帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 17)情動体験と右脳(右半球)と左脳(左半球)

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-2)前帯状皮質(個別機能)
17)情動体験と右脳(右半球)と左脳(左半球)
◎前帯状皮質は、恋愛感情、性的興奮、音楽などでの歓喜体験で活性化される。例えば、恋人が相手を見る時、母親が我が子を見る時には、扁桃体(情動的価値評価)、前帯帯状皮質(情動体験)、島皮質(身体情報)、「側坐核(線条体)」(報酬系)が活性化する。
◎幸せ(喜び)表情時に活性化される脳領域は、両側扁桃体、左紡錘回(19野)、「右」前帯状皮質(32野:腹側前帯状皮質)である。
注1)紡錘回(紡錘状回)(後頭側頭回:19野)は、色情報の処理、顔と身体の認知、単語認知、数字認知、抽象化の機能を持つ。
注2)「顔認知」の中心的なシステムは、「紡錘状回」顔領域、「後頭葉」顔領域および「上側頭溝」で構成される。これらに加え、頭頂溝、聴覚領域、扁桃体および側頭葉先端部などが顔認知システムに含まれる。
注3)側頭葉先端部(側頭極)は、意味記憶や、相貌認知や心の理論、自伝的記憶の想起に関与など社会的情動的機能と関連が深い。更には、文章理解課題、情動を誘発する課題、社会認知を要求する課題等を遂行する際にも活動する。
◎上記に挙げた状況だけでなく広く快全般の情動回路が活性化する状況では、前頭前野眼窩部、前帯状皮質側坐核(線条体腹側部)、中脳ドーパミン神経が活性化する。
注1)接近行動をもたらす「快感情(情動)」は、「左前頭部」の相対的な活性化に関係し、逆に、撤退行動をもたらす「不快感情」は、「右前頭部」の相対的な活性化に関係する。左前頭葉の損傷部位が、左前頭極に近ければ近いほど抑うつの徴候はひどくなる。脳損傷躁状態を呈した患者は、一様に右半球(撤退行動をもたらす不快感情)に病巣のある確率が高い。これは、「左前頭部が快感情」に、「右前頭部が不快感情」に深く関与することを示唆する。
注2)接近(快)系反応は「側坐核」(報酬系)に、撤退(不快)系反応は「扁桃体」(嫌悪系)に特化する。
注3)「扁桃体」と「扁桃核」は同じものを指す。この本では、扁桃体に統一する。「体」とは、脳科学では一定の形と働きを持つものを意味する。「核」は、複数の「神経核を含んでいる」ことから付けられる。
注4)「核」または「神経核」は、中枢神経内で主に「神経細胞が密集する領域」からなり、何らかの神経系の「分岐点」や「中継点」となっている「神経細胞群」を言う。
注5)「ドーパミン」は、「側坐核」を舞台として、人にとって「良い行動」(報酬)をプラス評価して、「学習と記憶とを促進」させる作用がある。ドーパミン神経系は、一般的には報酬系と呼ばれており、選択した行動の優位性を学習記憶させる働きを持つ。つまり、選択された行動が本人にとって有利であった場合にドーパミン神経系が信号を送り、その行動をプラス評価して学習記憶させる。
注6)自律神経系制御と大脳偏側性の関係については、「交感神経系」が「右半球による制御」を優位に受け、「副交感神経系」が「左半球による制御」を優位に受ける。
疑問)快不快反応の受け持ち脳部位において、左右が真逆の説があるが、何故だろうか。
解)残念ながら、解決できず。
◎情動体験を司る前帯状皮質は、幸せ(ポジティブ)回想でも哀しみ(ネガティブ)回想でも活性化される。幸せ回想では右脳優位で、哀しみ回想では両側が活性化される。
◎快刺激を予測している時には、左背外側前頭前野、左内側前頭前野、右小脳の活動が見られる。不快刺激を予測している時には、右下前頭前野、右内側前頭前野、右扁桃体、左前帯状皮質および両側の視覚野(左右後頭葉、右喫部、左舌状回)の活動が見られる。
◎右脳と左脳というように、右半球と左半球とが分離しているが、大脳辺縁系(海馬、帯状皮質扁桃体など)も分離している。しかも、右脳左脳(大脳新皮質)は、大脳新皮質や更に下位の脳部位とも連絡している。間脳の上方は直接、左右大脳半球へ続く。つまり、2つの大脳半球は一つの間脳に繋がっている。間脳の最上部に位置する視床は、間脳の80%を占め、左右に分かれているが、ヒトの場合70%は左右が癒合している。視床間橋が、橋状に左右の視床を結ぶ。これはヒトでは退化的で、しばしば欠如する。なお小脳にも左右の半球がある。視床下部は、体内の不随意機能を主として担う自律神経系を管理制御する。