帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 1)「情動」「感情」(その二)

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-2)前帯状皮質(個別機能)
1)「情動」「感情」
1-3)「感情(情動)」と「身体表現」の「結節点」(前帯状皮質)
◎情動の「情」に関わる中心的脳領域は、「前帯状皮質」(結節点)、「前部島皮質」(身体内部情報)、「扁桃体」(情動)である。
注1)前部島皮質は、「情動の生起」と「内受容(身体内部からの情報)の知覚」の両方で活性化する。
注2)扁桃体は、感覚刺激の1)(生物学的)「意味づけ(価値評価)」や2)(好き嫌いの)個人的「価値判断」をする。つまり、感覚情報の情動化を司る。その結果を視床下部、脳幹の中脳・橋などに出力して「身体反応」をも制御する。
注3)意味とは、「外から感じられる」言葉、行為、態度、表現などに込めた、「内なる」内容、狙い、意図、含み、である。
注4)価値とは、生活していくうえでの「必要」や「欲望」を満たし、「満足」を与えるもの、である。
◎「顔面表情」の内で、喜怒哀楽の情動部分を「認識」(意味の読み取り)するのは、扁桃体、島皮質、前帯状皮質である。
1-4)情動やストレスへの(内側)前頭前野の役割
◎厳密には、情動を「評価判定」するのは「扁桃体」であり、情動を「体験し表出」するのは「前帯状皮質」である。
◎情動の定義で感覚刺激への評価とあったが、「外部」からの実際の「感覚刺激」がなくても、例えば、「内部」の「記憶情報」や「意識の変容」(催眠、瞑想など)によっても、情動体験、情動行動、自律神経反応が引き出されることがある。このようなトップダウン的な記憶をたどっての回想による「情動体験」では、「前帯状皮質扁桃体、島皮質」以外にも、「内側前頭前野」が活性化される。つまり「記憶回想による情動体験」の「引き金」は、「内側前頭前野」と言える。例えば、嫌な出来事を「想起」した時に、内側前頭前野や前帯状皮質の情動に関連した領域(32野)、大脳基底核、「海馬」などが活性化する。
◎前帯状皮質および前部島皮質が、恐怖などの「感情」と交感神経活動(生理反応・身体表現)の間の「結節点」(中継点・仲介者)である。更に言えば、交感神経活動と関連する脳領域は、前帯状皮質と両側前部島皮質と両側前部前頭前野の領域である。
注1)ストレスを感じると、脳は交感神経を刺激して、一過性に体に負担(活性化)をかけてストレスから逃れようとする。詳細に述べると、ストレスや情動の処理を行う内側前頭前野の中の背側脚皮質・背側蓋紐領域(正中部にある内側前頭前野の中で最も腹側部(最深部)に位置する脳領域)から視床下部背内側部への神経伝達路があり、心理ストレスを受けた時にはこの伝達路を通じて情報伝達が行われ、交感神経系が活性化する。
注2)尾状核視床は、失望した表情の認知に関連する。これらの部位の活動は、ストレスを誘発する単語を不快と評価した被験者ほど強い。なお、視床の両側に存在する尾状核は、大脳基底核に位置する神経核である。余談だが、尾状核は、脳の学習と記憶システムの重要な部分を占める。直観的思考の際に活動するのは、前頭葉側にある尾状核頭部で、楔前部から届く情報を元に、長期記憶の情報なども組み合わせて直観的に答えを導き出す。
注3)快刺激を予測している時には、左背外側前頭前野、左内側前頭前野、右小脳の活動が認められる。対して、不快刺激を予測している時には、右下前頭前野、右内側前頭前野、右扁桃体、左前帯状皮質、および両側の視覚野(左右後頭葉、右楔部、左舌状回)の活動がみられる。
◎内側前頭前野や腹側前帯状皮質(32野)が、情動的な自己関連付け(自分に関わりがあると見なす:自分事化)処理に深く関わる。