帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (8)(帯状)膝下野(25野) 3)膝下野の機能やその障害 3)「うつ病」(その一)

帯状皮質って中間管理職なのか
(8)(帯状)膝下野(25野)
3)膝下野の機能やその障害
3)「うつ病
参照)「うつ病」に関しては、「7)帯状皮質の障害と症状」の「1-2-1)うつ病」。
3-1)うつ病と脳機能
◎悲しみを体験したときは、帯状皮質膝下野が活動する。うつ病は、抑うつ気分、興味・喜びの喪失を主な特徴とする精神の働きの変化によって、「感情や行動」などに著しい「片寄り」が見られる状態(病態)である。
注)「抑うつ」とは、気分が落ち込んで何にもする気になれない、憂鬱な気分などの心の状態を意味する。
◎「うつ病」に関わるのは、背外側前頭前野(9野46野の機能亢進)、認知機能の前帯状皮質(24野32野の機能低下)、「前頭前野眼窩部(11野の機能亢進)、情動機能の膝下野(25野の機能亢進)、情動的判断の扁桃体(機能亢進)、記憶機能の海馬(機能亢進)などの領域である。だが別の研究結果は、真逆に近く、うつ病群は健康対照群に比して、左前頭葉優位に前頭前野背外側部、前頭極、膝下野に有意な血流低下を認める、と述べる。左半球、右半球が真逆の反応を示すのだろうか。
注1)気分が落ちた際に、感情処理に関する脳の領域である「扁桃体」と、記憶に関する脳の領域「海馬」の間での情報のやり取りが増加する。
注2)前頭前野眼窩部は、10野11野47野である。
疑問)感情全般の喪失ではなく、快系の感情の喪失と同時に不快系感情の過剰がうつ病なのだろうか。ではそれは何故なのだろうか。
解)うつ病患者では、左前頭前野(快の予測)機能の低下により、不快予測機能が相対的に優位となる。結果として、悲観的思考が誘発され易い。「快」の予測には「左」前頭前野が、「不快」の予測には「右」前頭前野が関与する。より詳細に述べると、快情動刺激の予測時においては、左の背外側前頭前野が有意に活動するが、不快情動刺激の予測時においては、右の内側前頭前野扁桃体、前帯状皮質の活動が有意に活動する。快・不快の情動予測に左右差が認められる。
うつ病や不安障害などの人は、帯状皮質の認知領域(24野32野)の機能が低下し、情動領域膝下野(25野)が過敏になっている。通常は、認知領域と情動領域は、相互に抑制し合っている。
うつ病患者では、前帯状皮質の下部領域(膝下野)(25野)が低活動を示す。それだけではなく、うつ病患者の25野は健常者より小さい。感情の形成や社会的認知に関係する前帯状皮質の膝下野は、海馬、扁桃体視床下部などがある大脳辺縁系と、前頭前野前頭葉など認知・行動の制御領域の接点(インターフェイス)である。所が、うつ病患者ではこの25野が過活動になっており、治療によって活動が鎮静化するという報告もある。これは測定時によって、真逆の結果が出るということだろうか。しかし、膝下野の過活動を報告する事例が多い。
前頭葉背側および前部帯状皮質近傍の血流低下は、疲労感を強く感じる者の注意集中力低下を反映する。