帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (7)帯状皮質の障害と症状 1-1-2)自閉症 1-1-2-3)社会性

帯状皮質って中間管理職なのか
(7)帯状皮質の障害と症状
1-1-2)自閉症
1-1-2-3)社会性
◎社会性とは、
1)「対人行動」(他者を「信用し認める」ことができる)、
2)「集団行動」(集団の中で、相互交流して「協調的に行動」できる)、
3)「社会的欲求」(仲間から好意を受けたいという欲求を持つことや仲間として認められたいという欲求を持つ)、
4)「社会的関心」(時代の情勢、風潮に感心を寄せる)を順次適切に持って行くことである。
参考)マズロー(アメリカの人間性心理学者)は、人間の欲求には、1)「生理的欲求」、2)「安全の欲求」、3)「社会的欲求」(所属と愛の欲求)、4)「承認欲求」、5)「自己実現の欲求」の5段階がある、という。社会性とは、その諸欲求で、3)「社会的欲求」(所属と愛の欲求)、4)「承認欲求」が社会性を支える・受容するが、5)「自己実現の欲求」は、その社会性を超越して行く。
◎社会性を支える脳領域は、線条体、「後帯状皮質」、後上側頭溝、左海馬傍回、右前運動野、である。
注)上側頭溝は、顔認知の中でも、特に視線(と感情)の向きや表情の変化などに関係する。
◎「社会脳」とは、「社会の中での自己」を常にモニター(「自己のメタ認知」)することで、社会集団の中の一人の人として「自己を相対化」して捉え、「社会適応の能力」を獲得してゆく能力を受け持つ脳部位を指し示す。三歳から五歳頃が「自他分離」(社会化)の時期である。
◎自己と他者の相互作用においては、「心の理論」が4歳前後で萌芽する。
注)「心の理論」とは、他者の心(の状態)を類推し、それに基づく行動を理解したり説明したり、予測したりする能力である。
◎心の理論に関する脳内メカニズムは、「右半球」を中心として存在する。「内側前頭前野」(特に背内側部)は、ある状況に置かれた自己や他者に注意を向け、自己の立場から離れ、「他者の立場でものごとを考える」(客観視する)際に活性化する。
注1)前頭前野内側部とは、8野(前頭眼野)、9野(前頭前野背外側部)、10野(前頭極(吻側前頭前野))、12野(前頭前野眼窩部)を含む内側領域と、24野(腹側前帯状皮質)/32野(背側前帯状皮質)の前帯状皮質を含む領域を指す。
注2)前頭前野外側部と腹側淡蒼球が、社会的動機づけに関与する。その内で、腹側淡蒼球(大脳基底核)は、側坐核と嗅結節からのGABA作動性の抑制性入力を受ける。視床の背内側 (MD) 核に投射する。そのMD核からは前頭前野へ興奮性の投射がある。情動と運動を結びつける腹側淡蒼球は、報酬(有益な結果)を予測し、やる気を制御する脳部位の一つである。
◎サルの話であるが、「頭頂葉」は、他者との社会的競合(取り合う、奪い合う関係)がない場合には、「自己の身体運動」に反応を見せるだけであり、近くに他者が居ても、その他者の動きを認知している様子は見られない。
しかしながら、2頭のサルの間に一旦「競合関係が発生」すると、頭頂葉は、その反応様式を切り替え、「自己と他者の行動の両方」に反応するように変化する。つまり、頭頂葉の神経機能が社会文脈の変化に対応して組み立て直される。
即ち、まわりの空間や環境を認知している頭頂葉が、他者との社会的相互関係に応じて仕組み機能を変える。つまり、自分の行動を中心に活動していた頭頂葉が、他者との関わり(競合性)が発生した時に、その働きを変えて他者の行動にも反応するようになる。
ということは、頭頂葉の空間認知が、単純に「物理的な他者」の存在に反応しているのではなく、過去の経験に関しての記憶など様々な情報を統合して、「自分にとって社会的意義を持つ存在として他者」を認識される。
注)競合によって、同じ仕事、同じ分野、同じ利益、同じ食べ物、同じおもちゃなどを互いに取り合う場合、競合関係にあるという。