帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (15)前頭前野 4)前頭前野の部位別個別機能 4-1-0)前頭前野「外側」部

帯状皮質って中間管理職なのか
(15)前頭前野
4)前頭前野の部位別個別機能
4-1-0)前頭前野「外側」部
前頭前野には、中央部の「内側」前頭前野、底部の「眼窩」前頭前野、頭蓋骨に沿う「外側」前頭前野)(8野9野10野46野47野)がある。内側前頭前野と眼窩前頭前野は、大脳辺縁系(と脳幹)と密接な関連があるのに対して、外側前頭前野はそことの結び付きは比較的弱い。他方、外側前頭前野は、他の前頭前野領域や、頭頂葉、側頭葉、高次運動野など「大脳新皮質領域」と連携することによって、「行動の企画」をする場であり、「中枢実行機能」(中央実行機能)を担っている。行動の目的を決定し、それを達成するために必要な行動や動作を時間軸に沿って計画する過程において、外側前頭前野は必要不可欠である。
注1)前頭前野外側部を、9野10野11野46野47野とする説もある。
注2)中央実行機能の基本的な機能は、定めた目標に沿って、下位の認知・記憶システムを制御する最高位の機能のことである。
◎「行動抑制」に関係して、前頭前野外側部の特に下部(腹側:47野:腹外側)で活性化が見られる。行動の抑制は、前頭前野の活動と密接に結びついている。特に、背外側前頭前野や下前頭領域の活動との関連が強い。行動の抑制は、実行機能の一つである。つまり、「実行機能」は、行動の「抑制」、「切り替え」、「更新」の3要素に分割される。
注)下前頭回は、弁蓋部(44野)、三角部(45野)、眼窩部(47野)を含んでいる。
◎「セルフコントロール」(自己抑制)に関係して、前頭前野外側部の活性化が見られる。より報酬を得ることのできる長期的に満足のいく結果を得るために短期的な満足感を抑制するという「選択肢を制御」する(自己抑制)能力を持つ。
◎自己抑制には、主に2つの脳内ネットワークが関与する。1)「短期」的な利益については腹側線条体や「内側」前頭前野などの「報酬」関連部位が関わり、2)「長期」的な利益については「外側」前頭前野頭頂葉の一部などの「認知」的制御や行動抑制と関わる領域が活性化する。
注)頭頂間溝(上頭頂小葉と下頭頂小葉に分けられる溝)領域が、(外側)下前頭葉や前補足運動野(6野内側前方)と協調しながら、反応抑制機能を起動させる。
4-1-1)前頭前野「背外側」部
◎背外側前頭前野(8野9野10野46野)は、「下位階層」の大脳基底核扁桃体視床下部と密接な線維連絡を有している。
◎背外側前頭前野は、抽象的思考など高次認知活動に関与する。一般的に「情動発現に対して抑制的に働く」。例えば、悲しい状況や性的な写真に、「意識」的に悲しみの感情や性的な感情を「抑制」すると、「背外側前頭前野」が活性化する。つまり情動機能に対して、背外側前頭前野は、上位からの抑制装置として機能する。
◎否定的・不快な・負の感情を抑制する能力を、一時的ではなく慢性的に欠如する人では、「内向」すると、「うつ病や不安症」になりやすい。逆に「外向」すると、「攻撃行動や暴力行為」をきたしやすい。つまり背外側前頭前野は、それらを抑えた、更に一段上から総合的な「理性的判断」を下すことに関わる。それに対して島皮質は、情動的判断に関係する。
◎非個人的(個人とは無関係)な道徳的葛藤において、功利的な判断を下す人では、背外側前頭前野の活動が亢進する。危険な状況の認知と予測に、背外側前頭前野が関与する。
アルコール中毒者やコカイン中毒者に、それぞれアルコールやコカインに関連した刺激を呈示すると、背外側前頭前野の活動が上昇する。
疑問)前頭前野背外側部は、功利的判断を下すとともに、中毒者が中毒原因物を見ると、背外側前頭前野が活動するというのは、矛盾するように思える。
解)理性的判断を下す場合も、欲望が頭をもたげた情動的判断にも関わる背外側前頭前野だが、それは異なる部位に分かれるからなのか、矛盾を統合できる概念を持っているのかは不明。もしかすれば、欲望を受け止めつつも、それを抑制する機能を持つのか。
前頭前野背外側部は、現在時点ではなく将来における報酬の獲得のため、意欲の持続や環境状況の認知(推論、予測など)に関与し、最終的な目標達成(報酬獲得)に重要な役割を果たしている。
4-1-2)前頭前野「腹外側」部
◎前部島皮質と腹外側前頭前野は、「失語症」(大脳の言語を司る部分が損傷されたために起こる言葉の障害)をおこす脳部位の1つである。
注)失語症の原因脳部位としては、1)大脳優位側の前頭葉の下前頭回後部(運動言語中枢:44野と45野)の障害でブローカ失語が、2)側頭葉の上側頭回後部(感覚言語中枢:22野)でウェルニッケ失語が、3)弓状線維束障害で伝導失語が生ずる。
意味記憶そのものは、側頭葉を主体とするネットワークに存在するが、その「随意的な想起」には、左腹外側前頭前野の役割が重要である。
注)「意味記憶」は、特定の場所や時間に関係せず、物事の意味を表わす、知識に相当し、言語とその意味(概念)、知覚対象の意味や対象間の関係、社会的約束など、世の中に関する組織化された記憶、一般的な知識・情報など「抽象度の高い記憶」である。それに対して、個人的な経験や思い出のように、いつ・どこで・どんなことがあったかというような出来事についての「具体性の高い記憶」を、「エピソード記憶」という。所が、ミカンが意味する、大きさ、色、形、味や、果物の一種であるという具体的知識などに関する記憶は、意味記憶という。こちらの意味記憶は、通常同じような経験の繰り返しにより形成され、その情報をいつ・どこで獲得したかのような個人的な付随情報(個人性情報)の記憶は消失し、一般的内容のみが記憶されたものである。
時間・空間情報のない没個性的意味記憶に関わる神経基盤は、側頭葉である。側頭葉前方部での限局的な萎縮によって、単語、物品、人物などの「意味理解」が選択的に障害される意味認知症が生じる。特に、「左」側頭葉前方部の萎縮では「語義」の障害が、「右」側頭葉前方部の萎縮では「人物」の意味記憶が障害される。

前頭前野の活性

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