帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (11)脳梁膨大後部皮質 3)脳梁膨大後部皮質の機能 3-0)脳梁膨大後部皮質の全般的機能

帯状皮質って中間管理職なのか
(11)脳梁膨大後部皮質
3)脳梁膨大後部皮質の機能
3-0)脳梁膨大後部皮質の全般的機能
脳梁膨大後部皮質は、「回想記憶(エピソード記憶)」(左半球)、「ナビゲーション」(目的地までを空間的に導く案内)(右半球)、「将来の出来事の想像」、より一般的なシーンの処理など、様々な「認知」機能、「記憶」機能に関与している。
注)「認知」とは、知覚・判断・「想像」・推論・決定・「記憶」・言語理解、を言う。
◎総合すると、脳梁膨大後部皮質は、場所、頭部の向き、空間などに関する1)空間座標情報(海馬台複合体、頭頂連合野)、2)身体的体性感覚情報(頭頂連合野)、3)視覚情報(視覚連合野)、4)記憶に関する情報(海馬台複合体)、5)身体運動情報(運動野、前帯状皮質帯状皮質運動野)の情報を受け、それらの情報を統合し、ナビゲーションに必要な空間情報として、運動関連領野や前頭前野へ送る一大「情報集積拠点」である。
3-1)感覚情報との関わり
◎膨大後部皮質(29野30野)には、「視覚」(後頭葉)、「体性感覚」(頭頂葉)、「聴覚」(側頭葉)の求心路(中枢へ情報を送るボトムアップ神経路)が入り込んでいるから、その合流地点として知覚の統合操作処理が行われている。つまり、諸感覚情報を受け、それら情報を統合し、ナビゲーションに必要な空間に関する情報を前頭葉(運動関連領野や前頭前野)へ送る。
3-2)記憶(特にエピソード記憶)との関わり
脳梁膨大後部皮質は、側頭葉内側部、前頭前野背外側部、「視床前核」と「海馬」に相互的な接続を持つ。それによって、帯状皮質後部領域は、「エピソード情報」の想起に関係する。脳梁膨大後部皮質に障害が発生すると「前向性健忘」を引き起こす。
注1)「視床前核」群は、乳頭体から線維投射を受け、帯状皮質(特に24野:前帯状皮質尾側部)と結合する。大脳辺縁系と関連しており、情動や新しい記憶と関連する。乳頭体は、海馬から脳弓の繊維を受けて、視床前核に乳頭視床束(乳頭体と視床前核を結ぶ神経線維束)を出す。
注2)パペッツ回路:「海馬」→「脳弓」→「乳頭体」→乳頭体視床路→「視床前核」→「前帯状皮質背側部」(24野)→海馬という閉鎖回路。持続的に興奮することで情動が生まれ記憶に関与する。
注3)脳梁膨大部皮質、前部側頭葉(海馬を含む内側側頭葉)、前頭前野、間脳、前脳基底部などが、エピソード記憶に関与する。その内で前脳基底部は、想起過程に関与する。
参照)「前脳基底部」に関しては「13)脳梁」の「(4-2-2)エピソード記憶
注4)脳内での障害時点以降の情報の記憶障害を(未来に向けての)「前向性健忘」という。一方、障害以前の情報の記憶障害(発症以前の過去の出来事に関する記憶を思い出すことの障害)を(過去に対しての)「逆行性健忘」と呼ぶ。前向性健忘は近時記憶の記銘力障害である。つまり、障害発生以降、記憶(記銘)することが出来なくなる。
◎健忘(思い出す能力の障害)に関して、「左」の脳梁膨大後部領域損傷で(「言語性」)健忘が、「右」の脳梁膨大後部領域損傷で(「空間性」)道順(ナビゲーション)障害が起こる。
注)記憶のうち、言語で表現できる種類のもの、例えば、エピソード記憶意味記憶を障害される場合、「健忘」と呼ぶ。
3-3)顔認識との関わり
◎後帯状皮質脳梁膨大後部皮質、および傍嗅皮質の各領域が、「「顔の個人的親近性」(既知か未知か)の情報処理に重要である。その内で脳梁膨大後部皮質は、いろいろな場面状況で覚えた顔や、有名な顔を思い出している時に活性化する。
◎自然風景や都市風景などの地理的な風景に関わる「海馬傍回場所領域」は、顔に対して特異的に活動する顔認知に重要な役割を持つ「紡錘状回顔領域」と補完し合う関係にある。つまり両領域が協同して「風景を背景にする顔」(風景と顔との合成画像)を認識する。
注)19野:視覚連合野(V3)(外線条皮質)(紡錘回/紡錘状回/後頭側頭)
参照)「顔面形態表情の認知」に関しては、「6)後部帯状皮質」の「3)後帯状皮質の機能」の「4)顔面形態表情の認知」