帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (0-1)前書き

帯状皮質って中間管理職なのか

(0-1)前書き
1)前書きの前書き
この本を書こうとしたきっかけは、「帯状皮質」(帯状回)ってどんな働きをしているんだろうか、という「ささやかな疑問」からだった。
それで、ネットで調べ、本を読んで行く内に、どんどんと知識が貯まって来た。あたかも、ジグソーパズルのピースのように。
それで、それらを整理して体系付けて行くと、今度は次から次へと新しい疑問がこんこんと湧き出した。あたかも、ピースとピースの隙間が、ここにまだ空き空間があるよというかのように。
そうすると、その疑問を解消したいが為に、更にネットを漁り、本を読んで行った。
その往復を何度も何度も何度も繰り返して行くうちに、本筋の帯状皮質からは少しずつ離れて行き、次第にどんどんと遠くにまで来てしまった感ありである。
ということで、この本の中には、細い細い糸のような繋がりはあったとしても、帯状皮質とは余り深い関係がない事柄も多々含まれることとなった。
とにかく、このようにして、ネットの海から、本から、これはと思う項目(ピース)を拾い集め、分類分けをして、体系的に筋道を立て、一つの絵柄になるようにと並べ替えて行った。
帯状皮質の「全体像を見たい」という思いと、用語の語義などの「細部を知りたい」という思いが、波のように交互に押し寄せて来た。
だが、いつまで経っても、満足が行くほどに、スムーズな流れにはなっていない個所が多々(持て余す程)ある。これが私の限界だろうと見定めて、筆(?)を置くことにした。

2)基本線
内容に関しての基本線としては、次の項目に従って、書き進めて行った。
1)中心課題(メインテーマ)は、あくまで「帯状皮質」(帯状回)である。
2)説明・解説は、「脳科学」的な、「神経生理学」的な、「脳に密着した内容」を中核とする。そして、そこに「心理学的説明」もある程度は含ませる。というのは、時代は、心理現象への観察を中心とした説明・解説から、脳の構造・機能という裏付けを提示しながら現象への説明ができるようになりつつあるからだ。
3)神経線維(軸索)が、どことどことを「接続」しているかという「ネットワーク構造」を記述する。脳部位は、単独で働くよりもネットワークで働くことが圧倒的に多いので。
4)それぞれの脳領域(脳部位)の「機能」は何かを記述する。その時に、単機能的な「局在論」的にも、高機能・多機能的な「ネットワーク論」的にも、言及して解説するように心掛けた。
5)事典(辞典)的形式にすることで、ある程度独立した部分読みができるように、事柄別にも配慮して列挙する。というよりも、一本の壮大な流れにまとめる力量がなかったのが正直な感想である。
6)そうなると、今度は記述が列挙、ないし単なる羅列(辞典・事典)になりがちなので、記述間の有機的繋がり、関係性を持たせるように、参考)、参照)、注)、疑問)を多用して繋がりにも、広がりにも配慮した。
7)読み手の方にとって蛇足的であっても、繰り返しの解説などでくどくなっても、部分読みを考慮して「専門用語の解説・説明」をできる限り頻繁に付けることを目指した。
以上を心掛けて、この本を書き整理し体系化して行った。

3)脳(宇宙)の基本原理
私は、読書が好きで、多分野の知識を読みかじる中で、分野が違えども、それらの分野に共通する「通奏低音」が聞こえて来たように感じた。そのぼんやりと聞こえて来た「宇宙の通奏低音」を聞き取りたいと願いながら、更に多分野を雑学して行くと、ある程度その通奏低音が形を現わし始め、ようやくまとめることが出来た。
その宇宙の通奏低音とは
宇宙は、自らを形成するのに、「基本原理・基本構造」に基づいて進んで行く。その基本原理は、「自律、分散、階層構造」である。私は、それを、ピラミッド型の「トーナメント形式」と呼んでいる。
もう少し厳密に言うと、構成・構造は、「動的均衡」を保ちながらの、1)「自律-依存」、2)「集中-分散」、などの二律背反的な構成原理を特徴とする3)「階層構造」、である。その中を、情報は、「ボトムアップ」型フィードバックと「トップダウン」型フィードフォワードとして流れる。
更に詳しく述べると、誕生時の、1)依存から始まって自律に到達し相互作用(相互依存、協調)に終わる。2)集中から始まって分散に到達し相互作用(相互依存、協調)に終わる。3)それを一つにまとめるのが、上が下を制御する階層構造、上位に行く程に統合性が高まるトーナメント形成の階層構造である。

それを具体的に述べると、宇宙を筆頭に、有形無形を問わず、あらゆる存在は、一言でいえばトーナメント形式システムという言葉にまとめられるが、それらは一般的に次の10種類の特徴を持つ。
ということでトーナメント形式システムの特徴を列挙すると
1)上昇(ボトムアップ・中心)⇔下降(トップダウン・周辺)、
2)成長⇔崩壊、
3)普遍(総合・上位)⇔特殊(専門・下位)、
4)複雑(多様・異質性・質)⇔単純(一様・同質性・量)、
5)結合(自己組織化)⇔分解、
6)全体(マクロ)⇔部分(ミクロ)、
7)自律(閉鎖)⇔依存(開放)、
8)矛盾的自己同一(1)〜7)を一言で言った表現)、
9)(多層・多重)階層構造、
10)階層間での情報・物質・エネルギーの相互作用と円循環(リサイクル・輪廻)。(円)循環:ボトムアップ型フィードバックとトップダウンフィードフォワード
宇宙は、上記の基本原理に沿って、様々な分野で、基本要素を自作して、その基本要素を、あたかも機織りをするように、階層構造的に、上へ上へと積み上げて行く。例えば、元素(原子)、言語、遺伝子、星、身体(細胞)、アミノ酸(タンパク質)、などなど。
あらゆる進化は、この原理に沿って進んで行く。
これを頭に入れて、この本を読んで頂ければ、脳の三次元的な構造と機能が理解しやすくなるのではないかと期待している。

カンデル神経科学

カンデル神経科学

  • メディカルサイエンスインターナショナル
Amazon