帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (15)前頭前野 4-2)前頭前野「内側」部

帯状皮質って中間管理職なのか
(15)前頭前野
4-2)前頭前野「内側」部
4-2-1)内側前頭前野
前頭前野内側部(内側前頭前野)は、行動を発現するための「動機付け」の制御に関与する。また「心の理論」をはじめ、「文脈の理解」、倫理・道徳に関す「価値判断に伴う感情」などの機能を担う。
4-2-2)腹内側前頭前野(「前頭極」)
◎10野最前部のみが前頭極に当たり、それよりも後部の10野は腹内側部に当たる。眼窩前頭前野の内側部分と内側前頭前野の腹側部分(特にその前部)にまたがる領域を「腹内側前頭前野」(前頭極)という。前頭前野腹内側(10野14野)は、前頭葉内側壁の脳梁膝より下部の周辺を指す。
注)14野の扱いは、確定していない。眼窩部とする説もある。
◎腹内側部は、「情動・動機づけに基づく意思決定」に関わる。10野:前頭極(吻側前頭前野)は、前頭葉(前頭前野)の最前方部に位置する。内側面では、9野の下部、11野の上部、32野(背側前帯状皮質)の前方部に位置する。外側面では、9野と11野に挟まれた部位にあり、46野(背外側前頭前野)の前方部に位置する。脳全体の皮質領域の中で、「髄鞘化が最も遅い」領域である。前頭極外側部は、進化的に「人において初めて出現」した部位で、「最も抽象度が高く、高次な複雑な情報の統合機能」を持っている。
◎前頭極は、「帯状束」を経由し、帯状皮質前部(24野)および後帯状皮質脳梁膨大後部皮質(31野23野)に至る強い線維連絡を形成する。前頭極から「鉤状束」を経由し、扁桃体および側頭葉腹側部にも強い線維連絡を形成する。前頭極から「最外包」を経由し、上側頭回中央部および島皮質への強い線維連絡がある。このように前頭極の持つ認知機能は非常に多岐にわたり複雑である。
前頭極は、より高次の目標を達成するために、複数の認知操作を組み合わせていく必要がある状況で活性化し、複数の事柄を同時に処理する関係統合に関わる。過去の経験を踏まえ自己の要求に沿った効率のよい長期の見通しを組み立てるという複雑な多重課題の統合に関わる。
注1)側頭葉腹側部の損壊は、記憶課題の障害を起こす。
注2)最外包(側頭葉の聴覚関係領域から前頭葉の運動前野を結ぶ白質)は、前障と島皮質の間を走っている。前障の両側に、白質繊維である最外包と外包がある。前障は、最外包(内側)と島皮質(外側)の間に密集した核の集まりとして存在する。
参照)「帯状束」「鉤状束」に関しては、「14))連合線維、帯状束、脳弓」
注3)10野全体が前頭極に該当するのではない。10野は、前頭極、眼窩部と区分けされる。
◎作動記憶をはじめとする認知機能(遂行機能)は、情報の更新、注意の切り換え、抑制などの下位機能に分けられる。
◎前頭極外側部は、最も抽象度が高く、高次な情報の統合機能、例えば、複雑な要因が絡む将来の記憶(展望記憶)に重要である。またブランチング課題(同時にいくつかの情報を保持しながら、複数の作業を次々に行う課題)に重要な役割を果たす。つまり複数の作業を同時並行、短時間で切り替えながら同時進行で行うマルチタスクを可能にするような効率化に関わる。特にモニタリングのような俯瞰的な視点を構築するために注意を切り替える機能に関わる。
◎前頭極内側前方領域は、それよりも後方領域と比べ、より複雑な処理に関与する。常に複雑な並行処理に強く関与する。内側領域は、外的環境の知覚的変化を感知する注意システム(背側注意システム)に関与し、外側領域は、(外的環境の知覚が関係せず記憶情報だけで形成された)イメージの処理(腹側注意システム)に深く関与する。つまり前頭極内側領域は、両注意システムに関与できる位置にある。
◎自分自身の認知の過程を俯瞰的主観的に捉えて内省的に評価する能力は「メタ認知」とよばれる。前頭葉の先端部にあたる前頭極のみが、未経験の出来事に対するメタ認知判断「経験済みか未経験か」を確定的に予測できる。
注1)9野:前頭前野背外側部(上前頭回前部)は、過去に経験した出来事に対するメタ認知判断をする。そして、前頭極がそのメタ認知機能(判断)をメタ認知する。
注2)未知の出来事に対するメタ認知判断の成績がよい時ほど、前頭極と海馬の神経活動が同期を強める。つまり、前頭葉(特に前頭前野)が未知の事象と既知の事象とを異なる情報伝達系にもとづいて処理し、その両方が前頭極で統合されて、「既知感」および「未知感」の意識体験を生む。
◎未来に関して思考する際に、前頭極の内側前方領域が活性化する。展望記憶は、未来に実行すべき情報を覚えておき、タイミングよく思い出す記憶(リマインダー)機能を指す。自らの予定や他者との約束などを自発的に想起する際、我々はふと思い出したと感じるが、思い出すべき行為の「内容」想起の背後には、そもそも何かすべきことがあるという「存在」想起がなされている。前頭極前方領域は、そのような潜在的な存在想起に関与する。
◎「存在想起」の可否に最も影響した病変部位は、「側頭葉内側部」で、次に「前頭葉内側部」が高い影響を呈した。「内容想起」の可否でも「側頭葉内側部」`は高い影響を呈し、次いで「前頭前野背外側」、「側頭葉外側部」の順となり、前頭葉内側部の影響は低かった。つまり側頭葉内側部は存在想起と内容想起の両方に高い影響を与えるが、前頭葉の各部位(内側部と外側部)については存在想起と内容想起で関与の仕方が異なり、存在想起では前頭葉内側部が、内容想起では前頭葉背外側の影響が高い。
◎前頭極は、マインドワンダリングに関わる。特に「前頭極内側」領域は「デフォルトモードネットワーク」の一部である。

前頭葉

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