帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-1)前帯状皮質 5-7)欲求を認知

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-1)前帯状皮質
5-7)欲求を認知
◎下(下位階層)からの渇望(強い欲求)が沸き起こっている時には、内側前頭前野、眼窩前頭前野、前帯状皮質が活性化している。これは「眼窩前頭前野ネットワーク」と重なる。
注)ボトムアップ型欲望を欲求というが、トップダウン型欲求は意志として扱われる。
◎例えば、タバコを吸いたいという欲求(喫煙欲求)は、前頭前野腹内側部(眼窩前頭前野)で形成される。更に前頭前野背外側部(背外側前頭前野)が、喫煙に関わる状況(TPO)に応じて喫煙欲求を促進または抑制する。より具体的に述べると、背外側前頭前野は、喫煙可能な状況の認識に基づいて喫煙欲求を促進・抑制するなどの認知処理した情報を眼窩前頭前野へ送り、そこで喫煙欲求に対する行動を形成している。
なお、「欲求の抑制」は、前頭前野などの認知制御、感情に関連する領域、腹側線条体・帯状膝下野(25野)・扁桃体・腹側被蓋などの欲求に関連する領域が関わる。
またアルコール依存症者は、アルコールを見ると、前帯状皮質が強く活性化する。前帯状皮質の認知領域(帯状皮質運動野)が、前頭葉背側部からの認知情報や眼窩前頭前野および前帯状皮質の情動領域からの情動情報を運動(行動化・実行)に変換する位置にある。
注)「内的欲求」(本音)を実現化する前頭前野腹内側部(眼窩前頭前野)に対して、「社会性」(建前)を体現する前頭前野背外側部(背外側前頭前野)が上位階層として立つ。
5-8)嘘反応
◎幼い子に「心の理論」が出現する時期は、およそ4歳ごろで、「4歳から6歳」で獲得・発達してはじめて、嘘をつくこと、相手を裏切ってだ ましたり、自分の身を守るために相手を欺く嘘をついたりすることができる。
注)「心的状態を推測」する心理課題を課すと、上側頭溝、下頭頂葉、前帯状皮質扁桃体前頭前野内側部、前頭前野眼窩部がネットワーク化して活性化する。
◎「正直な反応」をすることが人間にとって「自然な行為」であり、嘘をつくに当たっては、前頭前野による行動の制御が必要である。つまり、「正直は、無意識的(ボトムアップ的)言動」であるが、嘘の言動は、前頭前野という意識(反応抑制)を介さなければ実行できない(トップダウン的)行為である。自然な正直さは、前頭前野の機能を必須とはしないが、意図的な(思惑を秘めた)正直さは、嘘をつく行為同様、前頭前野の機能を必要とする。
言い換えると、嘘をつく、相手をだますためには、多様な認知的過程が必要となり、真実を言う場合に比べてより認知的負担が大きい。というのは、嘘をつくということは、1)真実を知っているわけであり、それを2)抑圧(反応抑制)して、更には、そうではないこと(3)創作された嘘)を提示しなければならないからである。
自然な正直さを発現するか、思惑を秘めて意思の力で正直さを発現するかは、その個人の報酬への反応性に依存する。つまり、報酬への期待が大きい程、自然な正直さが発現しにくく、それに対する意思の力が必要となる。報酬への無欲が自然な正直をもたらす。
◎嘘を言う、嘘の行動をするなどの「嘘反応」をすると、両側前頭前野腹外側部(下外側前頭前野)、上内側前頭前野、前帯状皮質、運動前野腹側部、島皮質、頭頂葉が活性化する。嘘をついている時に、特に前帯状皮質、運動前野、眼窩前頭前野に高い活動が見られる。
◎嘘をつく際には、そのことは事実でないという記憶表象(メタ記憶)が必要であり、しかもそれを事実の記憶表象と区別する必要性がある。例えば、パーキンソン病において、嘘をつけなくなるという症状があるが、そこには前頭極におけるモニタリング機能の低下が関与する。
注1)47野:下前頭前野(下前頭回眼窩部)(前頭前野腹外側部)
注2)運動前野腹側部(下前頭回)(45野)=ミラーニューロン
注3)下前頭回(45野46野47野9野)
注4)能動的な注意制御やメタ認知は、前頭前野や前頭極が担う。