帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (15)前頭前野 4-3)前頭前野「眼窩」部

帯状皮質って中間管理職なのか
(15)前頭前野
4-3)前頭前野「眼窩」部
◎(10野)11野・12野・47野の内側部が、眼窩前頭前野に該当する。前頭前野眼窩部は、前頭葉の腹側面(下部・底部)に位置している。
注)47野:下前頭前野(下前頭回眼窩部)(前頭前野腹外側部)
前頭前野眼窩部の線維連絡は、前頭前野背外側部、辺縁系(視床下部扁桃体、海馬、帯状回側坐核など)、視床線条体、前脳基底部、腹側被蓋野などと広い範囲に及ぶ。特に「辺縁系とは連絡が強い」。前頭葉の中でも唯一、「すべての感覚情報」に関する大脳皮質からの入力がある。だが運動系への出力は弱く、線条体腹側被蓋野、前脳基底部を通して間接的に伝わるだけである。
前頭前野眼窩部は、多種感覚の情報が入力する一方で、扁桃体(情動)からも豊富な入力を受け取る。眼窩前頭前野は、こうして集められた情報を総合することによって、感覚情報の価値(生体にとっての意味)を判断し、適切な行動へと結びつける。
◎眼窩部の後ろよりの部分は、味覚、嗅覚、内臓感覚の入力がある。より前方にある部分(13野の前よりの部分と11野)は、視覚、聴覚、体性感覚情報の入力がある。前頭前野眼窩部では、これら前方部の情報との後ろの部分からの味覚、嗅覚情報との連合が生じている。このように眼窩前頭前野には、感覚情報として、視 覚、聴覚、体性感覚とともに味覚、嗅覚情報も、つまり五感情報全てが集約している。更には扁桃体を中心とする辺縁系とも密接な結びつきがある。
◎眼窩前頭前野は、異なる2つのネットワーク(内側・腹側ネットワークと外側・背側ネットワーク)に関わる。
1)外側ネットワークは、扁桃体や外側眼窩部へ出力している。他方嗅覚、味覚、視覚、体性感覚、内蔵感覚に関連する感覚野からの情報の入力を受けている。
2)内側ネットワークは、内側壁(25野24野32野:いずれも前帯状皮質)に出力しており、扁桃体、内背側視床、内側側頭葉のさまざまな場所(海馬、海馬傍回など)、腹側線条体視床下部、中心灰白質から入力を受けている。
◎眼窩部は、すべての感覚情報を受ける、感覚情報に関しては最高次の中枢であり、受容した外界環境情報を脳内に再現し、それに基づいて生物学的な行動計画を作成する。更には、帯状皮質吻側部(25野:膝下野)と密接な線維連絡を有し、外界環境情報を元に生物学的評価を下す。
前頭葉系(前頭葉背外側部、眼窩部、前帯状皮質)は、扁桃体から情動情報を受け取るだけではなく、扁桃体における情動および行動発現を制御している。つまりより高い位置から扁桃体(情動)を制御抑制する。
前頭前野眼窩部は、「報酬」や嫌悪刺激の「価値の評価」に関わるとともに、それらの「予測」、「期待」にも関係している。言い方を変えると、前頭前野眼窩部が、「報酬」性刺激の1)「認知」とそれに対する2)「動機づけ形成」に強く関与し、更に情動・動機づけに基づく3)「意思決定」に重要な役割を果たす。
前頭前野背外側部は、ある行動を行うときに脳内に貯蔵されているさまざまな選択肢(記憶情報:過去経験)から候補を取り出してくるが、前頭前野眼窩部は、下位から来る今現在の状況に照らし合わせて最も関連のある選択肢(生の感覚情報)を選び出す。
前頭前野眼窩部は、推論や計画に関わる前頭前野背外側部と、情動にかかわる辺縁系やさまざまな感覚にかかわる脳部位とを繋なぐ。
◎「左」下前頭回眼窩部は、「読解(文章理解)」に関係する。