帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (12)島皮質 3)島皮質の機能 3-0-1)島皮質の一般的機能

帯状皮質って中間管理職なのか
(12)島皮質
3)島皮質の機能
3-0-1)島皮質の一般的機能
◎島皮質は、1)内外からの入力を受けた「身体状態全体」に関連する情報を、2)「高次認知」(前頭前野)と3)「情動」(大脳辺縁系)の処理に「統合」する役割を持つ。ごく大雑把に述べると、1)「身体状態」(脳幹)を、2)「高次認知」(大脳新皮質)と3)「情動」(大脳辺縁系)とに統合する位置にある。つまり、「知情意全ての統合拠点」である。
◎状況や文脈に沿った「身体感覚の予測や価値づけ」が「前部島皮質」で形成され、その結果と、「後部島皮質」へ送られて来た「諸感覚情報」とが照合されることで、知覚、情動、行動が喚起される。
◎島皮質前部では、行動発現、知覚(感覚情報)、内受容(内臓・身体情報)、情動(感情情報)など、認知機能に関わる。
注)内受容とは、身体状態の知覚に関わる感覚全てを含む。
◎島皮質の活動は、味覚、嗅覚、触覚、痛覚などに加え、報酬、社会的な痛み、情動、社会的情動、共感、内臓感覚、内受容や自己意識にまで関係している。
注1)その内で島皮質前部は、嗅覚、味覚、内臓自律系、及び辺縁系の機能(情動)、前庭感覚、言語、体内知覚への気づき、痛みや温度の知覚、自律神経機能、に関わって働く。島皮質後部は、聴覚、体性感覚、骨格運動とより強く関わっている。
注2)内臓感覚とは、臓器の状態に伴う感覚のことであり、内臓痛・飢餓・渇き・満腹・悪心・痛み・尿意・便意・性欲などが含まれる。
3-0-2)島皮質の機能的細区分
1)感覚運動機能(内受容感覚・痛み・体性感覚・運動):両側の中部から後部背側領域
2)認知機能(注意・言語・発話・作業記憶・記憶):両側の前部から中部背側領域
3)化学感覚機能(嗅覚・味覚):主に右側の前部腹側領域
4)社会感情機能(感情の経験・共感など):両側の前部腹側・背側領域
3-1)島皮質の個別機能
◎島皮質は、脳内に幅広く様々なネットワークを持っているため、そことの連係によって有する機能も豊富である。例えば、自分の「体の状態の意識化」、「運動・認知」プロセス、「意思決定」、「知覚・情動」などなど、多くの機能に関与している。
3-1-1)顕著性ネットワーク
参照)「顕著性ネットワーク」に関しては、「5-2)前帯状皮質」の「3)「デフォルトモードネットワーク」」の「3-2-2)「セイリエンスネットワーク」(顕著性ネットワーク)」
◎時々刻々の身体の状態は、帯状皮質前部(主に24野)と島皮質(主に前部)を含む「顕著性ネットワーク」(セイリエンス・ネットワーク)によりモニター監視される。このネットワークは、「行動の調整」や「ネットワークの切り替え」を行う。また疲労感といった「身体由来の感情」をもたらす。
注)疲労感、倦怠感とは、身体や精神的に、だるい、疲れた、疲れやすいと感じられる、主に身体に関する心身状態である。なお「将来」の「疲労の予測」に関わっているのは、右半球の縁上回(40野)、背外側前頭前野(9野46野)、前頭極(10野)などの脳部位である。その内で前頭極は、将来の予測や計画立案に関わる。背外側前頭前野および前頭極が、疲労の程度に基づいて意志決定することに関わる。「未来の出来事を想像」する際に、背外側前頭前野(9野)、縁上回(40野)、前頭極(10野)が関わる。
◎人は、島皮質の機能を、「意志によって抑制」できる。というのは、島皮質は、「前頭前野から抑制」を受けるからだ。前頭前野は、意思(意志)と強く関係する脳領域である。「運動」に関して、島皮質を中心とした内受容感覚の役割は、中枢性の「主観的疲労感を発生」させ「身体的恒常性維持」のために運動を停止させることにある。
注1)前頭前野外側部は、作業記憶、反応抑制、行動の切り替え、企画、推論などの、認知・実行機能を主に担う。
注2)「主観的」レベルにあるためには、自分自身で1)「言語表現」が可能であり、適切に2)「内省(主観的)報告」が可能であることが不可欠である。つまり主観的とは、3)「意識的」であることが必須である。ところで、自分自身の認知活動(思考や知覚など)を内省的に捉え認知する能力をメタ認知というが、記憶に関するメタ認知をメタ記憶と呼ぶ。メタ記憶能力によって、自分自身の記憶の状態を主観的に評価認識できる。内省=メタ認知。主観的=意識的。
◎顕著性ネットワーク(SN)には、「デフォルト・モード・ネットワーク」(DMN)と、「実行機能ネットワーク」(EN)と、ふたつのネッワークを交互に切り替えるスイッチとしての役割がある。DMNは直観・発想を、ENは論理・思考を取り仕切る。つまりSNは、意識的トップダウン論理回路(EN)と無意識的ボトムアップ的直観回路(DMN)を切り換える。
注1)安静時に働くネットワークとして、1)背側注意ネットワーク、2)作業記憶、3)デフォルトモードネットワーク、4)顕著性ネットワークがある。これらは、競合することもあれば、協調・連係することもある。
注2)瞑想・坐禅は、論理回路(EN)から直観回路(DMN)への切り換え作業でもある。