるものとして大きな重みづけが与えられて記憶され、価値の表象(記憶情報)が形成される。
ドーパミン神経は、行動を起こす時に「得られると期待」される褒美・報酬の量と、行動を起こした結果、「実際に得られた褒美・報酬の量」の「誤差」に応じて興奮する。すなわち、期待値と実際値の開き(差)が大きいほど、つまり想定外な褒美・報酬が得られるほどに、ドーパミン神経細胞は喜び勇んで強く活性化する。
その活性化の度合いに比例して、行動を起こすのに関与した神経結合の「シナプス伝達効率を向上」させる。つまり、ドーパミンの活性度が大きければ、一度っきりで学習してしまう。
このように、予想外の褒美・報酬をもらえた時には、腹側被蓋野ドーパミン神経細胞は強く活性化する。しかし、毎回毎回予想通りの褒美・報酬がもらえると、もはやドーパミン神経細胞は活性化しなくなる。
つまり、特別事態(サプライズ)から通常事態(習慣化)へと切り替わる。逆から言えば、意識的に意欲的に積極的に行動しなくても、無意識的に自動的に処理される。
こうして、その想定外の事態への新たな対応行動を起こすことで報酬を得られる(成功体験をする)と、その行動プログラムが書き加えられたり、古いものと書き換え(上書き保存)られたりする。
このようにして、人間を始め動物は、成功を積み重ねて行くことを生得的に方向付けられる。
注)ドーパミン神経は、報酬予測誤差、即ち、予測された報酬と実際に与えられた「報酬の(予測と実際の)差分に反応」している。ドーパミン自体が快感をもたらすわけではない。全くの単なる仮説であるが、ドーパミンとは、前頭前野において、意識を起動させる働き(ドーパミン=意識(能動性・意欲))を持つのではないだろうか。

ドーパミン

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