帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (6)後帯状皮質 3)後帯状皮質の機能3-3)「注意」と注意の諸相 3-3-2)注意の諸相

帯状皮質って中間管理職なのか
(6)後帯状皮質
3-3)「注意」と注意の諸相
3-3-2)注意の諸相
◎注意の定義は、既に上で述べたが、ここからは、注意の諸相に関して述べていく。注意は、方向性に関して、
1)全般性注意と
2)方向性(志向性)注意とに区分される。
1)全般性注意は機能的に更に、
1-1)持続性注意、
1-2)選択性注意、
1-3)注意の制御に区分される。
1-1)一定時間集中して作業を継続することが「持続性注意」である。これは、注意の時間的相を指し示す。持続性注意には、前帯状皮質前頭前野背外側、下頭頂小葉、視床、脳幹からなるネットワークが関与する。
その内で前帯状皮質は、高次の注意機能と深く関わり、注意機能の階層において上位の段階を占め、注意システムにおける調整活動で重要な役割を果たしている。故に「前帯状皮質」の切除は、「持続的な注意」に関してきつい障害が生じる。
参照)「持続性注意」に関しては、「3-3)「注意」と注意の諸相」の「Fmθ波(前頭正中シータ波)」
1-2)「選択的注意」は、複数の情報の中から、特定の情報に対して選択的に注意を向けることである。具体的には、標的(ターゲット)と非標的を区別し、非標的への反応を抑制して標的にのみ反応する必要がある。それを実行する機能が選択的注意である。
言い換えると、注意を向けた意味のある刺激に対して感覚野の特定部分の神経活動が増大して、その信号だけを選択的に上位の知覚野へ伝え、それ以外の部位からの神経活動は遮るという抑制的選択が働く。選択と抑制はワンセットである。ボトムアップ式の注意では、背景の情報を抑制してスポットライトの明るさを際立たせる働きを持つ「視床網様核」による情報選別が重要である。
注)方向性注意とは、ある方向への注意を意味し、全般性注意とは、全方向(全空間)への注意を意味する。
この選択的注意に関与する代表的な部位は、「前帯状皮質」と「帯状束」である。他にも、下前頭後頭束や前頭線条体路の関与があり、右大脳半球の広範なネットワークが注意機能を司る。
1-3)注意の「制御」を更に細分化すると、
1-3-1)注意の「転換」と、
1-3-2)注意の「配分」に区分される。
1-3-1)注意の「転換」に関して、例えば、視覚課題を解決する時には頭頂後頭葉が活性化し、聴覚課題を解決する時には左側頭葉が主に活性化する。両課題を同時に解決する時には、それぞれの領域以外に前頭葉も活性化する。
というのは、注意の「切り換え」(転換)は、「前頭前野背外側部」および「前帯状皮質」とが担う。つまり「前頭前野背外側部+前帯状皮質」が他の領域を結ぶ働きをし、更に他領域の上位階層に立つ。
◎注意を向けることをあらかじめ要求された手がかり刺激が提示されると、1)頭頂葉の下部(下頭頂葉)、2)前頭前野背外側部、3)視床枕に活動が現れる。
頭頂葉視床枕は、それぞれ直接に(刺激が表示される)初期視覚野と線維結合している。前頭前野背外側部は、下頭頂葉視床枕を介して上位階層から間接的に初期視覚野を制御する。前頭葉、側頭葉、頭頂葉からトップダウンに制御を受ける部位は、「視床枕」であり、ここが「トップダウン様式の注意」を増強したり、行動を円滑に行ったりという機能を持つ。
◎その内で、頭頂葉に損傷を生じると、注意を対象物に向ける捕捉よりも、注意の解放(切り替え)に問題を生じる。
注意の転換を細分化すると、今向いている注意を、1)「解放」して、新しい対象へ2)「移動」させ、それを3)「捕捉」するという三段階がある。
その内で、「下頭頂葉」は、前の注意場所(物体)から「注意を解放」する(引き離す)ことに関わり、「視床枕」は、新しい場所(物体)に「注意を捕捉し集中」することに関わる。「前頭前野背外側部」が移動(切り換え・転換)を受け持つ。
1-3-2)配分とは、「複数の対象に同時に焦点を当て」ながら行為を遂行する時に必要な機能である。「後帯状皮質」は、「デフォルトモードネットワーク」、「執行系(前頭ー頭頂)ネットワーク」、「背側注意ネットワーク」、「セイリエンスネットワーク」、「感覚運動ネットワーク」、と結合性があり、「注意の配分を調節」している。
注1)1-1)「持続的注意」でも1-2)「選択的注意」でも1-3-1)「注意の転換」でも、「前帯状皮質」が重要な役割を担う。1-3-2)「注意の配分」に関わるのは「後帯状皮質」である。このことから、帯状皮質(特に前帯状皮質)が、注意に関して重要な役割・機能を持つことが知れる。
注2)セイリエンスネットワークとは、「帯状皮質前部」および「島皮質前部」からなるネットワークであり、身体の恒常状態(ホメオスタシス)から逸脱し、内臓を含む身体に変化が生じた場合に活動し、「ホメオスタシスの回復を促す」役割を担う。
注3)「中央実行系(作業記憶)」機能は、「注意の制御」機能を担う。つまり「注意の諸側面の全体を司る」機能を受け持つ。注意機能全体を統括する最上位階層に立つ。中央実行系機能=執行系ネットワーク=作業記憶=ワーキングメモリ。
1-3-2)後帯状皮質は、「注意の方向(内向きか外向きか)」と「注意の広さ(広いか狭いか)」の「調節」に関わる。その内で、後帯状皮質背側部(31野)は、作業記憶課題下では、(背)外側前頭前野などの「執行系ネットワーク」(作業記憶)と連係して、注意の調節装置として「外的な注意」に関わる。後帯状皮質腹側部(23野)は、海馬などの側頭葉と連係して、記憶に基づいた「内的な注意」に関わる。