帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 1)「情動」「感情」(その三)

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-2)前帯状皮質(個別機能)
1)「情動」「感情」
1-5)前帯状皮質と認知と情動
◎前帯状皮質が損傷すると、何処でどの程度痛みがあるかという「認知」(知的な客観的了解)はしっかりとできるが、痛みに伴う「不快感や情動反応、自律神経反応」などの主観的「情動体験」(体感・実感)は生じない。
注)「感覚と認知」は、客観的知識(情報)である。前帯状皮質は、主観的「体感、体験、実感と情動」を担う。体験とは、自分が実際に身をもって経験することである。つまり、これが自分自身だという実感は、前帯状皮質が担当しているということだろう。
参考)精神分析に「知性化」と言う用語がある。それは、受け入れ難い感情や欲求に対して、無意識裏に「知識を用いて」対処する「防衛機制」である。防衛機制とは、認めがたい自分自身の(下位階層からの)感情や欲求から来る不安や葛藤といったつらい感情を感じずに済ませるための対処方法をいう。意識化という、意識のまな板に載せてしまうと、課題として対処しなけばならなくなる。つまり、それを避けるための対決の先延ばしである。「意識化」は、「前帯状皮質」の役割である。
1-6)前帯状皮質の亢進⇒情動亢進
◎より情動に敏感な女性ほど、情動的な短いビデオを見ている際に前帯状皮質の活動レベルの上昇が見られる。
◎前帯状皮質の「活動が亢進」してしまうと、「情動も強まる」。この情動は、ポジティブな(望ましい)快・楽ではなく、「ネガティブの(回避したい)情動」(怒り、イライラ、悲しみ、不安など)が強まる。
◎前帯状皮質は、強い不安を感知すると、認知行動の切り替えを行う。つまり、「冷静な客観的認知行動」から「主観的情動行動」へと切り替える。俗にいう、キレた瞬間である。
疑問)帯状皮質が亢進する仕組みは何なのだろうか。
解1)悲しい絵を見ると、ドーパミン貯蔵容量の大きい人ほど扁桃体と前帯状皮質の活動が高まる。
解2)悲しい状態では、25野(膝下野)の血流量が増加して、逆に扁桃体の血流量は減少する。幸福な状態では、25野の血流量が減少して、扁桃体の血流量は増加する。この場合は疑問に対して因果関係が逆であるが、逆もまた真なりとなるのか。
1-7)前頭前野の情動制御処理促進⇒前帯状皮質活動の抑制
◎「共感的サポート」(相手の気持ちに寄り添った応答)によって、「心の理論」を介して、相手の意図を汲み取る時には、「側頭葉上部」が活性化される。そのことによって、前頭前野における「情動制御」処理が促進される。その結果、前帯状皮質(情動領域)の活動が抑制されて、心の痛みが緩和される。
注)「優位半球」(通常左半球)の「「側頭葉上部(上側頭回)」には「言葉を理解」する部分がある。後半部に「感覚性言語野(ウェルニケ野)」がある。劣位半球は、音楽や環境音に関わる領域がある。
疑問)「前頭前野における情動制御処理」とは具体的にはどういう方法に依るのか。
解1)左の外側前頭前野は、前帯状皮質の活動とは負の相関(逆相関)を持つ。つまり、左の外側前頭前野の活動が亢進するほど、前帯状皮質の活動は抑制される。
解2)大脳皮質では、約20%の神経細胞が抑制性神経細胞である。抑制性神経細胞の大多数は、介在神経細胞とも呼ばれ、興奮性神経細胞からの出力を調整し、出力の同期性を制御したり、過剰興奮を防ぐなど重要な機能をもつ。なお大脳皮質の神経回路は、興奮性の錐体細胞と抑制性の介在細胞で構成されている。
◎自己の感情状態(内面、情動)に注意(意識)を向けると、前帯状皮質背側領域(24野)が活性化する。「自己内省」課題を行っている時には、前帯状皮質(32野)、内側前頭前野(10野:前頭極)、後帯状皮質(23野31野)、楔前部(7野)を含む「大脳正中内側部領域の活動が増大」する。