帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (7)帯状皮質の障害と症状 1-2)「前帯状皮質」と症状 1-2-3)ADHD(注意欠如多動症候群)

帯状皮質って中間管理職なのか
(7)帯状皮質の障害と症状
1-2)「前帯状皮質」と症状
1-2-3)ADHD(注意欠如多動症候群)
1-2-3-1)ADHDとは
ADHDは、「注意欠如多動性障害」とも呼ばれ、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(思いつくと行動してしまう)といった症状が見られる障害である。
注)ADHD者は、好きな分野や得意な分野では集中力を維持できたり、ミスも少ないこともある。だから全般的な不注意とは限らない。同様に多動性といっても、好きなことには集中ができるが、それ以外にはほとんど関心や興味を示さない。だから好き嫌いが極めてはっきりしていると言える。
1-2-3-2)ADHDのの原因
ADHDの脳機能的原因として、3つ挙げられる。1)実行機能障害、2)報酬系の障害、3)情動の制御異常。
1)実行(遂行)機能は、高次の「トップダウン」の認知処理過程であるが、それが障害されると「抑制欠如」が生じる。脳基盤としては、背外側前頭前野から背側線条体尾状核に投射され、淡蒼球黒質視床下核から視床を経て前頭前野に至る回路が挙げられる。
2)報酬系の障害によっては「遅延報酬の嫌悪」が生じる。即ち、将来の大きな報酬よりも目前の小さな報酬に飛びつきやすくなり、報酬遅延に対してじっと待てなくなる。脳基盤としては、前頭前野眼窩部、前帯状皮質から、腹側線条体側坐核に投射され、腹側淡蒼球視床を経て前頭前野に至る回路が想定されている。
3)情動の制御異常とは、情動刺激への反応のトップダウン型制御への困難をいう。これは顕著な情動刺激への強い志向性、小さくても即時の報酬への優先とも関わる。脳基盤としては、ボトムアップについては扁桃体、腹側線条体前頭前野眼窩部が、トップダウンについては前頭前野腹外側部、前頭前野内側部、前帯状皮質が重要とされる。
◎注意欠如多動症候群(ADHD)患者は、「前帯状皮質」に異常がある。ストループ課題を行っている際の前帯状皮質の背側部(24野:背側前帯状皮質)の活動が低下している。
注)前頭葉に生じる「シータ」周波数(4-7Hz)の脳波(Fmシータ波)は、「注意が要求される多様な状況」で出現する。このシータ波は、自己ペースで運動するときに、「前頭前野9野」(背外側部:上前頭回前部)と「背側前帯状皮質24野」に出現する。
参照)「Fmシータ波」に関しては、「後帯状皮質」の「*1帯状皮質の機能」の「(3)「注意」と注意の諸相」
◎注意を向けている標的から「柔軟かつ適切」に他の標的に変更(切り換え)できる機能は、「前頭前野背外側部」および「前帯状皮質」が関与する。左前頭葉・下前頭回、左・右後帯状皮質を含む下前頭葉領域が、課題「切り替え」に関わる。
参照)「注意」に関しては、「6)後帯状皮質」の「(3)「注意」」。
◎前帯状皮質は、1つの遊びから他の遊びへ、1つの考えから他の考えへと、思考を選択して、行動を「切り替える」役割を担う。しかしながら、この前帯状皮質が常に「亢進して抑制できない」のであれば、常に不安や恐怖など、ネガティブな感情に襲われる。
疑問)帯状皮質の亢進は何が原因であろうか。乳酸が脳機能の亢進に寄与するという仮説があるが。
解)扁桃体から大脳新皮質への神経入力の投射量と、逆の大脳新皮質から扁桃体への神経入力の投射量では、扁桃体から大脳皮質への投射の方が多い。即ち、体(ボトムアップ)からの情報の方が意志(トップダウン:大脳新皮質)よりも強く反映されやすい。前帯状皮質や島皮質の機能亢進は、辺縁系、特に扁桃体や海馬の機能亢進に対する大脳皮質(前頭前野)機能による制御不足が原因で生じる過活動状態を反映する。言い換えると、前帯状皮質の萎縮が生来的にあり、ここに外的刺激を十分に制御できない扁桃体や島皮質からの過剰刺激が、前帯状皮質流入して本来の機能以上に活動が亢進した状態である。

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