帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (14)連合線維 0)「連合線維」とは

帯状皮質って中間管理職なのか
(14)連合線維
0)「連合線維」とは
◎連合線維は、「同側」の「大脳半球」の異なる領域(例えば、前頭葉と側頭葉)を「繋ぐ線維」である。この場合、線維とは、神経線維のことであり、軸索とその回りに巻き付く鞘(エミリン)を含めて意味する。
◎連合線維には、2種類が存在する。
1)隣接する「脳回を繋ぐ」、「短い」連合線維
2)異なる領域にまたがる、「長い」連合線維
◎長連合線維は、異なる頭葉間など、離れて存在する領野間を結ぶ神経連絡で、各領野で処理した情報を統合する高次の情報処理に関わっている。
参考)連絡する線維の種類
1)「投射」線維:「上下」を連絡(例えば錐体路)
例えば、大脳皮質と脳内の下位(大脳基底核・脳幹・小脳)や脊髄とを連絡する線維
参考)大脳へ出入りする神経線維の幹線が内包である。「内包」は、視床大脳基底核の間にある白質部分で間脳に含まれる。大脳皮質への入出力線維が通過する。視床から大脳の各部位へ放射状に神経線維が伸びているのを「放線冠」という。その内、視覚野へ向かうものを視放線、聴覚野へ向かうものを聴放線という。
2)「連合」線維:「同側」半球内(前後)を連絡(例えば弓状束、帯状束、脳弓など)
3)「交連」線維:「左右の大脳半球」を連絡(例えば脳梁、前交連)
左右の大脳半球を連絡する。その内で脳梁が最も重要である。他に前交連、後交連、脳弓交連などがある。

1)連合線維の個別的種類
1-1)帯状束
1-1-1)「帯状束」の定義と構造
◎「内側系」線維束として最も大きなものが、「帯状束」である。その帯状束とは、帯状皮質を構成する線維束(神経線維の束)である。帯状束は、(長い)「連合線維」として分類される。
注1)「線維束」とは、「軸索」(出力情報が通る配線)と呼ばれるケーブルが集まって束になっている構造を指す。脳の中では「白質」と呼ばれる領域が線維束から成り立っている。
注2)「白質」とは、主に神経線維が集積し走行している、線維束から構成されている領域である。
◎帯状束(帯状皮質白質繊維束)とは、あたかも地下に埋設された土管のように、帯状皮質の下部を、(体の)前後方向で脳梁に沿いながら走行し、帯状皮質(前帯状皮質、後帯状皮質)、海馬傍回、中隔野を取り巻き、皮質間の情報交換をする。大脳辺縁系の各領域を結びつける役割をも果たしている。
注)中隔野(中隔核)は、背側中隔核、外側中隔核、内側中隔核、中隔采核、中隔三角核で構成される。中隔野は、「情動」に深く関係している。「扁桃体」と帯状皮質からの連絡を受けている。具体的には、中隔野は、楽しい感覚に関与する神経核とされ、破壊すると怒りに対する抑制がなくなってしまう。中隔野は、機能的には主に「海馬」および「視床下部」と連絡する。
1-1-2)帯状束の機能
◎作業記憶(ワーキングメモリ)には、記憶の「符号化」などの役割を担う「海馬」および「海馬傍回」の働きが重要である。
注)記銘(符号化)とは、情報を取り込んで記憶情報として保持されるまでの憶える過程である。
◎帯状束は、「注意機能」や「遂行(実行)機能」(作業記憶)に関与し、全ての「認知機能」の中心とも言われる。より詳しく述べると、帯状束が連絡する「前帯状皮質」は、「情報の抑制や制御」が必要な課題全般で強く活性化する。このことから、「帯状束」は、作業記憶を首尾良く機能させるために必要な注意を制御する、すなわち、ワーキングメモリ(作業記憶)の中では「中央実行系」と言われる役割を果たしている。
注)実行機能とは、複雑な課題の遂行に際して、課題ルール・内容の維持、切り換え、情報の更新などを行いながら、思考や行動を制御する認知システムやそれら認知制御機能の総称をいう。
◎「注意(機能)」とは、感覚器を通して入り込む膨大な情報の中から特定の1)「有用・重要な情報を選択」し、その選択している2)「状態を維持」する働きを持つ。更に、選択した情報を3)「優先処理」し、選択されなかった不必要情報の4)「処理を抑制」する能動的な精神活動である。つまり、注意とは、1)重要な情報を選択、2)その状態を維持、3)優先処理、4)他の処理を抑制、する働きである。
参照)「注意」に関しては「6)後帯状皮質」「(3)注意」