帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (14)連合線維 1-2)脳弓

帯状皮質って中間管理職なのか
(14)連合線維
1-2)脳弓
◎「脳弓」は、「大脳辺縁系」の複数の領域をつなぐ。具体的には、主として「海馬体」から出て「乳頭体」、「中隔核」に至る神経線維束で、脳梁の下で左右対をなして弓形を描く部位である。脳弓は、長い連合線維の代表的なものである。
脳弓:海馬体⇒乳頭体⇒中隔核:線維束
注)海馬体は、総称で、歯状回、海馬、海馬台(海馬支脚)、前海馬支脚、傍海馬支脚、嗅内野皮質に細分される。
◎記憶を司る海馬は、目(視覚)、耳(聴覚)、鼻(嗅覚)から、記憶のもととなる感覚情報を全て自身(海馬)に一度集める。その感覚情報の多くを「嗅内皮質」を通じて間接的に受け取る。つまり嗅内野(嗅内皮質)は、内側側頭葉記憶システムの構成要素として、海馬に対する入出力ゲート(「集中と選択」機構)としての役割を担う。その内の記憶情報は、最終的には海馬によって大脳新皮質で永久保存される。海馬は、記憶の一時貯蔵庫で、その「記憶の定着」に重要な役目を果たす。
注)「中隔核」(中隔野)は、大脳辺縁系に属し、「海馬(記憶)」・視床下部と相互連絡し、「扁桃体(感情)」・前帯状皮質から連絡がある。「視床下部や脳幹」(身体反応)とも神経連絡があることから、1)「記憶」と2)「感情」とを3)「身体反応」へとつなぐ「自律神経の上位中枢」として機能する。
◎「扁桃体」は、味覚、嗅覚、内臓感覚、聴覚、視覚、体性感覚など外的内的な刺激を「嗅球や脳幹」から直接的に受ける。また、「視床核」(視覚、聴覚、内臓感覚など)を介して間接的にも受け取っている。「視床」は、嗅覚系以外の感覚情報が大脳皮質の各種感覚中枢に到達する中継場所である。
◎上記の扁桃体と海馬と視床の役割を単純化すれば、1)「扁桃体」へ入った感覚情報は、「情動情報」として情動機能へと利用され、2)「海馬」へ入った感覚情報は、「記憶情報」として記憶機能へと利用され、それらは最終的に大脳新皮質で活用され、3)「視床」へ入った感覚情報は、新鮮な生き生きした「知性情報」として大脳新皮質へと出力されてそこで利用される。つまり、大脳新皮質(特に前頭前野)は、1)情動情報と2)記憶(過去)情報と3)生の情報を同時に把握・利用出来る位置に立つ。
◎Papez(パペッツ)回路(閉鎖回路):
海馬→脳弓→乳頭体→乳頭体視床路→視床前核→帯状皮質(24野:腹側前帯状皮質)→海馬。
回路内で持続的に興奮する事で情動が生まれ記憶に関与する。海馬は大脳皮質から入力を受けると、パペッツ回路と呼ばれる脳部位を一巡したのち、大脳皮質に出力を戻す閉回路を構成する。
注)乳頭体上核と海馬で形成される神経回路は、「記憶」や「情動」に関して重要な役割を果たす。更に睡眠やナビゲーションにも関わる。
1-3)上縦束
◎上縦束は、一組の双方向性の神経束で、大脳の前部と後部を結んでいる。それぞれの連合繊維束は、大脳半球の卵円中心の側面を通り、前頭葉後頭葉、側頭葉、頭頂葉を大きく接続して、「前頭葉頭頂葉を連絡」する、最も大きな、大脳の「外側系」の最も浅い領域を走行する長神経連合線維束である。上縦束の最も重要な役割は、「視空間認知機能」である。
参照)「視空間認知機能」は、「*1帯状皮質」の「3)後帯状皮質の機能1)空間情報の処理」。
注)「上縦束」は、3本走っている。4本とする説もある。
1-3-1)上縦束Aは、楔前部(5野7野)と上頭頂小葉(頭頂間溝よりも上方)を起点とし、上前頭回(8野9野)、前帯状皮質(32野)を終点とする。「背側注意ネットワーク」を担い、能動的(トップダウン)注意として機能する。
1-3-2)上縦束Bは、縁上回(39野)や角回(40野)を起点とし、上・中前頭回(8野9野)を終点とする。背側および腹側注意ネットワークを担い、能動的および受動的注意の「双方に関与」する。
1-3-3)上縦束Cは、側頭前頭結合部(40野)を起点として、下前頭回(44野45野47野:運動野と眼窩部)を終点とする。「腹側注意ネットワーク」を担い、受動的(ボトムアップ)注意として機能する。
参考)「(5-3)前帯状皮質」の「12)「外向性と内向性」」を参照。

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