帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-1)前帯状皮質 4)前帯状皮質の機能(全般的提示)

帯状皮質って中間管理職なのか 
(5-1)前帯状皮質
4)前帯状皮質の機能(全般的提示)
4-1)前帯状皮質は非常に多くのことに関与
◎前帯状皮質は、大きく分けると、1)「情動領域(24野、32野、25野、33野)」と、2)「認知領域(24野、32野)」(帯状皮質運動野)に分けられる。
注)その内で「情動に中心」的に関わるのは、「25野」であり、「認知に中心」的に関わるのは、「24野(32野)」である。
◎前帯状皮質は、報酬予測、意思決定、共感、条件付けられた情動学習、(体内の状態の表出に関連する)発声、動機づけ、内外の刺激に対する情動の均衡を保つ評価、母子の相互関係、エラー(誤り、間違い、過失、勘違い、誤差などの)検出、課題の予測・検出、情動反応の調節などなどに関与する。
4-2)ボトムアップ処理とトップダウン処理
◎前帯状皮質は、前頭前野からの(トップダウン的)意識的注意と辺縁系以下からの(ボトムアップ的)無意識的動機(情動・欲求)とをつなぐ、取捨選択する。前帯状皮質の基本的機能は、「認知(大脳新皮質)」と「感情(情動・動機:大脳辺縁系)」を「関係づける」「統合させる」ことである。
◎前帯状皮質は、大脳辺縁系だけではなく、大脳辺縁系よりも更に下位階層に属する、自律性を有する「脳幹」に投射して、「自律機能」や「内分泌機能」をも間接制御する。
注1)「前帯状皮質、前部島皮質、扁桃体の関係」。前帯状皮質の神経は、視床下部および脳幹などの自律神経系へ投射している。大脳皮質である扁桃体、前帯状皮質、前部島皮質への刺激は、交感神経反応を誘発する。例えば、恐怖状況の内容に関する情報は、扁桃体から前帯状皮質または前部島皮質を介して、自律神経系に間接的に伝えられる。なお島皮質と前帯状皮質とは、双方向接続を有する。更には、扁桃体から前帯状皮質および前部島皮質への相互接続も有する。
注2)「脳幹」は、多種多様な「神経核」から構成される。広義には、1)間脳(構成要素:視床視床下部、脳下垂体、松果体、乳頭体)、2)中脳(構成要素:被蓋、上丘、下丘、黒質赤核、大脳脚)、3)橋、4)延髄、を含む部位を指す。脳幹には、運動神経路が存在する。
注3)神経核は、中枢神経内で主に灰白質(ニューロン(神経細胞)の細胞体が集まる領域)からなり、何らかの神経系の「分岐点や中継点」となっている「神経細胞群」を言う。
◎前帯状皮質は、前頭前野頭頂葉、運動系領域(前頭葉後部運動野)や前頭眼野(前頭前野に属す)とも接続して、刺激の(意識的)トップダウンと(無意識的)ボトムアップの処理や他の脳領域への適切な「制御の割り当て」の中心的役割を担っている。
◎前帯状皮質「認知領域」は、「自己の行動の結果生じた出来事」の評価とそれに基づいた意志決定、行動発現に関わる。他方、眼窩部や前帯状皮質「情動領域」は、「自己の行為以外の原因で生じた」出来事、あるいは外界感覚刺激の評価とそれに基づいた行動発現に重要な役割を果たす。
◎前帯状皮質は、情報の「抑制」や「制御」が必要な課題全般で強く活性化する。ある意味、「情報の交通整理係」(進めと止まれ、オンとオフ)である。
4-3)認知、情動、実行(行動)、評価
◎「前帯状皮質」と「前部島皮質」は、認知(背側:24野)的、感情情動(腹側(=内側):25野32野)的、および行動実行(帯状皮質運動野)的、評価的な文脈に関与する機能システムの「入出力(中継)領域」である。
注)帯状溝の背側部と腹側部を含む領域(24野32野)が、認知機能に関与する。
◎前帯状皮質は、「複雑性」の理解に関わり、「不確実性」や「対立(葛藤、矛盾)」をチェック(モニタリング監視)する機能を持 つ。そのため、前帯状皮質が大きい人ほど不確実性や対立への認容性(受忍限度・包容力)が高い。
注)「複雑性」「不確実性」「対立(葛藤、矛盾)」に共通するのは、異なった「複数の事柄」に関わるということである。
疑問)帯状皮質が大きくなる要因は何なのだろうか。
解)一般的には、よく使用する器官は発達し、使わない器官は退化するという「用不用」が当てはまる。例えば、集中瞑想の間、前頭前野の活動は広い範囲で抑えられているが、注意制御に関係する前帯状皮質の背側部(認知領域)だけは活動を続けている。世代を超える用不用(獲得形質の遺伝)説は否定されているが、個人内の用不用は極めて一般的な現象である。
◎前帯状皮質は、種々の情報に同時に注意を向け、正誤を判断する場合のような高次の脳機能に関与する。
◎前帯状皮質は、学習の初期や問題解決のような、実行に特別な「努力を必要」とする(意識的注意を要する)課題に特に関係している。