帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (6)後帯状皮質 3)後帯状皮質の機能 3-1)空間情報の処理

帯状皮質って中間管理職なのか
(6)後帯状皮質
3)後帯状皮質の機能
3-1)空間情報の処理
◎「右」「前頭葉」は、「注意」、「作業記憶」、「視空間」認知、「感情理解」や「社会的認知」機能といった様々な機能を司る。というのは、前頭葉は、頭頂葉後頭葉、側頭葉と線維連絡しているからである。なお、空間知覚は、嗅覚、前庭(平衡)覚、視覚(後頭葉)、聴覚(側頭葉)、体性感覚(頭頂葉)などほぼすべての感覚を動員して統合し、その3次元的な外界空間を脳内で構築表現する。空間認識能力は右脳によって統合制御される。
注)空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。海馬(側頭葉と隣接)がその空間に関わる記憶の中枢である。
注)前庭覚(受容器は耳の奥にある耳石器と三半規管)は、身体の傾き、スピード、回転(揺れ)を感じる感覚である。
◎「楔前部」(頭頂葉)は、「後帯状皮質」および「脳梁膨大後皮質」とともに、「空間情報」の処理に関与する。後帯状皮質吻側(23野)と中間部(31野)は、空間認知領域(23野31野)である。
◎後帯状皮質(脳梁膨大部皮質を含めて)が、視空間(頭頂葉)とともに記憶処理(側頭葉)にも携わる。
◎背外側前頭前野、下前頭回(44野45野47野)、前帯状皮質は、「空間性作業記憶」の中心的役割を果たす。
注1)背外側前頭前野は、背側注意機能ネットワークを構成し、注意を意図的に空間情報に向け、それを維持するために働く。
注2)下前頭回は、腹側注意機能ネットワークを構成し、入って来る複数の空間情報に優先順位をつける。下前頭回は、弁蓋部(44野)、三角部(45野)、眼窩部(47野)、ブローカ野(44野)で構成される。
注3)三角部は、前頭葉の左下前頭回にあるブローカ野の一部で、記憶の認知制御(意識的に思い出すというトップダウン処理)に関わる。
注4)空間性作業記憶は、色や形、物の空間的位置、時間系列などの情報(即ち言語以外の情報)の一時的な記憶に関与する。主に言語性作業記憶は左大脳半球、空間性作業記憶は右大脳半球が極大まかに関与する。
◎腹側注意機能ネットワーク(前頭眼野と縁状回(40野)を連絡する)は、視空間認知機能の中でも特に「注意」を向ける「方向の転換」に関与する。
参照)「5-3)前帯状皮質」の「12)「外向性と内向性」」
◎内側運動前野の「補足運動野」(6野内側)は、複数の空間情報を統合したり、「帯状皮質」と共に不必要な情報を抑制し、整理する役割を果たす。
◎「視空間認知」機能は、「右大脳半球が優位」であり、右頭頂葉、特に下頭頂小葉、または右側頭葉が重要である。
「視空間認知」能力とは、ものの「位置」や「向き」を認識する能力、例えば、空間をみて何かどのような状態になっているかを知ったり、平面の地図や絵を見て「立体的にイメージ」したりする能力をいう。この視空間認知能力が低下すると位置関係がわからなくなる。
参考)右脳(右半球)と左脳(左半球)の機能的優位性
右脳(右半球)と左脳(左半球)、どちらも持っている機能はほぼ同じである。ただ右半球、左半球は、それぞれ得意(優位:高次機能まで担当)分野を持っている。例えば、右半球は空間認識、図形認識、音楽的能力、直感的思考という分野に優れており、左半球は言語機能、計算能力、論理的思考が優れている。
空間性注意は、側性化が起こっていて、右半球の果たす役割が大きい。右半球は、両側性の空間性注意、左半球は、主に対側の空間性注意にだけ関わる。左半球損傷の場合は右半球が右半側にも注意を向けている。つまり、「空間に関しては、右脳は左右両側を管理し、左脳は対側の右側のみ」を管理する。
顔の認知は、後頭葉や側頭葉が関わっていて、右半球の優位性が言われている。言語に関しては、音韻レベルの認知や構音変換など基礎的な機能は両側の大脳半球で処理されるとしても、より高次の言語機能については、一般に左大脳半球の優位性がある。
記憶内容に関しては、優位半球(左半球)の内側側頭葉は、「言語性記憶」に関連して、非優位半球(右半球)の内側側頭葉は、「視覚性記憶」に関連する。ちなみに、生物にとって、二大関心事は、餌と敵である。右脳と左脳に分かれたのは、同時に両方に注意を向けるためではないかという説がある。左脳が餌に、右脳が敵にと同時に注意を分散させる。左脳:餌、物質、喜び、報酬。右脳:敵、空間、悲しみ(恐怖)、罰。