帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-1)前帯状皮質 5-5)認知的制御ネットワーク(実行機能)

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-1)前帯状皮質
5-5)認知的制御ネットワーク(実行機能)
◎24野だけでなく32野(背側前帯状皮質)を中核とした前帯状皮質も、認知機能に関与する。
◎前帯状皮質尾側部(24野)は、「認知的制御ネットワーク」の一部に含まれる。24野は、「背外側前頭前野」を中心とする作業記憶の一部として、注意状態にある時に活性化し、あるいは運動トレーニング(運動学習)に際して、活性化する。
また、注意の状態で、精神的緊張や精神的不安の制御に中心的な役割を果たす。つまり、恐怖や不安の制御や、衝動的攻撃行動の抑制に関与する。要するに、帯状皮質内部でいえば、「24野は、情動(25野)を制御(抑制)」する立ち位置にある。
注)背外側前頭前野や前帯状皮質が、認知的制御の中枢である。物体の自由な選択と指定された選択を比較すると、自由な選択では背外側前頭前野、内側前頭葉、内側頭頂葉がより強く反応する。認知的制御系は、刻々と変化する状況に対応して、他のシステムとダイナミックな機能結合を形成することにより制御機能を実現させる。実質的には、認知的制御=実行機能、である。
注)実行機能とは、複雑な課題の遂行に際して、課題ルールの維持や切り換え、情報の更新などを行うことで、思考や行動を制御する認知システム、認知制御機能の総称である。
◎認知領域(帯状皮質運動野を含めて)は、情動領域の後方にある。情動領域と異なり、扁桃体との線維連絡は乏しい。認知領域(帯状皮質運動野)は、「内側視床核」から痛覚情報を受け取っている。危機情報としての痛覚情報は、反応の選択と認知過程に影響する。また運動関連脳領域との関係が深く、前頭前野背外側部、一次運動野、前運動野、補足運動野と相互に線維連絡があり、脊髄、赤核に投射する。
注)視床内側核群(背内側核)は、内側髄板の内側を占める核群である。前頭葉視床下部線条体などと連絡し、体性・内臓性情報を統合して前頭葉へ投射する。感覚に基づく情動に関係する。
◎認知領域は、運動開始前の段階で、競合する情報、またはエラー情報をモニター(監視)し、行動の必要性や正しい反応パターン(形式)などを選択し、目的に叶った身体活動を行うための情動的認知過程に深く関わっている。
5-6)反応抑制に関わる領域(認知領域)
前頭前野帯状皮質認知領域(前部帯状皮質背側部(後部)(32野))は、感情や衝動の抑制に重要な役割を果している。
◎反応抑制(不適切な運動反応を抑制する機能)に関わる脳領域は、(特に右半球)背外側前頭前野(9野46野)、前帯状皮質(24野32野)、運動前野(6野)、腹側運動前野(44野)、線条体視床である。特に、背外側前頭前野や下前頭領域の活動との関連が強い。しかし、ゴー・ノーゴー(GO-NOGO)課題において、前頭前野の活性化は、負荷(請負量)の高い課題においてのみ見られたのに対して、前補足運動野(6野内側部の前方)は課題の負荷と独立して必ず賦活する。
◎前補足運動野や吻側帯状皮質運動野(32野)は、状況に応じた柔軟な行動の切り替えに深く関わっている。
注)6野内側部後方が補足運動野、前方が前補足運動野。「前補足運動野」は、認知領域の前頭前野(「背外側部:46野」)と密接な線維連絡を持ち、補足運動野に比べて高次の運動制御に関わる。
◎情動を伴う反応抑制で活性化する脳領域は、前帯状皮質腹側部(32野)、前部島皮質、後下前頭葉(45野:下前頭回三角部:補足運動野)、下頭頂小葉(40野)である。
注)左補足運動野は、ステレオタイプ(定型的・習慣的)な動作を抑制する機能や葛藤条件の監視に関与している。