帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 14)「意識」と「努力」と「意図」と「心的ストレス」(その二)

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-2)前帯状皮質(個別機能)
14)「意識」と「努力」と「意図」と「心的ストレス」
14-3)努力
◎「前帯状皮質」は、学習の初期や問題解決のような、実行に特別な「努力」(能動性志向性意識)を必要とする課題に特に関係している。
◎任務を最後までやり遂げようと努力できる人と、途中で諦めてしまう努力できない人とでは、脳の3つの部位が大きく関係する。努力家は、報酬系の1)左「線条体」と2)前頭前野腹内側部(=「眼窩部」)が活発に働く。これらの脳から、1)報酬予測の機能が働き、2)脳内快感を得ることで「努力の推進力」を得る。
逆に努力できない人は、3)「島皮質」が活発である。島皮質が活発になると損得勘定で特に否定的に働き、行動にブレーキがかかる。島皮質は体思いである。肉体と精神(努力)とでは、島皮質は肉体側に立つ。
注)島皮質は飽きが来ると活発化する。島皮質は、損得勘定が強く、無駄を嫌い、効率的かつ合理的に最小限の努力で最大の結果を出すことを最優先する。故に、その基準に外れると飽き(集中力の減退)が来る。島皮質は、この仕事は努力する価値があるかどうかを判定する。だから、島皮質が強力な人は、努力出来ないのではなく、努力するだけの価値があるかどうかを見定める。するに値しないとなればさっさと止めてしまう。そういう点では、島皮質が強力な人は合理主義者である。
身体状態を熟知する島皮質であるが、上位階層前頭前野(意志)からの抑制を受ける。超努力家の運動選手は発達した島皮質を持つ。それを上回る前頭前野も必要不可欠であるが。
参考)合理主義者は、慣習や常識にとらわれず、また感情や感覚といった情緒的な思考を排し、理性的に割り切って最も効率的な手段を選択する。
◎努力心は、「報酬系」の線条体前頭前野腹内側部と、「身体的防衛優位」の島皮質との闘いに左右される。島皮質が優勢になると、飽きとして意識される。あやふやな報酬内容(報酬系)とひ弱な意志力(前頭前野)では、強力な飽き(島皮質)に圧倒され、三日僧侶となる。
14-4)意図
◎その時の外界の状況からどのような行動をとったらよいかが自動的に決まらない時に、「未来に向けての意図」が頭をもたげる。その時点での状況ではなく、これから起こす行動の結果として能動的に「引き起こしたい事態」を「目的」(意図)として想定する。その目的の実現のために行動を引き起こす。これに対して、 過去の繰返し学習・経験によって、外界の状況から自動的に引き起こされる行動を「習慣」的行動と呼ぶ。
◎意図とは、外部(行動・表現)には現れていない、志向性を持つ「心の中の気持ち、動機、目的」などを指し示す。例えば、転びそうになってとっさに手を前に出した。手を前に出したのは転ばないため、怪我をしないためであるが、これは意図とは言わない。というのは、脊髄や脳幹による「反射的動作」(自動的機械的定型的行為)だからだ。では何故意図とは呼ばないのか。それは選べる「選択肢がない」からである。では、脳部位のどの段階以上が指示を出せば意図といえるのだろうか。
◎実験で、性的興奮を誘う視覚刺激を提示して、その刺激から自分を離脱させ、興奮を抑制するよう求める。最初に提示された性的刺激に対しては、右扁桃体、右側頭極前方(側頭葉の一番前方の部分38野)、視床下部の活性化が見られた。
注)性欲を司るのは間脳にある視床下部である。
その後の「意図的抑制」条件では、右「前頭前野背外側部」、右「前帯状皮質吻側(25野)」が活性化したが、右扁桃体視床下部などの活性化はなかった。重要な点は、「意図的抑制」条件では、右「前頭前野背外側部」、右「前部帯状皮質吻側」領域の双方で活性化が見られる。背外側システムは、意図(内的表象)の保持によるトップダウン的な情動調整にも関与している。これらの脳部位が「意図を受け持つ」のかも知れない。
情動調整の神経基盤を考える上でもう1つ重要な点は、この背外側システム(外向性)と腹内側システム(内向性)に、 一 方が活性化すれば、他方が抑制されるという相互的抑制関係があることである。
注)側頭極の機能は、意味記憶や、相貌認知(顔を見分ける)や心の理論(他者の心的状態を推理)といった社会的情動的機能を持つ。
参照)「背外側システム(外向性)と腹内側システム(内向性)」に関しては、「5-3)前帯状皮質」の「12)「外向性と内向性」」

脳内革命

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