帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (9)前帯状皮質膝前部(32野) 3)膝前部の機能 3-1)内臓感覚(内感覚)

帯状皮質って中間管理職なのか
(9)前帯状皮質膝前部(32野)
3)膝前部の機能
3-1)内臓感覚(内感覚)
◎前帯状皮質膝前部は、特に内臓感覚などの「内感覚」、例えば、「経皮(皮膚)温度刺激」による「痛覚」や「内臓伸展刺激」による「疼痛」を反映する際に活性化する。
注1)内感覚(内部感覚:内受容感覚)とは、身体内部の刺激源から出される刺激によって身体内の状態や変化を意識させる感覚で、深部感覚・内臓感覚・意欲感覚などが含まれる。
注2)内感覚に対して外受容感覚は、外から来る視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感をいう。
注3)深部感覚は、位置覚、運動覚、抵抗覚、重量覚により、体の各部分の位置、運動の状態、体に加わる抵抗、重量を感知する感覚である。これらの感覚の基礎として存在するのが関節、筋、腱の動きの感覚である。これらの感覚刺激は、脊髄を通って、小脳と視床に伝えられ、最終的には大脳へと伝達される。
注4)空腹、渇き、吐き気、尿意などの感覚を臓器感覚という。内蔵からの感覚刺激は大脳皮質に到達するものと脊髄や脳幹で再び臓器にもどり自律反射を起こすものがある。
注5)情動・感情の生起に伴って観察される情動反応と呼ばれる身体反応の多くは、内受容感覚器からもたらすものである。
注6)内受容感覚は、身体反応を支配する末梢神経のうち、主に自律神経が大きく関わる。副交感神経系・交感神経系双方の情報は、脳幹の「傍小脳脚核」に投射され、ここで身体の生理状態の統合が行われる。傍小脳脚核は、扁桃体などの辺縁系へと情報を伝達する。その後、「視床」の内側核と腹内側基底核を介して、「前帯状皮質」と「島皮質」に投射される。前帯状皮質と島皮質は、中脳水道周囲灰白質など脳幹のホメオスタシス関連領域の制御を行い、身体状態の調整に関与する。島皮質には体部位表現があり、それらの情報すべてを統合したもっとも高次な情報は島皮質前部(特に右)に表現される。意識できる身体内部の感覚は、この右島皮質前部から来る。右島皮質から前帯状皮質前頭前野眼窩部へも情報伝達がなされる。
参考)内側傍小脳脚核は、レム睡眠とノンレム睡眠の切り換え制御する神経核である。
◎大腸を刺激すると、視床、「島皮質」、「前帯状皮質」、「前頭前野」が活性化する。より具体的に述べると、 消化管(大腸)からの侵害刺激(例えば圧迫)は、脊髄神経の感覚器官が受容して、脊髄後根から脊髄後角に情報を伝える。それは脊髄視床路、脊髄網様体路を経由して「視床」にまで上行する。そこから「島皮質」、「前帯状皮質」、「前頭前野」に情報が出力される。
右島皮質前部・弁蓋部、右島皮質後部、前帯状皮質視床頭頂葉内側部(楔部)、前頭葉体性運動野(4野:前頭葉の中で手足など随意的な運動の指令を出す一次運動野)、補足運動野が、内受容感覚への気付きに重要な領域である。
◎前帯状皮質が、感情を経験すると同時に、身体反応の変化の感覚も伴ってやって来る。その身体反応を感じた時に、心が動く、心が揺さ振られると感じる。「楔前部」の活動が、島皮質・腹内側前頭皮質の活動と相互作用関係にあり、「内受容感覚と感情経験を結び付ける」役割を担っている。
◎環境からの刺激が、大脳皮質の感覚野や運動野を経由して引き起こした「身体変化」(内臓変化・姿勢・表情)が、再び「大脳皮質(前頭前野)にフィードバック」され、これを改めて「知覚」することによって「感情の主観的経験」が生じる。
主観的に感情を経験しているときの脳活動は、前帯状皮質、二次体性感覚野、島皮質、脳幹被蓋の核である。どのような感情経験にも、活性・不活性という形で意味ある類型(パターン)を示し、しかもこれらの類型が感情の種類によって異っている。
注)もちろん「主観的感情」は、1)「身体反応の変化の受容」からだけではなく、2)「状況」(前頭前野メタ認知)と3)「経験(記憶情報)」との「統合的理解」によって生まれる。内受容感覚と、現在置かれている文脈や環境情報の統合が、主観的な感情経験の基盤であり、感情を意識する過程には、自己の身体内部状態を参照する過程が含まれる。