帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 11)「視床下部(自律神経)」「中脳中心灰白質」 11-1)「視床下部」(自律神経)

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-2)前帯状皮質(個別機能)
11)「視床下部(自律神経)」「中脳中心灰白質
11-1)「視床下部」(自律神経)
◎全身の各臓器は、ばらばらに代謝を行っているわけではなく、それぞれが互いに連携し調整し合いながら代謝恒常性が維持されている。脳は、その身体的恒常性を維持するために、視床下部を介して身体的内部環境を常に調節している。その内部環境の恒常性を乱すストレスが心身に負荷されると、その情報が視床下部に伝達されて、視床下部は、恒常性の回復のために、自律神経系、内分泌系、体性神経系(感覚神経と運動神経)を介してストレス反応を起動させる。
◎「自律神経」は、末梢神経のひとつで、「全身のほとんどの器官を支配」する。この神経は、大脳からの「意識(随意)的な命令から独立」して自律的に働く。名前の由来もそこから来ている。自律神経の内の「交感神経」の中枢は「脊髄」にある。「副交感神経」は脳幹(中脳・橋・延髄)と仙髄から伸びている。その脳幹は大脳の支配を受けているので、結果的には間接的ながら「副交感神経は大脳と密接に」関わっている。
注)「末梢神経」は、中枢神経から体の各方面へ延びる神経をいう。末梢神経は、体性神経と自律神経に分けられる。更に自律神経は、交感神経と副交感神経に分けられる。
◎環境からのストレス(恐怖・不安など)に対処するには、交感神経系の活動上昇が必要不可欠である。恐怖刺激情報は、扁桃体へ届き、そこから直接視床下部や脳幹の自律神経中枢へ送られて、交感神経反応を引き起こす。前帯状皮質や前部島皮質の活動がその交感神経活動と関連する。特に前帯状皮質は、情動の認知と制御に関わる。恐怖と自律神経系とのつながりにおいて、扁桃体(情動)と前帯状皮質の機能的な結びつきが重要な役割を果す。
◎前帯状皮質の神経は、視床下部および脳幹などの自律神経系へ投射している。前帯状皮質の活動は、前島皮質と共に自律神経系の内でも特に「交感神経」活動と深い関連がある。
注)恐怖状況に直面した時に扁桃体が活性化される。その扁桃体から、恐怖状況の内容に関する情報が、視床下部または脳幹などの自律神経系に直接伝達され、交感神経反応を誘発する。つまり、「扁桃体」、「前帯状皮質」、「前部島皮質」への(恐怖)刺激は、「交感神経反応」を誘発する。前帯状皮質とともに扁桃体も自律神経に投射している。
◎前帯状皮質は、「視床下部」(脳幹内間脳)と「大脳皮質」(特に前頭前野、その内でも眼窩部)の「中継点」に位置する。視床下部(自律的無意識的機能)と大脳皮質の(随意的)諸機能を中継し、統合する。例えば、膝下野(前帯状皮質吻側部)(25野)は、呼吸器系(肺・鼻腔・咽頭喉頭・気管・気管支など)の調整とも関わりを持つ。加えて、血圧、心拍数、血流量、呼吸数、体温の調節のような多くの自律的機能に関わる。更には、内分泌系への作用(性腺や副腎皮質からのホルモン分泌の促進)、ペニスの勃起、攻撃性の増加をも促す。
注)前頭前野背外側部は、前帯状皮質と連携を取りつつ情動(特に興奮した情動状態)の制御・抑制などに関与する。前頭前野内側部は、心の理論(他者の情動状態の認知や共感など)に深く関わる。つまり前帯状皮質は、前頭葉背外側部や眼窩部からの高次情報を受けて、適切な行動を導く。
注)前頭前野背外側部は、中性的な情報だけではなく、危険な状況の認知・予測にも背外側前頭前野は活性化する。
◎交感神経活動と関連する脳領域は、前帯状皮質、両側の前部島皮質、両側の「前部前頭前野」である。島皮質からは、自律神経調節に関与する視床下部および脳幹の領域に直接投射する。その内で、前帯状皮質は情報を制御する立場であり、島皮質は情報をモニター(監視)する係である。
◎自律神経系の中枢制御の仕組み、特に交感神経系の制御に関して 、2経路に区分される。1)前頭前野背内側部や眼窩-島皮質から視床下部外側核や中脳中心灰白質腹外-外側部へ投射する経路と、2)前頭前野膝下腹内側部(膝下野:25野)から視床下部後部内側核や中心灰白質背側部へと投射する経路である。
◎「前帯状皮質吻側腹側領域」(25野32野)は、罰や報酬に関連する神経活動に深く関わる多くの部位(扁桃体、眼窩野、視床下部など)からの入力を統合し、 自律神経系ならびに内分泌系に出力し得る位置にある。
注1)恐怖状況に関する情報が、扁桃体から前帯状皮質や前部島皮質を介して、主要な自律神経系の中枢に間接的に伝えられる。
注2)ホラー映画を見た時は、扁桃体と前帯状皮質扁桃体と前部島皮質との機能的な結び付きが強くなる。
◎恐怖感情と、その表出に関わる自律神経系とのつながりにおいて、扁桃体と前帯状皮質の機能的な結びつきが重要な役割を果たしている。
注)左扁桃体と前帯状皮質との間の機能的結合は、恐怖の主観的評価に比例して増加したが、右扁桃体と前帯状皮質の間では増加しなかった。
◎右腹側前帯状皮質領域(32野)は、ストレス時における交感神経系と「視床下部ー下垂体ー副腎皮質」(内分泌)系との反応の「起動」に関与し、左腹側領域はその「調整」に関与している。
◎バイオフィードバックによる交感神経系の調整時に、左前帯状皮質背側部(24野)が活性化する。「意図」的な自律神経系の「調整」には「左側」が関与する。
注)自覚・制御が難しい不随意筋の働きを、センサー等により検出して感覚・知覚できる音・光・皮膚刺激などの形式で対象者に自覚(意識化)させるフィードバック方式を、「バイオフィードバック」という。
注)自覚と意識。「自覚」とは、既に身についている習慣・機能・資格などを、無意識的ではなく、意識的に捕らえ直すことである。「意識化」は、単に無意識的な習慣・機能・資格などを意識上に上げることである。例えば、教師を自覚するとは、自分が既に教師であることを再度意識することだが、教師を意識するとは、心の視野に入っていなかった教師を、心の視野に入れることである。
◎前帯状皮質は、情動的要素の処理をするとともに、自律神経系を制御する。更には、情動の認知的生成と制御にも関係する。