帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (3)帯状皮質の連絡・接続 2-4)帯状皮質運動野との接続

帯状皮質って中間管理職なのか
(3)帯状皮質の連絡・接続
2-4)帯状皮質運動野との接続
◎前帯状皮質(帯状皮質運動野)は、橋核を介して、小脳と連絡がある。つまり、小脳は、橋核を介して前帯状皮質(帯状皮質運動野)をも介して間接的に大脳皮質の支配を受けている。
大脳皮質-帯状皮質運動野-橋核-小脳
帯状皮質運動野は、帯状皮質と多くの神経接続があり、海馬、扁桃体視床下部など大脳辺縁系からの情報を強く受けている。
2-5)脳梁膨大後皮質との接続
脳梁膨大後皮質(26野、29野、30野)は、主に側頭葉内側部(海馬、海馬傍回、扁桃体など記憶関連部位)、前頭前野背外側部、視床前核などと連絡がある。
注)前頭前野外側部における記憶関連処理は、「情報の検索」、「作動記憶」、「記憶抑制」、「モニタリング機能」である。
◎29野(脳梁膨大後部帯状皮質)は、空間性、非空間性記憶の習得と保持にとって不可欠な部位である。
2-6)帯状束
帯状皮質の下部は、帯状束という白質繊維の束が通っていて、大脳辺縁系の各領域を結びつける役割を果たしている。帯状束は、帯状皮質の地下ケーブル的な役目を果たす。
参照)「14)連合線維、帯状束、脳弓」
帯状皮質後部は、帯状皮質前部、側頭葉内側部、前頭前野(背外側部)、上側頭溝背側壁、頭頂葉後部、視床尾状核、「前障」などと線維結合を持つ。
参考)「前障」は、大脳皮質の深部(島皮質と線条体の間の白質の中)に存在する薄いシート状の脳領域である。前障は、大脳皮質内のほとんど全ての領野、および扁桃体基底外側部と双方向的に神経連絡している。中でも、前頭前野・島皮質・嗅内野など高次脳機能を司る大脳皮質領野への出力投射が著しい。
前障へ入力する神経細胞は、前障から投射しない脳領域から、即ち視床の一部の神経核や、無名質のアセチルコリン作動性神経細胞、縫線核のセロトニン作動性神経細胞から、である。
前障の機能は、睡眠中や休息中の大脳皮質で見られる「徐波活動の制御」に関わる。つまり、前障神経の活動が大脳皮質領野に徐波を引き起こす。というのは、前障神経活動が、大脳皮質内の抑制性介在神経細胞を選択的に活性化させることで、大脳皮質の神経活動を一斉に抑制させる。覚醒度が高いときには前障神経細胞の活動は低く、逆に休息したり、眠ったりしているときに活動が高まる。前障神経細胞の活動が大脳皮質の徐波を引き起こす。「睡眠休息中の徐波活動は、その直前の覚醒中に学習した記憶を長期的に固定化させる」機能がある。
つまり、前障神経細胞は、睡眠時に大脳皮質の抑制性介在神経細胞の活動を誘発することにより、大脳皮質の多数の神経細胞の同期した静止状態を生み出し、睡眠時の大脳皮質の徐波活動を制御する。また前障が意識のオン/オフに関与している可能性も示唆されている。
注1)嗅内野は、内側側頭葉記憶システムの構成要素として宣言的記憶機能に関わる。皮質と海馬の間に見られる入出力のほとんどは嗅内野を介して行われる。
注2)徐波は、α波より周波数が低いという意味で、δ波(0.5~3 Hz)とθ波(4~7 Hz)に分ける。ちなみに、脳波は、振幅数によってα(アルファ)波、β(ベータ)波、γ(ガンマ)波、θ(シータ)波、δ(デルタ)波にわけられる。
2-7)帯状皮質間での連絡
◎前帯状皮質と後帯状皮質との間では、相互に連絡がある。というのは、「帯状束」が、脳梁に沿い(体の前後方向)ながら、前帯状皮質、後帯状皮質、海馬傍回を連結連絡しているからである。
◎前帯状皮質は、感情とも認知とも両方に関わる。前帯状皮質と後帯状皮質間の相互接続によって、前部実行領域(前帯状皮質)による調節性入力投射が、「お互いの調整制御」(相互制御)を可能にしているからである。
2-8)その他(混在)
帯状皮質前部(背側前帯状皮質(24野)・膝下野(25野))は、前頭前野(特に眼窩部)との間に強力な双方向的神経連絡を持ち、上側頭回とも接続し、皮質下構造とは、視床(前核・背内側核)、中隔、海馬、島皮質、視床下部扁桃体、中脳、橋、延髄と神経連絡を持つ。
注)22野:上側頭回(聴覚性言語野)(聴覚連合野)(ウェルニッケ野:左上側頭回後部)
帯状皮質吻腹側領域(25野32野)は、「扁桃体」や「眼窩前頭前野」と連絡を持ち、情動的な情報処理に関わる。
◎前部島皮質、前帯状皮質扁桃体は、相互に双方向性線維結合をしている。
◎後帯状皮質(23野)に対して、前頭前野頭頂葉、上側頭回、視覚野(後頭葉)から投射がある。
◎後帯状皮質は、主に頭頂葉後部、前頭前野背外側部、視床枕、視床の後外側核・背外側核と連絡がある。
参考)「注意」を向けるとき、「視床枕」(核)で、注意対象に関する情報が処理され、それ以外の物に関する情報が除外される。つまり、視覚野は、注意対象と無視対象の両方に応答するが、視床枕核が、視覚を混乱させる要素(無視情報)を除去する。具体的には、視野内で行動的に意味のある複数の刺激が視覚的注意資源をめぐって競合する場合に、視床枕核の活動が、無視対象ではなく、注意対象によって活発化する。
それ以外にも、視床枕は、皮膚知覚、視覚および聴覚の統合に関与する。そもそも、視床枕は、視床の後部と背外側を形成する大きな灰白質塊で、進化の過程で目覚ましく拡大してきた部位で、霊長類の脳では大きな容積を占めており、回路としては大脳皮質の中でも視覚系皮質領域と密接に結合している。
帯状皮質背側領域(帯状皮質運動野)は、外側前頭前野や補足運動野、運動前野との結合が強く、認知的な課題に関与する。