帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (12)島皮質 0)島皮質とは

帯状皮質って中間管理職なのか
(12)島皮質
0)島皮質とは
◎島皮質は、島、島皮質、島葉、島回とも呼ばれる。
注)島は、「とう」と読む。この本では、「島皮質」という用語を採用する。
◎島皮質の領域を、13野14野とする説と、13野14野15野16野とする説とがある。この本では、島皮質の領域を、13野14野とする。島皮質は、左右に一つずつ存在する。
参考)大脳を、目立つ脳溝を境界として、前頭葉、側頭葉、頭頂葉後頭葉、島葉、辺縁葉の六つの葉に区分けされた。ただし脳葉と機能との間には明確な対応関係はない。
◎島皮質は、運動感覚領野と結合する1)「後部」、前帯状皮質背側部(24野)と結合する2)「背側前中部」、前帯状皮質領域(脳梁より前端付近)と結合する3)「腹側前部」の、3つに機能的に分けられる。
注)島皮質は、機能区分に基づき、前部と後部に分けられるとする説もある。この本では、主に「前部と後部に二分」する説に従う。
◎脳に占める島の体積の割合は、ヒト:1.2-1.7%、ゴリラ:1.1-1.7%、オランウータン:1.0-1.5%であり、テナガザル:0.9-1.1%、である。これを見ると、系統発生的に、上位に向かう程に、島皮質の割合が少しずつ大きくなっている。
注)系統発生とは、地球上に最初に誕生した単純な生物から多種多様な形が生まれてきたその変化の過程をいう。動物は、その個体発生の過程を基本的には変えずに、過程の最後の段階でさまざまな「形態形成」を付け加えることによって「進化」してきた。つまり「積み上げ方式」(多重階層化)である。

1)島皮質の場所(位置)
◎島皮質(13野14野)は、「前頭葉」、「側頭葉」、「頭頂葉」の一部(弁蓋)、「基底核」によって覆われているために、外側からは全く見えない。
◎島の直下には島皮質と並行して「前障」が広がっている。前障と島皮質とは極めて密接な関係にある。
参照)「前障」に関しては、「3)帯状皮質の連絡・接続」の「2-6)帯状束」の「注)「前障」」

2)島皮質の線維連絡
2-0)島皮質全般
◎島皮質は、前頭葉(認知)、頭頂葉(注意・感覚情報集積地)、側頭葉(言語・聴覚・記憶)、帯状皮質(情動・認知)、扁桃体(情動・感情)、視床(感覚情報中継地)など幅広い脳領域と双方向的な神経連絡を持っている。
◎より詳細に述べると、島皮質は、一次・二次体性感覚野、前帯状皮質扁桃体前頭前野前頭前野眼窩部、前頭葉運動野、上側頭回、側頭極、前頭・頭頂弁蓋、一次聴覚野、聴覚連合野、視覚連合野、嗅球、海馬、嗅内野、視床、内側膝状体(視床:聴覚情報)、と広範囲にわたり連絡を持つ。
注1)運動野とは、前頭葉の一部で、意図的な筋肉の運動を制御する領域で、具体的には、一次運動野、補足運動野、言語野、二次運動野、前運動野などを含む脳領域の総称である。なお帯状皮質運動野を含めることもある。
注2)上側頭回:38野、22野(ウェルニッケ野)。
◎島皮質は、視床を介して「恒常性」に関する求心性の経路から入力を受ける。他方、扁桃体線条体腹側部(側坐核)、前頭前野眼窩部などの、他の多くの辺縁系に関連した領域に出力する。
注1)恒常性に関わっているのは、自律神経系や免疫系、内分泌系(ホルモンを生成)である。主に司っているのが「間脳視床下部」であり、その指令の伝達網の役割を、自律神経系や内分泌系(ホルモン分泌)が担っている。
注2)線条体は、背側線条体と腹側線条体に区分され、「腹側線条体」は、側坐核、嗅結節を含む。
◎島皮質前部は、嗅覚、「味覚」、内臓自律系、大脳辺縁系により強く関わり、島皮質後部は、聴覚、体性感覚、骨格運動とより強く関わっている。要するに、島皮質は身体状態に関連する情報を、高次認知と情動の処理に統合する役割を持つ位置にある。
2-1)島皮質前部
◎島皮質前部は、「大脳辺縁系」、「扁桃体」、「前帯状皮質」、「前頭前野眼窩部」と顕著な連絡がある。島皮質前部は、特に「扁桃体」の中心核からの強い入力を受ける。加えて、島皮質前部自身から扁桃体への投射が存在する。つまり、島皮質前部と扁桃体とは、相互に強力な線維連絡がある。
◎前部島皮質は、「一次味覚野」であり、「視床」後内側腹側核小細胞部から「味覚」に関する情報を受け取る。図式化すると、味覚情報⇒延髄孤束核⇒視床味覚野⇒大脳皮質味覚野(第一次味覚野)⇒眼窩前頭前野(第二次味覚野)⇒(視床下部扁桃体)。
◎背側島皮質は、背側前帯状皮質(24野:帯状皮質運動野)や補足運動野と結合している。
◎内受容感覚(身体内部の各種情報)は、視床腹側基底核群を経た後、島に直接ないし体性感覚野を経由して伝達される。
◎島皮質前部、中脳水道周囲灰白質、後帯状皮質は、視床下部や前帯状皮質などと連携しながらホメオスタシス(恒常性)の維持に関連する処理を担う。
2-2)島皮質後部
◎島皮質後部は、「頭頂葉」の一次体性感覚野や二次体性感覚野と相互に接続して、触覚に関する情報を受容する。脊髄視床路によって活動が引き起こされた「視床」の下後腹側核からの入力を受ける。中部(帯状皮質運動野)や後帯状皮質からの入力を密に受けている。島皮質後部は、聴覚、「体性感覚」、骨格運動とより強く関わる。
◎島皮質後部は、視床の内側腹側核の後部からの入力も受ける。視床内側腹側核は、痛みや気温、かゆみ、周りの酸素の量、性的な感触などの、情動や恒常性に関する情報を担っている。