帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (11)脳梁膨大後部皮質 3)脳梁膨大後部皮質の機能 3-4)道先案内と脳梁膨大後部皮質との関係

帯状皮質って中間管理職なのか
(11)脳梁膨大後部皮質
3)脳梁膨大後部皮質の機能
3-4)道先案内と脳梁膨大後部皮質との関係
◎目標地点を目指した移動のナビゲーション(道先案内)をするにあたり、脳は、これから移動する空間関係を視覚化するが、海馬傍皮質、嗅周皮質(嗅周野:35野36野)、脳梁膨大後部皮質は、それを助ける働きをする。
注1)「海馬傍皮質」は、「海馬傍回の後部」と「紡錘状回の内側部」とを含めた領域を指す。海馬傍回場所領域は、海馬傍皮質の下位領域で、自然風景や都市風景など場所画像のような「地理的な風景」を示す際に活性化する。
注2)34野:海馬傍回(前嗅内皮質)、35野:海馬傍回(嗅周囲皮質)、36野:海馬傍回(海馬傍回皮質)。右半球の海馬傍回は、「視覚背景」を「文脈」に当てはめる。
注3)「嗅周野」は、内側側頭葉記憶システムの入り口にあたり、(海馬からの)「記憶機能」(過去経験情報)と(高次感覚連合野からの)「知覚機能」(現在進行中のライブ情報)を結びつける。つまり、1)感覚情報を記憶情報へと変換する、2)記憶情報を高次感覚連合野に供給する、情報のやり取り中継拠点である。具体的には、高次感覚連合野から受け取った知覚情報を、嗅内野(28野)を介して海馬(記憶領域)に供給する一方で、想起により得られた記憶情報を高次感覚連合野(情報統合組立工場)に供給する。
参照)「嗅内野・嗅周野」に関しては、この章の後で解説する「4)嗅内野、嗅周野と記憶システム」
◎楔前部(頭頂葉)において、「身体空間座標」(身体中心座標系:前景)と「視野空間座標」(環境中心座標系:背景)の情報が、近傍の脳梁膨大後部皮質との密な繋がりによって、「自分の身体を基準(起点)」とした「空間」情報と「移動」情報として形成される。
◎道順(ナビゲーション:道先案内)障害の病巣は、脳梁膨大後皮質、後帯状皮質後部、楔前部(中部・下部)が典型的な病巣である。特に道順障害の責任病巣は、脳梁膨大後域皮質とされる。この原因として、「脳梁膨大部」を通過する神経線維は、「後頭葉」および「頭頂葉後部」の左右の皮質間を連絡していることと関わるのではないか。
注)外界中心座標系は、LIP野(外側頭頂間溝野:網膜座標系)、内側頭頂葉、後帯状皮質脳梁膨大部後部領域、海馬が含まれる。
◎「新規」の「場所」と「旧知」の場所とを比較すると、新規(未知)の場所でより強く活性化されるのは、両側楔前部(7野)、左楔部(17野)、右島皮質、右下頭頂小葉(39野・40野)、右海馬傍回である。
逆に旧知(既知)の場所でより強く賦活されるのは、右の中側頭回(21野:聴覚連合野)と左の後帯状皮質、中前頭回、上側頭回(22野:聴覚性言語野/聴覚連合野)であった。つまり、新規(未知)の場所では、頭頂葉(空間位置関連領域)が主役となり、旧知(既知)の場所では、側頭葉(物体記憶領域)が主役となる。言い換えると、新規(未知)の場所では、周りの風景(背景)により大きく資源が割かれ、旧知(既知)の場所では、前景(人物・店・建物など)により資源が割り振られる。
◎外界中心座標系(環境中心座標系)に関しては、場所の記憶やナビゲーションに関わる内側頭頂葉、後帯状皮質脳梁膨大部後部皮質、内側側頭葉などが、このような空間関連情報(風景情報)を持っている。
3-5)情動と自己との関わり
脳梁膨大後部皮質は、感情的に顕著な単語によって常に活性化する。つまり、感情的に顕著な刺激の処理に重要な役割を持っている。脳梁膨大後部皮質は、「扁桃体」から「内側前頭前野」を経て「脳梁膨大後部皮質」まで伝達されてきた「感情情報」を、「海馬」から「後帯状皮質」に伝達される「記憶関連情報」に添加することに関わる。つまり、脳梁膨大後部皮質は、今現在の感情情報と過去の記憶情報とが出合う中継地点でもある。
◎自己に関する質問をされた時と、自己に無関係な一般的な質問をされた時の脳の反応を比較すると、自己に関する質問のときに後帯状皮質や内側前頭前野などのデフォルトモードネットワーク(DMN)と同様の部位に有意な反応がみられた。つまり、「DMN と自己参照処理とは関連」する、といえる。DMNは、エピソード記憶、自伝的記憶の想起時、展望記憶、心の理論、道徳的判断など、自己参照処理を必要とする思考活動で活性化する。なおDMN の構成脳領域として、頭頂葉内側部(後帯状皮質、楔前部、脳梁膨大後部皮質)、前頭葉内側部(内側前頭前野、腹側前帯状皮質:32野)、前頭前野背外側部、外側頭頂葉(角回、頭頂側頭接合部)、側頭極、海馬・側頭部内側部など、広範囲にわたる部位が挙げられる。