帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (6)後帯状皮質 3-3)「注意」と注意の諸相 3-3-1)注意とは

帯状皮質って中間管理職なのか
(6)後帯状皮質
3-3)「注意」と注意の諸相
3-3-1)注意とは
◎注意とは、特に、生理学において、「注意」とは、脳が多数の情報の中から認知すべき情報を選択する機能、つまり「情報を取捨選択」する働き、である。そのことによって、特定の事柄が「意識の中心」を占める。
注)生理学は、「生体とその器官・細胞」などの「機能」を研究する学問である。
◎さまざまな感覚入力により、1)「受動的(ボトムアップ型)」な多種多様の情報の中から特定の対象に対し、2)「選択的注意」が起動され、その後必要に応じて、3)「随意的な能動的注意(トップダウン型)」に引き渡す。
参考)Fmθ波(前頭正中シータ波)
「注意集中」という精神活動と密接な関係をもつ脳波のひとつであるFmθ波(前頭正中シータ波)は、「精神作業」中に「前頭正中部」の脳波上にしばしば連続的に出現する、6~7Hzのθ律動である。Fmθ波が出現している最中の作業は、計算に熱中している、作業後ふと我に帰った、他のことが考えられない、視野を限定して不必要なものを見ない状態になる。例えば、目をつぶって暗算をしていると、θ波が現れる。音楽のイメージ演奏、座禅やヨーガの瞑想などの時にも、前頭葉からθ波が出る。Fmθの出現率は、読譜条件よりも暗譜条件で高まる。Fmθ律動は、一定の課題や事象への注意集中、没頭、無我などの状態にあることを示唆する。活動源として、「前帯状皮質」および「前頭前野内側部」の比較的浅い皮質領域の2カ所に特定できる。快い音楽を聴いた時にも、Fmθ波が増加し、不快な音楽では心拍数が低下する。
高次の認知能力を発揮する場合に、課題に強く注意を絞り維持するために、さらなる努力を持続的に行使する能力行使に、前頭前野背外側部と前帯状皮質の活動とが関与する。作業記憶容量の大きい者では前帯状皮質の活性化が顕著である。「外部刺激」の受容によって、「Fmθ律動は容易に消失」する。つまり、Fmθ律動は、「内的作業に没頭」している証でもある。
注)自分のペースで運動課題を行うサルの前頭前野(9野:背外側)と腹側前帯状皮質(32野)に、人の前頭正中シータ波に相当する脳活動が見られる。
注意を一元的に支配管理するような脳の機構は存在しない。人の前帯状皮質は、高次の注意機能と深く関わりあっており、前帯状皮質は注意機能の階層における上位の段階に位置し、注意システムにおける調整活動で重要な役割を果たしている。
Fmθシステムは、「能動的な前帯状皮質の活性の維持」によって、たとえ新奇性が薄れて自動(無意識)処理が働き始めても能動的注意の低下を食い止めて持続的に注意を向けさせる機能を持つ。最初の前帯状皮質の活動は、新奇の刺激に対する注意の資源の配分を受け、更に処理過程が他のネットワーク間で広がる時に、背外側前頭前野を含む作業記憶が十分に活性化する。
参考)中心視(視野)と周辺視(視野)
文章中の1文字だけを注視した時であっても、常にその周囲の十数文字を同時に読んでいる。それらの情報は視野の広い範囲から並列に大脳皮質へ送られており、視野の周辺部は、単に視線を向ける対象を検出するだけの役割を果たしているのではない。だが視野の周辺部の視力は低く、周辺視では細かい図形を認識することはできない。図形の全体的な形を把握するとともに、注意を向ければ、図形の細部をも見 ることができる。
このように「中心視」の第1の役割は、優れた視力によって図形の1)細部の「特徴を検出」することであ る。第2の役割は、周辺部を含めた視野の広い範囲からの2)「情報を統合」して、図形中の大きな特徴を検出することである。それに対して「周辺視」の役割は、図形が中心視の領域だけにおさまり切らない場合に、その特徴の検出を行うことにある。それ以外に周辺視の役割として、中心視の機能が最も有効に発揮される位置に視線を誘導することも含まれる。
まとめると、周辺視野は、焦点を合わせている中心視野の外側の視野のことをいう。周辺視野は、何かに焦点を合わせる前に、「第一印象」や「全体観・全体像」をつかむためにある。というのは周辺視野は、全視野の90%以上をカバーする。細かい特徴を分別する能力では劣るが、潜在的な危険をすばやくキャッチする能力として、「動きに気づく能力」ははるかに優れている。周辺視野は森を見るためにあり、中心視野は木を見ることに優れている。
注)何の文字だかわかるというような概念構成ができる高次機能は「認識(認知)」であり、図形の全体像や部分がわかる、あるいは図形の存在がわかるといった段階は、「知覚」である。
◎「注意」は、左半球よりも「右半球が優位」(上位階層)である。つまり、注意を最高階層から統合するのは、右半球である。視空間認知 に対する脳の働きは、左右の大脳半球で違いがあり、右半球は両側 空間、左半球は右空間の認識のみに働く。