帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (14)連合線維 1-4)下縦束

帯状皮質って中間管理職なのか
(14)連合線維
1-4)下縦束
◎「下縦束」は、下前頭後頭束の外側を走り、側頭葉と、内側面の舌状回と楔部、外側面の皮質とを結ぶ。視覚連合野のさまざまな機能領野と線維連絡があり、海馬や海馬傍回、下頭頂小葉や頭頂間溝にも達する。
1-5)中縦束
◎中縦束は、上側頭回と角回を結ぶ長連合線維とされていたが、後頭葉とも連絡する。
注1)41野42野は、一次聴覚野(音の感覚を担う皮質領域)にあたる。ウェルニッケ野(22野:上側頭回後部)は、音声言語処理を担う。
注2)右上側頭回損傷では、視線方向判断障害、即ち他者の視線方向に沿って自らの注意を導く機能の障害、および表情認知障害が生じる。
1-6)弓状束
◎「弓状束」は、上側頭回尾側(22野)からシルビウス裂の尾側の周りを通り、背外側前頭前野へと投射する。弓状束は、中前頭回および下前頭回から下頭頂小葉皮質下を走行して中・下側頭回に至る。この神経線維の主な機能は、右半球では、「社会的認知機能」(メンタライジング)であるが、視空間認知機能、特に視空間探索を要するやや複雑な課題にも関与する。特に優位半球(主として左半球)では、「感覚性言語中枢(側頭葉)と運動性言語中枢(前頭葉)」を連絡する。具体的には、大脳皮質内でも言語に特化した領域、「ブローカ野とウェルニッケ野」を接続する。つまり、言語の産出を司る領域と理解を司る領域を接続する。弓状束の経路の障害は、聴いた言葉をそのまま繰り返して言うことができない伝導性失語を引き起こす。
注)弓状束は、側頭-頭頂連結部の後部と前頭葉を結ぶ神経経路で「上縦束の一部」である。更には角回(ゲシュヴィンド野)、ブローカ野(44野45野)、ウェルニッケ野という3つの領域が、弓状束によって相互に結びつけられている。
1-7)下前頭後頭束
◎下前頭後頭束は、「後頭極(17野)から前頭極」(即ち大脳新皮質の後端から前端まで)を結ぶ最も長い神経線維束であり、注意や感情理解において重要な役割を果たす。下前頭後頭束は、後頭葉(視覚野)のさまざまな領野と前頭葉とを結ぶ。下前頭後頭束は、腹側の意味処理系の中心に位置する。より具体的に言えば、腹側ネットワークとも呼ばれ、統語の処理や文脈理解に関わる意味処理の遂行的側面、語彙の選択と意味記憶との関連づけなど、単語レベルを超えるさまざまな言語の「意味関連の処理」に関与する。
注1)上縦束は、背側の「音韻処理系」の中心に位置する。
注2)後頭極は、機能的には一次視覚野にあたり、視覚情報の処理が行われる。
1-8)鉤状束
◎鉤状束は、大脳にある連合線維で、外側溝の下部を横切り、前頭前野眼窩部から側頭葉先端へ走行する半円周上の線維束である。情動に重要な「ヤコブレフ回路」(扁桃体が中心)の構成要素であることから、「感情の調節や共感性」に関わる。
注)ヤコブレフ回路は、側頭葉前部(38野)→扁桃体視床背内側核→前頭眼窩野→鉤状束→側頭葉前部という閉鎖的回路。
1-9)上前頭後頭束
◎上前頭後頭束は、前頭葉の中・下前頭回から頭頂葉を経由し後頭葉までを連絡する線維束である。物体の識別や情動的反応に関与している。

参考)連合線維(始点⇒終点)
(1-1)帯状束:帯状皮質⇒内嗅皮質
(1-2)脳弓:海馬⇒乳頭体
(1-3)上縦束:前頭葉後頭葉
(1-4)下縦束:後頭葉⇒側頭葉
(1-5)中縦束
(1-6)弓状束
(1-7)下後頭前頭束:後頭葉前頭葉
(1-8)鉤状束:前頭葉⇒ 側頭葉
(1-9)上前頭後頭束
(1-10)垂直束:下頭頂小葉⇒紡錘状回

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