帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 2)「痛み」と「痛み」知覚と痛み「体験」(その二) 

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能)
2)「痛み」と「痛み」知覚と痛み「体験」
2-2)痛みと催眠
参照)「催眠」に関しては、「*1帯状皮質(個別機能2)」の「9)「催眠」」
◎「催眠」による「鎮痛暗示」中での右背外側前頭前野(46野)の活動は、左前帯状皮質、左中部帯状皮質(24野)、左背内側前頭前野、右下部頭頂葉、右海馬傍回の活性と機能的連関を示した。
他方、鎮痛暗示中での右背外側前頭前野の活性が小さい人ほど、活動が大きかった脳領域として、右腹内側前頭前野、左後帯状皮質が挙げられる。つまり、両者は反比例する。
注)「背外側」前頭前野は、記憶、認知、意欲、判断に関係する。「背内側」前頭前野は、コミュニケーション、共感、社会性に関係する。「腹内側」部(内側部と腹側部の前部)は、情動・動機づけに基づく意思決定に関わる。つまり、個人性(内面)に関わる。
◎痛みは、感覚的成分と情動的成分に大別される。催眠は、前帯状皮質に作用(不活性化)することで、主観的な痛みの感覚(情動的成分)を低下させる。
参照1)帯状皮質前部は、「状況を自分が制御」しているという能動性(志向性)意識が働いている状態で活性化する。催眠は、能動性(志向性)意識の働きを止めて(弱めた)、受動性意識に切り換えさせる。
参照2)「8)(帯状)膝下野(25野)」の「7)自分事化(自己制御、自己努力、自己選択)(自己帰属化)」
◎知覚される感覚(刺激)強度を変えずに、「催眠」教示(暗示)によって刺激の「不快感(情動)のみ」(受容側)を変えると、体性感覚野ではなく、「帯状皮質のみ」に痛みの不快評定と相関する形で血流量の変化が現れた。つまり、「痛みの体感的強さは、前帯状皮質の活性度の高さと比例」する、ということを意味する。
参考)痛みの抑制:
1)痛み刺激→腹側被蓋野ドパミン放出→側坐核→大脳皮質に作用し痛みの抑制。この痛みとドーパミンの関係を解説すると、中脳辺縁系では、「腹側被蓋野」から側坐核腹側淡蒼球前頭葉扁桃体などへ神経線維を伸ばしているドーパミン回路が存在する。具体的には、「痛み刺激」が加わると、「腹側被蓋野」が活動し、「ドーパミン」が放出される。それによって主に「側坐核」で鎮痛作用を持つ「オピオイド」が産出される。なおオピオイド受容体は、扁桃体、「帯状皮質」、腹側被蓋野側坐核などの部位に高密度に存在している。
2)下行性疼痛抑制系は、上位にある脳幹部から脊髄後角に下行し、痛覚情報の中枢神経系への入り口である脊髄後角で痛みの伝達を抑制する。中脳や延髄のオピオイド受容体が活性化されると、この下行性疼痛抑制系が作動する。具体的には、中脳中心灰白質からのアミノ酸作動性神経が、延髄の「大縫線核のセロトニン作動性神経」を興奮させ、脊髄の痛覚神経を抑制する。延髄の胞網様核から下行する「ノルアドレナリン作動性神経」による下行性抑制系も存在する。
ということで、下行性疼痛抑制系は、「オピオイド」だけでなく、「精神的興奮」、「精神的集中」、「恐怖」などでも作動する。
注)オピオイドは体内で作られ、生理的状況あるいは生体に危機が迫ったときに放出される物質で、エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィン、エンドモルフィン等がある。

*1:5-3