帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (12)島皮質 3)島皮質の機能 3-1-6)身体と感情との両方に関わる島皮質

帯状皮質って中間管理職なのか
(12)島皮質
3)島皮質の機能
3-1-6)身体と感情との両方に関わる島皮質
◎島皮質腹側部は、前帯状皮質前部と接続して、内感覚や自律神経などに関わる。島皮質は、内臓を含む身体内部の状態をモニターし異変が生じた時に、それを前頭前野に伝え意識化させる機能(顕著性ネットワーク)を持つ。
◎島皮質中部~後部は、内蔵感覚、視覚、聴覚の特殊感覚、触覚などの体性感覚を受容して、それらを統合して、前部島皮質に送る。それらを更に前帯状皮質へと送る。
注)感覚情報の流れ:島皮質中部・後部(個別感覚情報)⇒島皮質前部(各種感覚情報の統合)⇒前帯状皮質
◎「島皮質前部」は、「内受容感覚」を意識する場合や、主観的に「感情」を感じる(体感)場合に活動性が高くなる。ということは、島皮質前部は、意識と強い親和性がある、といえる。
注)「右の島皮質前部」領域が内受容感覚の中枢神経基盤である。身体状態が恒常状態から離れると、前帯状皮質、両側島皮質、視床、脳幹といった内受容感覚に関わる部位の活動がみられる。特に、右島皮質前部は、脳幹や視床の内側核・腹内側基底核を介して伝達されてきた身体内部状態(心臓血管反応、呼吸、代謝など)に関する情報が投射される場所である。
◎島皮質を摘出後は、怒りの認識がはっきりと低下し、逆に悲しみの認識が増加した。怒りの認識は、左島皮質と関連する。ということは、島皮質では、左は感情・情動に、右は身体機能に結び付くのだろうか。
◎島皮質は、感情状態と身体状態の両方の課題で共通して活動が見られる。つまり、体温・空腹・渇き・息苦しさ・痛みなどさまざまな体内の感覚情報を統合し、適切な情動反応に結びつけていく。要するに、様々な内外からの感覚情報を統合して、それを一つの感情(情動)として収束させる。まとめると、島皮質は、自己の身体状態を意識し、内外の文脈や状況と組み合わせることによって主観的感情を生み出している。言い換えると、主観的な感情の体験は、脳が感情的な出来事によって起きる身体の状態変化を総合的に「解釈」することによって生じる。
3-1-7)自他同列(共感)
◎本人自身が不快な匂いを嗅いで、嫌悪感、あるいは痛みを覚える時と、他者が不快な匂いを嗅いで、嫌悪の表情を示す時、あるいは痛みを訴えるのを観察する時とで、脳の同じ領域、即ち、「左半球の島前部と右半球の帯状皮質前部(24野32野)」が活性化する。前部帯状皮質および左側前部島皮質(両側という説もある)では自らの痛みだけではなく、他者の痛みに対しても活性化がみられる。それが他者の身体的な怪我でも島は活性化する。つまりこの段階では、自他の区別はない、自他未分化である。この自他未分化は、ミラーシステムによって、身体に関する脳内表現が自己と他者とで共有されていることから来る。これが、模倣や共感などの間主観的な能力の基盤を提供する。
◎島前部を損傷した患者は、自ら嫌悪感を体験することが困難になるだけでなく、他者の嫌悪の表情や声音を識別することもできなくなる。
◎人は、おとなであれ子供であれ、自分が知っている事実(知識)は他人も知っていると思ってしまう傾向を持つ。
◎逆に自他の分化に関しては、1歳前半で自他の分化が進み、自他は、同じ姿形を持つ存在として理解されているが、それぞれが異なった意図を持つ個人だという理解にまでは至っていない。1歳後半になると、自己と他者は異なった意図や欲求などの心的状態を持った個人として理解される。
◎右側下「頭頂葉」は、「他者の運動を観察」したときに活動する。上頭頂葉および頭頂間溝は、視覚と体性感覚の融合が行われ、自己身体イメージを処理する。これらのことから、自己と他者の身体の区別において、視覚的身体と体性感覚の時間的整合性が重要であり、両感覚の統合プロセスに頭頂葉が深く関与する。例えば、下頭頂小葉に障害例では、ビデオモニターに映った自分の動作と他人の動作が区別できなくなる。更に詳しく述べると、運動に必要な運動プログラムコピー(遠心性コピー)と、運動と同時に起こる実際の体性感覚や視覚フィードバックとの照合が、ミラーニューロンシステムを含む頭頂連合野と運動前野とのネットワークによって行われている。このような形で、頭頂葉が運動主体や身体の所属感に認識に関わっている。自己が行う運動に際して実行される「遠心性コピーと実際の感覚フィードバックとの照合」は、他者の動作の観察の際には起こらない。従って、遠心性コピーと体性感覚の動的変化が、自己と他者の区別につながる。
◎極々大まかに言うと、自他未分化(自他同列)は、「島皮質と前帯状皮質」で担われ、自他分化は、主に「頭頂葉」で担われているといえるかもしれない。