帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (6)後帯状皮質 3)後帯状皮質の機能 3-9)空腹状態と食べ物

帯状皮質って中間管理職なのか
(6)後帯状皮質
3)後帯状皮質の機能
3-9)空腹状態と食べ物
◎「空腹」状態で「食べ物」を見せられると、「扁桃体」(価値評価)、「後帯状皮質」(記憶)、「中脳ドーパミン領域」(報酬)が活性化する。詳しくは、扁桃体、海馬傍回(記憶装置)、後帯状皮質、中脳腹側被蓋野(脳幹ドーパミン領域)、青斑核(ノルアドレナリン神経領域:アクセル:行動化)が活性化する。
◎海馬傍回は、記憶の「符号化」(記銘)及び「検索」において重要な役割を担っている。なお「帯状束」は、前帯状皮質、後帯状皮質、海馬傍回を連絡している。帯状皮質が興奮する事で、海馬→海馬采・脳弓→乳頭体→視床前核→帯状皮質(特に「後帯状皮質」)→海馬傍回→海馬体を結ぶ経路(パペッツ回路)で持続的に興奮する事で情動が生まれ記憶に関与する。
◎青斑核は、脳幹にあるノルアドレナリン作動性神経を含む神経核である。覚醒、注意、「情動」に関与する。ノルアドレナリンが放出されると、交感神経の活動が高まり、その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した(活性化)状態にする。
3-10)あくびの伝染
◎あくびは、哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類など脊椎動物全般に見られる行動である。その内で、群れで生きる、「社会性動物」の、サル全般、犬などでは、あくびが伝染する。だが、人間の子どもであっても4歳以下ではあくびは伝染しない。
◎緊張時や不安状態(情動ストレス)で生じるあくびは、扁桃体(中心核)で処理された情報が、視床下部室傍核に伝えられて引き起こされる。
注)視床下部室傍核は、視床下部前方の背側にある神経核で、室傍核の内側部に位置する小細胞性領域には、ストレスホルモンとも呼ばれる副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンを分泌する神経細胞体が存在する。そこは心理的ストレスによっても活性化する。所が、室傍核では、それ以外にも、オキシトシンが、視床下部の視策上核とともに、産生される。室傍核で産生されたオキシトシン扁桃体に投射している。このオキシトシンは、人間関係に深く関わり、例えば、男女間、夫婦間、父母子間の絆形成に非常に重要なホルモンである。
参照)「オキシトシン」に関しては、「4)帯状皮質全般の機能」の「3-2-5)「オキシトシン」」
◎あくびの伝染時に活性化される脳領域は、「後帯状皮質」、楔前部、視床、海馬傍回である。
◎情動ストレス以外にも、他者に対して無意識的に同調(表情やしぐさの伝染)することがある。自閉症者はあくびの伝染が少なく、知らないもの同士の外集団よりは知り合い同士の内集団であくびが伝染しやすい。あくびを目にする(認知する)と、まずは反応(実行)の抑制機能が働くが、その後に情動的な共感(自分事化)が生じて、あくびが伝染する。
注)「情動的共感」は、「情動伝染」のように、なかば無意図的かつ自動的に「他者と同様な情動状態が経験」される。
疑問)自分事化が生じるのは、前帯状皮質(特に膝下野)であって、後帯状皮質ではないのだが。
解)残念ながら理由は不明。情動的共感には、扁桃体、島皮質、前帯状皮質背側部(24野)など情動関連部位や顕著性(セイリエンス)ネットワークが関わる。仮説なのだが、後帯状皮質は、認知(注意)と情動のインターフェイス(接続装置)としても働くから、あくびを先ず認知し、その後情動的共感としての伝染が発生するのではないだろうか。
3-11)後帯状皮質と外側前頭前野の関係
◎後帯状皮質は、外側前頭前野(認知、「外向性」)と反対の活動パターンを示す。後帯状皮質の重要な機能は、「記憶の呼び出し」であり、それは「内向性機能」である。外向性と内向性はシーソーの関係である。