帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 4)報酬(その二)

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-2)前帯状皮質(個別機能)
4)報酬
4-3)報酬に関わる脳部位
報酬系は、自分の周囲の環境からの1)「刺激を取捨選択」して、それらを2)「意味・評価づけ」(好嫌、良悪、価値無価値など)、適切に環境に3)「適応する行動」を制御する仕組みとして、極めて重要な役割を果たす。
◎自己刺激行動を生じさせる「報酬脳部位」は、前頭葉尾状核、内側前脳束、腹側中脳、背側脳幹を中心に、「大脳皮質から延髄まで」縦に広範囲に渡る。つまり「知性、感情、身体」とあらゆる階層で報酬行動を希求する仕組みを持っている。特に、内側前脳束の経路にあたる外側視床下部から乳頭体にかけての領域への刺激が最も高い報酬効果がある。 線状体や中脳中心灰白質腹側部でも高頻度の自己刺激行動が生じる。
注)「内側前脳束」は、「報酬系」の一部で、前脳の内側部を通過する軸索繊維の束であり、腹側被蓋野側坐核を結ぶ神経繊維を含む。具体的に言えば、中脳後部の腹側被蓋野から視床下部外側部、視索前野、側坐核を通って、前頭前野まで続く。
注)「前脳」とは、大脳(扁桃体、海馬などの辺縁系を含む)、中隔核、乳頭体、視床前核、嗅球といった大脳皮質外の構造、視床視床上部、視床下部などから成る領域である。
黒質緻密部、腹被蓋野の「ドーパミン神経」は、側坐核、背側線条体辺縁系前頭前野など、様々な報酬関連領域に投射して報酬体系に重要な役割を果たす。1)ドーパミン神経が報酬の予測誤差の検出に関わるが、2)側坐核辺縁系に属するの脳領域は、報酬から「快感や喜び」を生じさせる役割を担う。 3)背側線条体は、刺激や行為の「価値を学習」す ることに関わる。 4)前頭前野は、報酬期待、 報酬情報に基づいた「意思決定」に関わる。
◎「眼窩前頭前野」(11野12野)と「前帯状皮質」は、「報酬」や「不快な刺激」(罰)に対して、「予期」(前もって推測)を行っている。そして、実際に与えられた刺激の「結果と予期との差」、即ち、「報酬予測誤差」を計算する。
注1)前頭葉内側部に隣接する前帯状皮質に、報酬への期待の大きさに比例して、反応が強くなる神経細胞がある。
注2)[前帯状皮質→腹側線条体(側坐核)→腹側淡蒼球視床背内側核→前帯状皮質]:モチベーション(動機付けや目的意識)や情動の上で重要な刺激に反応して運動を起こすときに重要である神経回路(ループ)。
注3)「腹側淡蒼球」は、「情動と運動とを結びつける」神経回路を持つ「大脳基底核」の一部である。側坐核と嗅結節からの入力を受けるが、それらはほとんどがガバ作動性の抑制性入力である。腹側淡蒼球視床の背内側核に投射する。腹側淡蒼球における神経細胞の多くが、合図をうけてから食べ物をもらえるまで持続的に活動し続ける。また、予測される報酬が大きければ大きいほど、腹側淡蒼球の神経活動も大きくなる。この腹側淡蒼球は、得られる報酬を予測して、やる気を制御する脳の仕組みの一部である。
注4)「視床背内側核(視床内側核群)」は、前頭葉(特に前頭前野)、視床下部線条体などと連絡し、体性・内臓性情報を統合して前頭葉へ上向性の投射をする。つまり、感覚に基づく情動に関係する。
◎「ストリオソーム神経細胞」(大脳基底核の大部分を占める「線条体」)は、現在の状況から将来得られる報酬を推測する報酬予測の機能に関与する。というのは、ストリオソーム神経細胞は、ドーパミン大脳基底核に送る中脳の神経細胞に直接接続するからである。ストリオソーム神経細胞が、期待される報酬(予測報酬)についての情報信号を送ることに加え、実際に得られた報酬(結果報酬)に関する情報も送る。
◎報酬情報に関わる大脳基底核は、強化学習において重要な役割を果たす。良い結果(報酬)や悪い結果(罰)につながる状況や行動を記憶することで新しい行動を学ぶことが強化学習であるから。
注1)一般に「強化学習」とは、行動を通じて「報酬が最も多く得られる」ような「方策」を学習することである。
注2)行動や運動における「やる気」は、「予測されうる報酬の量」によって、強く影響を受ける。
◎報酬情報処理に関して、前頭前野腹側部(眼窩前頭前野)の、より後ろの部位は食べ物、飲み物などの具体的な報酬(一次報酬)処理に関わり、より前の部位はお金や名声などのより抽象性の高い報酬(高次報酬)処理に関して活性化する。
注)脳部位は、基本的には、後ろ側(尾側)は具体的内容に関わり、前(吻)に行く程、抽象的高次的内容に関わる。
帯状皮質(前帯状皮質溝内領域)では、自己の報酬に関心を向けながらも、他者の報酬にもある程度関心を向ける。その内で、前帯状皮質は、他者への報酬割り当てに大きく反応する神経細胞が多い。
◎外側眼窩前頭前野は、報酬の価値の更新(切り換え)に関わるが、同時に前帯状皮質と島皮質もそれに参加する。