帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (7)帯状皮質の障害と症状 1-2)「前帯状皮質」と症状 1-2-1)うつ病

帯状皮質って中間管理職なのか
(7)帯状皮質の障害と症状
1-2)「前帯状皮質」と症状
1-2-1)うつ病
参照)「うつ病」に関しては、「8)(帯状)膝下野(25野)」の「(3)膝下野の機能やその障害」の「3)「うつ病」」
うつ病は、気分が強く落ち込み憂うつになる、やる気が出ないなどの「心理的精神的な症状」のほか、眠れない、疲れやすい、体がだるいといった「身体的な症状」も現れることのある病気で、「気分障害」の一つである。
注1)うつ病が起きるメカニズムについてはまだ明らかになっておらず、いくつかの仮説が提唱されている段階にある。
注2)「気分障害」とは、気分の状態が普通のレベルを超えて高揚したり落ち込んだりなどすることが一定の期間続くものをいう。身体全体の調子の病気でもある。なお「気分」とは、ある期間持続する、やや漠然とした心身の状態を表す。
うつ病では、「前帯状皮質前部(膝下野:25野:情動領域)」における「過活動」が認められる。膝下野への電気刺激が、「うつ病」の治療に役立つ可能性もある。
注)うつ病では、両側の眼窩部外側、前頭前野腹外側(44野45野)、「後帯状皮質」、左側の扁桃体が亢進する。反対に減少する領域は、膝下野、背側内外側および背外側前頭前野である。
疑問)膝下野の活性化が減少するという記述は、膝下野の過活動と矛盾するが。
解)うつ病患者では、左右半球間の機能的不均衡があり、左半球側の機能低下と、相対的な右半球側の機能増大がある。このことと関係があるかもしれない。
参照)「5-3)前帯状皮質」の「10)「扁桃体」」から「ネガティブ(悪い方向へ受け取る)な情動」刺激(例えば他人の恐怖表情)に対する「左扁桃体」の活動が「亢進」する。
帯状皮質の認知領域(32野・24野)と情動領域(25野)は、相互に抑制し合う。心の病気(うつ病や不安障害など)の人は、帯状皮質の「認知」領域(32野・24野)の機能が低下し、逆に「情動」領域(25野)が過敏になっている。それと同時に眼窩部(11野)、扁桃体、海馬なども過活動になる。うつ病患者では、背外側前頭前野(9野46野)、前帯状皮質(24野32野)、眼窩部(11野)、膝下野(梁下野25野)、扁桃体、海馬などの領域に異常が見られる。
疑問)帯状皮質の「認知」領域(32野・24野)の機能が低下し、逆に「情動」領域(25野)が過敏ということは、ストレスは、情動領域の過活動をもたらし、その結果からの疲労に因る機能低下をもたらすということなのだろうか。
解)身体的な苦痛(ストレス)から心理面に変調を来す。例えば痛みを伴う症状が長期に続くと、視床下部扁桃体、青斑核などが亢進して、精神が不安定になる。逆に心理ストレスや喜怒哀楽などの情動が体の恒常性に影響を与える。 例えば、心理ストレスによって、交感神経系の活動が活発になる。心身相関、病は気から。
◎不快を予測する場合には、右前頭前野と前帯状皮質の活動とが亢進しており、うつ病では、恒常的に不快予測が優位な状態となっているため悲観的思考になる。うつ病患者では、快情動に関わる左前頭前野(46野)の活動低下が認められる。
注)快の予測には左前頭前野が、不快の予測には右前頭前野が活性化する。
うつ病患者は、海馬の萎縮が見られる。というのは、「心理的ストレス」を長期間受け続けると「コルチゾール」の分泌により、海馬の神経細胞が損傷・破壊され、海馬が萎縮する。心的外傷後ストレス障害(PTSD)でもその萎縮が確認される。セロトニンが、うつ病の発症に深く関与している。「コルチゾール」は、セロトニンを減少させる働きを持つ、ストレスホルモンとも呼ばれる。
◎近接回避(接近か回避か)の意思決定は、不安やうつといった情動や気分と関係が深い。不安を感じやすい人は、回避選択が多く、うつの人は近接選択が有意に少ない。