帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (10)帯状皮質運動野 3)帯状皮質運動野との接続(線維連絡)

帯状皮質って中間管理職なのか
(10)帯状皮質運動野
3)帯状皮質運動野との接続(線維連絡)
3-0)帯状皮質運動野は情報の大集積拠点
帯状皮質運動野は、側頭連合野前部、頭頂連合野下部、前頭前野外側面、前補足運動野、帯状皮質、眼窩前頭前野扁桃核、海馬傍回、後頭葉(鳥距溝後部)、島皮質、視床(外側腹側核の口領域と視床髄板内核群、視床前核、後外側腹側核の口領域と外側腹側核の尾側部)から入力を、また、中脳からドーパミン性入力を受け取る。
即ち、1)側頭・頭頂連合野から「外界環境に関する情報」(五感情報)を、2)辺縁系などから情動・内的欲求や身体状態などに関する情報(心身情報)を、3)前頭前野から行動全体の遂行状況に関する情報(意思情報)を受け取る。
注1)側頭連合野は、側頭葉の中で一次聴覚野(41野42野)を除く領域である。上は聴覚認知、下は視覚認知、形態視覚を扱う。
注2)頭頂連合野は、一次体性感覚野(1野2野3野)を除いたその後方の頭頂葉領域を指す。中心後溝の後方領域に相当し、頭頂間溝よりも上方を上頭頂小葉、下方を下頭頂小葉という。
注3)扁桃体帯状皮質運動野吻側部(24野)→顔面神経核(橋)の経路が、感情的な表情の表出に関与する。
帯状皮質運動野からの出力に関しては、一次運動野、脳幹(赤核、橋)、脊髄、補足運動野、前補足運動野、運動前野、大脳基底核(主として被殻吻側部および視床下核)へ投射する。つまり、帯状皮質運動野は、内外情報、現在過去情報、意図企画情報を統合して、「自発的な行動を実現」する拠点である。
3-1)帯状皮質運動野と自発(動機付けによる)運動
帯状皮質運動野は、「帯状皮質」と多くの神経接続があり、海馬、扁桃体視床下部など大脳辺縁系からの情報を強く受けている。また帯状皮質運動野は、「前頭前野」の、外側部だけでなく内側部、眼窩部からの入力もある。つまり、帯状皮質運動野は、上に前頭葉が乗っかり、下に前帯状皮質が位置して、サンドイッチの具の位置に当たる。
帯状皮質運動野からの出力としては、前頭葉の一次運動野および高次運動野に広範に出力する。また、脊髄、橋核、赤核線条体視床などへも出力する。つまり帯状皮質運動野は、様々な領域から集めて集約した情報を、「運動情報に変換して運動関連領域へと出力」する。
◎前帯状皮質は、「情動」、「痛み」、「体内環境」情報に関する(下位階層からの)情報を集約する。帯状皮質運動野は、こうした「情報を受けて」、それに基づいた「動作の制御」に関与する。
帯状皮質認知領域(24野:帯状皮質運動野を含めて)が、前頭前野背側部からの「認知情報」や眼窩部および前帯状皮質情動領域(25野)からの「報酬情報」「情動情報」を、運動に変換することに重要な役割を果たしている。
帯状皮質(特に前帯状皮質)は、集めた情報を「意識レベルにまで高める」ことにより、随意的意識的「動機付け」となる情報を生成して、次の動作発現(帯状皮質運動野)へとつなげる。だから、帯状皮質を含む脳損傷では、随意的意識的「動機付け」機能を失い無動無言という症状に陥り、自発的(随意的)な動作や発語が減少する。これは、更に上流(前頭前野)からの根本的「動機付けとなる情報(ボトムアップの心身的欲求)の消失」によるものと思われる。
前頭前野の内側面(内側前頭前野)は、行動を発現するための動機付けの制御に関与する。1)帯状皮質運動野や2)(前)補足運動野の障害で生じるように、3)内側前頭前野の障害でも「自発的な動作や発語の減少」がみられる。内側前頭前野は、これらの領域と密接な関係があるので、前頭葉内側面には「行動発現の動機付けを制御」するネットワークが存在する。
注1)内側前頭前野(動機付け情報の最高集約拠点)、帯状皮質運動野(動機付け情報の交差点)、(前)補足運動野(運動限定の動機付け)は、共に動機付けに関わる。前頭前野の3)腹内側部(内側部と腹側部の前部:前頭極)は、情動・動機づけに基づく「意思決定」に関わる。その内で、内側部は2)心の理論・「社会性機能」に、腹側(眼窩)部は1)「情動」・動機づけ機能により大きく関わっている。
注2)(前)補足運動野の損傷は、自発的な発語や運動の開始が著しく困難になる無動性無言の症状を惹き起こす。
注3)「内発的動機づけ」には、前頭前野の1)外側部(知性的認知)と、2)腹内側部(情動・感情)、そして3)線条体(報酬系)が重要な役割を果たしている。
3-2)吻側帯状皮質運動野と尾側帯状皮質運動野
◎吻側帯状皮質運動野(32野の一部)は、外側前頭前野(企画・計画部門)との線維連絡を持つが、一次運動野(下位運動野)および脊髄(実動部隊)との線維連絡は乏しい。
逆に、吻側部よりも後方にある尾側帯状皮質運動野(24野の一部)は、外側前頭前野との線維連絡は乏しいが、一次運動野および脊髄との線維連絡をもつ。
そのことから、吻側帯状皮質運動野は、複雑な行動に関連して、尾側帯状皮質運動野は、それに対して単純な行動に関連して活動を示す。つまり、吻側帯状皮質運動野は、尾側帯状皮質運動野よりも階層的には上位に位置する。
注)前頭葉では、中心(ローランド)溝から前方に位置するほど、高度・高次・上位の機能を担う。頭頂葉では、逆にそこから後方に位置するほど、高度・高次・上位の機能を担う。即ち、「中心溝」を境にして、前に向かうほど高度・高次・上位の機能を担い、中心溝から後ろに向かうほど高度・高次・上位の機能を担う。