帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (7)帯状皮質の障害と症状 1-2)「前帯状皮質」と症状 1-2-5)「無言」「無感覚」「運動遅鈍」「無動」「無感情」

帯状皮質って中間管理職なのか
(7)帯状皮質の障害と症状
1-2)「前帯状皮質」と症状
1-2-5)「無言」「無感覚」「運動遅鈍」「無動」「無感情」
◎両側(左右半球)の24野(背側前帯状皮質)を切除された男性が、「無言症」になった。だが他方で、24野に限定した摘出手術が行われ、強迫性障害、不安障害、攻撃的な性質が改善されるという事例もある。
注)単語を喋る発声、発話時や、歌を歌う時に活動する脳領域のひとつに前帯状皮質という部位がある。前帯状皮質は、脳幹の中脳水道周囲灰白質に線維投射して、発声を制御する。より厳密に言うと、前帯状皮質は、発声に必要な情動的、動機的信号を発する。
帯状皮質が損傷すると、「無感覚」、「運動遅鈍」、「無動無言」となる。特に前帯状皮質に損傷を受けると、無動性無言症、感情鈍麻、痛覚鈍麻などの情動性変化が起こる。
注)遅鈍とは、動作がおそく頭の働きがにぶいこと。鈍麻とは、感覚がにぶくなること。
参考)無言無動状態は、内側底部(眼窩部)前頭前野、前帯状皮質、前大脳動脈支配領域の内側前頭前野、吻側基底核の病変で同様の症状が起こる。
注)前大脳動脈は、脳の真ん中上方部分、言い換えると前頭葉の内側面(中央部分)の血流を支配する。即ち脳梁に沿うようにして前方から後方へと大脳の上部を巡回する。
◎脳血栓で前帯状皮質に障害を起こした35歳の女性が、頭の中がからっぽのような感じがして、話をしたいという欲求が起こらなかったと、回復後に語った。
◎両側(左右)帯状皮質の損傷は、全く無感情で無動無言状態を起こす。彼等は、動くことも稀で、失禁することが多く、与えられたときだけ飲食する。発話を生じても、それは質問に対する単音節語の反応だけである。情動を表現することはなく、痛覚に対してさえ無関心である。
◎骨格運動器(身体活動を担う筋・骨格・神経系の総称)領域と補足運動領域が位置する前帯状皮質後部(24野:帯状皮質運動野)が侵害されると、「自発運動」活動が消失する。逆に、「帯状皮質(帯状皮質運動野)」が侵されるが、補足運動野、骨格運動野が損傷されない場合には、「運動活動自体は正常」であるが、患者は、顕著な「無関心」、「従順さ」及ぴ課題解決の参加に対する「動機付けを喪失」する。つまり、運動を実行する筋肉や神経部分(ボトムアップ機能)は正常だが、それらを動かす指示を出す(トップダウン)機能が働かない。
注1)人の補足運動野が障害されると、自らすすんで手足を動かしたり、言葉をしゃべったりしなくなる。この場合、意識状態や知的水準は正常で、患者は、自らも、手足が意のままに動かないことを自覚している。時には、自らの意志とは無関係な動作をしてしまうこともあり、かえって意図した動作が妨げられてしまう。しかし、手を動かせと強く繰り返し命令すると、正常な人と同じように手を動かすことができる。
注2)「補足運動野」は、頭頂連合野の前方(5野)から「体性感覚の情報」を受け取る。従って、補足運動野は、身体に近い感覚情報(体性感覚)の処理に基づいて運動に関わる。そのために、左右の手や足を協調させて使う運動にも関係する。また、補足運動野は、記憶と関連の深い大脳辺縁系とのつながりも強く、記憶にもとづいて順序正しく運動することにも関わる。つまり、運動開始の「意志喪失」は、補足運動野ないし帯状皮質骨格運動領域(帯状皮質運動野)損傷の結果である。
注3)意志のみという内因性の自発条件において、運動実施前から徐々に増加するような脳活動が、補足運動野に加え、視覚野、聴覚野、楔前部、右半球下頭頂小葉、右半球下前頭回、島皮質においても見られる。
◎無言無動症は、前帯状皮質(脳梁膝部付近:32野:帯状皮質運動野)と補足運動野を含む領域の両側性障害により引き起こされる。