帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (6)後帯状皮質 3)後帯状皮質の機能 3-6)周辺的不確かな探索

帯状皮質って中間管理職なのか
(6)後帯状皮質
3)後帯状皮質の機能
3-6)周辺的不確かな探索
◎「後帯状皮質」は、関連情報や証拠集めなど、「周辺的なはっきりしない探索」機能として働く。これは、あたかも、主役(中心的重要課題)が、仕事に専念できるように、脇役的後帯状皮質が、注意を逸らす「障害物を取り除く」役割を担っているかのように見える。これは、「選択的注意」と同じ機能である。選択的注意は、複数の情報の中から、特定の情報に対して選択的に注意を向けることである。具体的には、標的と非標的を区別し、非標的への反応を抑制して標的にのみ反応する必要がある時に起動する。これは、視覚における中心視と周辺視の役割に似ている。後帯状皮質が視覚の周辺視の役割と重なる。
参照)「中心視と周辺視」に関しては、「*1帯状皮質」の「3)後帯状皮質の機能」の「3-3)「注意」と注意の諸相」の「参考)中心視(視野)と周辺視(視野)」
3-7)情動を伴う道徳課題
◎「道徳」とは、社会や共同体において、その構成員の大多数によって共有される「正邪・善悪の価値観」に基づき、より健全で快適な共同生活を送るために、守るべき「規範、行動の指針」をいう。
◎「道徳文」を読んだ時に、両側の前頭極、内側前頭回(9野10野)、右小脳、右側頭極(38野)、上側頭溝、左前頭眼窩部(10野11野)、左楔前部、後部淡蒼球の活動が増加した。このように道徳判断に特化した脳領域があるのではなく、道徳課題に脳内のいくつもの領域がネットワーク化して統合的に関与している。なお道徳判断に関連する他の領域は、後帯状皮質(31野)とその周辺の楔前部(7野)である。
◎後部上側頭溝・下頭頂領域は、他者の信念や意図の推論に重要な脳部位である。
注)個人的意図の課題では、後帯状皮質、楔前部、「右下頭頂小葉」(縁上回と角回)が活性化する。
◎「情動」を伴う「道徳」課題では、「内側前頭前野」(9野10野)、「後帯状皮質」(31野)、両側下頭頂小葉(39野)が活性化する。一般論ではなく個人が関与する葛藤では、社会・道徳的処理を行う領域(内側前頭回、後帯状皮質、両外側上側頭溝)の活動が増加した。つまり情動が付加される場合も、個人が関わる場合も、同じ脳領域が関わる。とすれば個人が関わる場合には、無意識的に情動が起動するのだろうか。
◎相手がいる「社会的場面」でうまく行動してゆくには、他人の表情などの情動部分の意味を読み解き、それを基に適切な意思決定をして社会行動を上手に行う必要がある。情動的刺激の認知に中心的役割を果たすのは扁桃体である。一方、社会的場面の一つである道徳判断で最も重要なのは、「内側前頭回(内側前頭前野:9野10野)」である。ここは、「情動を、意志決定や企画へと付加統合」する領域であり、心の理論や道徳判断を含む社会的機能に大きく関わる。この領域(9野10野)は、他の前頭内側領域、前帯状皮質(心の理論や自己関連課題に関与)や更に上位の内側領域(8野9野)とは区別される、この領域は、報酬や罰を即時に評価する前頭眼窩(10野11野)/腹内側領域(情動情報に関与しない)とも区別される。
3-8)認知(注意)と情動のインターフェイス(後帯状皮質)
◎「後帯状皮質」は、「認知(注意)」と「情動」のインターフェイス(接続装置)として働く。認知機能が、情動的な期待(例えば、うれしいぞの金銭的な報酬)によって増強される場合には、後帯状皮質が活性化する。
参照)上の「(7)情動を伴う道徳課題」で述べたように、単に道徳課題では後帯状皮質が活性化しないが、「情動」を伴う「道徳」課題では後帯状皮質が活性化する。

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