帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 10)「扁桃体」(その二)

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-2)前帯状皮質(個別機能)
10)「扁桃体
10-2)感情(扁桃体)抑制と内側前頭前野と前帯状皮質
◎「内側前頭前野」(眼窩前頭前野)は、「前帯状皮質」を介して「扁桃体」に投射して、感情を「抑制」的に制御する。「前帯状皮質」と「扁桃体」との「拮抗的」な関係とは、この状況を意味するのだろうか。
内側前頭前野⇒前帯状皮質扁桃体
◎「右」前頭前野は、「感情」や「イメージ」などの非言語的な情報処理において優位に立つ。対して、「左」前頭前野は、言語的な情報処理において優位に立つ部位であるほか、「否定的な感情に関わる扁桃体」の活動を「抑える」働きをする。
10-3)扁桃体と腹側前帯状皮質(32野)
◎5日間の睡眠不足により、「ネガティブな(悪い方向へ受け取る)情動」刺激(例えば他人の恐怖表情)に対する「左扁桃体」の活動が「亢進」した。一方、ポジティブな(良い方向へ受け取る)情動刺激(幸せ表情)に対して扁桃体の活動性は変化しなかった。ネガティブな情動刺激に対する、扁桃体のこのような過剰反応は、左扁桃体と腹側前帯状皮質(32野)との間で、機能的結合が減弱していることに由来する。
疑問)腹側前帯状皮質(32野)は、扁桃体を抑制する立場にあるのか。
解)睡眠不足が強いほど、左扁桃体-腹側前帯状皮質(32野)間の機能的結合はより減弱し、その機能的結合が弱くなるほど、不安や抑うつ傾向がより強まる。というのは、認知領域の前帯状皮質(32野)が、扁桃体の活動を抑える役割をするからである。所が前帯状皮質の膝下野(25野)にはそのような扁桃体の働きを抑制する機能を持たない。
注1)厳密に言うと、前頭前野(内側前頭前野(眼窩前頭前野))は、間接的に(前帯状皮質を介して)扁桃体の興奮を鎮める。前頭前野からの前帯状皮質への入力は、「外側部」だけでなく「内側部」、「眼窩部」からも広汎な領域からの入力がある。内側前頭前野⇒前帯状皮質扁桃体
注2)交感神経活動と関連する脳領域は、前帯状皮質、両側前部島皮質、両側の前部前頭前野である。
注3)「交感神経系」は、「右半球による制御」を優位に受け、「副交感神経系」は、「左半球による制御」を優位に受ける。
注4)恐怖刺激によって、前帯状皮質および前部島皮質との間の機能的結合が増強される。島皮質と帯状皮質は、多くの場合連動しながら働き、情動の知覚や表出に関わる。
10-4)眼窩前頭前野と「扁桃体」と前帯状皮質
前頭前野眼窩部(11野12野)は 、外的(感覚)刺激や内的表象(記憶情報)に「(情動的)価値を付与」する「扁桃体」と 、行為・情報間の「価値競合」の検出に関与する「前帯状皮質」などと協同し、不確実な状況において「中長期的な展望」を維持しながら、価値競合を解決する。
内外情報⇒扁桃体⇒前帯状皮質⇒「前頭前野」(統合)⇒前帯状皮質扁桃体
言い換えると、前帯状皮質吻腹側部(25野32野)、前頭前野背外側部(外向志向)、眼窩部(内向志向)には、外界および内界のあらゆる情報が入って来る。更に、外界からと内臓からの感覚情報が、「扁桃体」に集まり、それが「前帯状皮質」を経由して「前頭前野」(眼窩部や背外側部)に情報を送り、そこで「統合」された(最上位)情報がまた、前帯状皮質を経由して扁桃体にフィードバック情報として伝えられる。つまり、情報は、脳部位を通過する毎に付加されながら循環(リサイクル)する。
10-5)情動性情報と認知性情報の統合
扁桃体-海馬の情動性情報が、前帯状皮質-前頭前野(認知性情報)に入力して、これらから下行性に大脳基底核(運動性情報)を制御している。すなわち、情動性および認知性情報が統合され処理された後の判断が、より広いより高い情動行動を発現させている。
◎価値情報源の扁桃体は、脳内報酬系と食行動の発現に直接関与する視床下部に情報を送るインターフェース(中継拠点)の働きをする。例えば、味覚情報に対して、それが本人にとってどのような価値があるのかという評価を下し、行動発現を引き起こす脳部位(視床下部)に、その判断結果を送り出すという任務を果たすのが扁桃体である。
具体的に述べると、甘味情報は 、脳に入ると中継核を通り大脳皮質第一次味覚野(島皮質)に達する。その部位からは、大脳皮質第二次味覚野(前頭前野眼窩部)や扁桃体に甘味情報が送られる。眼窩部には甘味刺激に応じる細胞が多い。
更に具体的に述べると、チョコレートを一粒口にして「甘い」(感覚)と感じるのは「第一次味覚野」(島皮質)、それに対して「おいしい」(感情的評価)と思うのは、「第二次味覚野(眼窩部)」。所で、扁桃体への味覚情報は、第一次味覚野(島皮質)から入力する。扁桃体へは、味覚情報を含め他の感覚種の入力もある。扁桃体の味覚(価値)情報は、視床下部(行動化)への人力と並列的に、報酬(欲求)系にも送られる。その結果、おいしいと実感すると同時に、もっと欲しいという意欲が湧く。 報酬系の働きは、報酬を期待(予測)して対象物を得ようとする積極的な「意欲」と実際の「行動を発現」へと導くことである。
感覚⇒感情⇒価値評価⇒欲求
報酬系の基本構造は、「腹側被蓋野」(ドーパミン神経)→「側坐核」(線条体)→腹側淡蒼球視床下部外側部である。
注)味覚情報:味覚神経→延髄孤束核→視床(味覚野)→大脳皮質味覚野(第 一次味覚野:島皮質)の順に上行し、更に眼窩前頭皮質(第二次味覚野)、視床下部扁桃体にも味覚情報は送られる。
注)報酬系の中心的役割を担うのは、中脳の「腹側被蓋野」(情報発信)、線条体側坐核である。
扁桃体は、報酬系および嫌悪系と相互に密接な繊維連絡を有し、これら2系の入出力の統合部位である。従って扁桃体は快不快(好嫌)という情動を形成する中枢と言える。
注)各種感覚情報が集合する扁桃体では、食物が持つ複雑な感覚情報を統合し、経験済みの食物では記憶情報と照合してその価値評価を行ない、自分にとって良否、可否を判断する。