帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 4)報酬(その一)

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-2)前帯状皮質(個別機能)
4)報酬
4-0)報酬とは
◎「報酬」とは、狭い意味だけではなく、広く、食料水などに代表される「正(欲求)の動機や感情を生む」(良・善・好をもたらす)物質・出来事・状況・活動の総称、である。
◎別の言い方をすれば、報酬には、2種類ある。
1)水や餌、性行動の対象などの生命の維持や生殖の実現に不可欠な「先天(生得)的一次報酬(生物的・生理的・身体的報酬)」と、
2)本来は中立(中性)であった刺激が、「学習・経験」によって「一次報酬」と関連付けられた「高次報酬(「心理的・精神的報酬」、例えばお金・地位・名誉など)がある。高次報酬は、後天的学習によって獲得されたものなので、個々人によって全く千差万別である。
ということで簡単に言えば、報酬とは、「生物にとってプラス(近接)の価値を持つもの」である。固い言い方をすれば、報酬とは、魅力的で「近接行動を誘発する刺激」であり、「欲求行動、完遂行動を誘発するもの」である。
参考)心理学にオペラント条件づけという用語があり、それは、報酬や嫌悪刺激(罰)に適応して、自発的にある行動を行うように学習することである。しかし、内発的動機付けのように、外部からの報酬や罰を随伴させなくても行動が動機づけられることもある。更には、他者を観察し模倣して学習するモデリング方式もある。このように、自発的にある行動を行うように仕向ける動機(動機付け)は様々である。
4-1)高次報酬
◎人間の脳のみ、「思考」(例えば抽象的物事)が大脳辺縁系の快楽中枢を興奮させることができる。つまり、思考行為そのものも報酬に成り得る、人にとっては。動物は、ボトムアップ型欲求が行動を突き動かすが、人は、思考というトップダウン型意思であっても行動を突き動かすことができる。
参考1)腹側線条体(報酬系)は、懐かしい記憶の回想でも活動が上昇する。つまり、懐かしい記憶の想起も時に報酬的価値を持つ。
参考2)困っている人を見かけた時に、肯定(精神的満足感)をもたらす援助行動をすることによって、「自己内の共感性痛み」が除去されることが向社会行動を動機付ける。つまり、マイナス(負)をゼロにする物事であっても報酬に成り得る。
例えば、遊びで、トスを受ける側の報酬系は、トスの頻度が増加するにつれて線条体の活動が増加する。つまり、ボールをやり取りするという行為自体が双方の報酬となることにより、社会的相互作用を内発的に動機づける。逆に、ボールをやり取りしないことが自他への罰になり得る。つまり、加害者側に罪悪感を生じさせ得る。この罰の回避も報酬(内発的動機付け)に成り得る。
注1)報酬の反対語は、罰である。
注2)罪悪感の本質・根本は、「集団から排除」される危険を感じた時に生じる、本能的な生命的危機感の表れである。集団に属していないとか、集団から空間的心理的に離れている場合・場面・場所では、罪悪感を感じないことも有り得る。旅の恥はかき捨て。