帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか。(1)帯状皮質の「定義」

(1)帯状皮質の「定義」

1)帯状皮質とは
帯状皮質は、帯状回とも呼ばれる。
注1)「帯状」という名称は、帯(おび)状(状態)から来ている。
注2)「皮質」とは、「組織の外層部」、器官が、構造的に複数の階層に分けられる場合の外側部分を意味する。
注3)帯状回帯状皮質は、解剖学的にも生理学的にも別の領域である、とする説もある。しかし、この本では、帯状回帯状皮質、として扱い、「帯状皮質」に名称を一本化する。
根拠)「帯状皮質」に名称を一本化する根拠は、wikipediaの「帯状回」の項に、「帯状回帯状皮質とも呼ばれる」、とあることから判断した。また、帯状回という用語では、後の「2)帯状皮質の場所(位置、区分)」で解説するが、「膝下野」と「脳梁膨大後部皮質」を含められないと考えた為でもある。

2)帯状皮質の定義、場所(位置)
前頭葉頭頂葉後頭葉、側頭葉のそれぞれの「内側面」に、つまり、大脳新皮質の内側面に、「大脳辺縁系」の一部として形成するのが、「帯状皮質」である。つまり、帯状皮質は、大脳新皮質の各領域と線維接続するには、最適な位置にある。
なお「帯状回」という名称は、大脳の内側面において、脳梁の辺縁を前後方向に走る「脳回」に対して付けられたものである。
注1)「回」は、大脳皮質にある「しわの隆起(凸)」した部分を示す名称であり、 「しわの凹んだ部分」は、「溝」と呼ばれる。
注2)脳梁の「梁」(はり)とは、建物の水平短径方向に架けられ、床や屋根などの荷重を柱に伝える築材のことである。脳梁がそのような役目を担っていると見立てたのだろうか。
参考)各脳葉を分かつ溝
◎左右両半球にある帯状皮質は、「大脳縦裂」を挟んで向かい合った位置にある。大脳縦裂の底には「脳梁」があり、その上に互いに背を向けて座るかように、左右に分かれて帯状皮質がある。
疑問)脳が左右に分裂を始めたのは、どの脳部位からだろうか。
解)大脳新皮質大脳辺縁系大脳基底核視床は、左右に分かれているが、視床から下位の脳部位(視床下部から)は分離していない。視床下部は、意志(意識)とは無関係に働いている内臓機能の制御中枢であり、視床から上位は、感覚情報の処理機構であるのか。視床は、脳のほぼ中央に位置し、嗅覚以外のあらゆる感覚情報(体性感覚、痛覚、視覚、聴覚、味覚など)を大脳皮質に送る中継基地である。視床を経由してそれぞれの大脳新皮質一次感覚野へと送られる。系統発生と共に著しい進化をなすのは背側視床(=いわゆる視床)で、特に霊長類では最高の発育と分化を示している。視床(背側視床)の進化は、大脳皮質、特に新皮質の細分化によつて誘発された面もあるが、両者(背側視床と大脳皮質と)は共進化の関係にある。
注1)「大脳縦裂」(大脳鎌)は、大脳を前(前頭葉:額)から見た時に、左右半球に大きく分けている、大脳中央部を前後に走る「深い溝」で脳梁にまで達する。左右の大脳半球の間を仕切る「膜構造」を「大脳鎌」という。 この名称は、左右半球間に入り込んだ硬膜の三日月状の形状が、 草刈りなどに使う鎌のように見えることに由来する。
注2)大脳新皮質には、大脳縦裂のような大きな切れ目が他にもある。例えば、「前頭葉頭頂葉」とを分かつ溝は、「中心溝」(中心裂/ローランド溝)と呼ばれる。前頭葉にしても、頭頂葉にしても、中心溝に近いほどその働きは単純であり、中心溝から離れるにつれ複合的連合野的高次的機能へと分化(高度化)している。
注3)中心溝以外にも、「外側溝」(シルヴィウス溝/シルヴィウス裂)があり、これは、「前頭葉頭頂葉」と「側頭葉」とを分けている。外側溝の場合は、大脳の左右両半球にそれぞれ存在する。また外側溝は、人脳に見られる特徴的な構造の一つである。
注4)「頭頂葉と側頭葉後部」、「側頭葉後部と後頭葉」の境界は、明確な切れ目がなくあいまいである。これからすれば、前頭葉は、かなり明確に、他の脳葉とは切り離されていることがわかる。
注5)頭頂後頭溝(頭頂後頭裂)は、頭頂葉後頭葉の境界を定める。内側面において、これより前方が楔前部であり、後方が楔部となる。後頭葉とは内側面にある頭頂後頭溝で区切られるが、外側面では後頭葉との間にははっきりとした脳溝がない。
注6)共進化とは、密接な関係をもつ複数の種が、互いに影響を及ぼし合いながら進化する現象をいう。
疑問)帯状皮質は、左右に分かれているが、それを結ぶ交連はどれなのだろうか。
解)左右の大脳半球をつなぐ「交連線維」の太い束である脳梁は、前頭葉頭頂葉後頭葉、側頭葉、前帯状皮質など大部分の大脳皮質領野の細胞から発した神経線維(軸索)が、対応する領野に投射した束である。