帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 15)発声、文字情報

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-2)前帯状皮質(個別機能)
15)発声、文字情報
◎単語を喋る「発声」時「発話」時や、歌を「歌う」時に活動する脳領域のひとつに「前帯状皮質」という部位がある。
楽な声の発声時の脳活性化部位として、両側中心後回(一次体性感覚野:3野)、両側二次体性感覚野(43野)、両側下前頭回(44野:運動性言語中枢)、両側中心前回(一次運動野、前運動野:4野6野)、両側上側頭回(22野:聴覚性言語野)、両横側頭回(一次聴覚野:41野42野)、両側島皮質(13野)、両側前帯状皮質(24野32野:認知機能:帯状皮質運動野)、両側小脳、両側補足運動野(6野)、両側中脳が挙げられる。
注1)6野:前運動野と補足運動野。
注2)中脳には、視覚や聴覚、眼球運動などの中枢がある。動眼神経核は、中脳の正中部、中心灰白質の腹側部に位置している。
注3)左右半球の脳領域の両方から投射があることを「両側」性、同じ側の脳領域から投射があることを「同側」性、反対側の脳領域から投射があることを「対側」性と呼ぶ。
◎視覚文字情報処理は左後頭側頭接合部下部、意味処理は左上中側頭部、聴覚的音韻処理は左上側頭部、構音的音韻処理は左前頭葉下部と島皮質、発話運動制御は運動野、補足運動野、小脳、自己発話モニターは左右聴覚野が機能を分担しかつ協調している。
注1)左側頭葉の言語中枢(ウェルニッケ領域)は、上側頭回の後ろの方22野。ウェルニッケ野は、22野40野にまたがる。
注2)構音器官(喉・舌・唇・鼻など)を使って言語音を生成する生理的過程、つまり音を作る過程を構音(発音)という。
注3)音韻とは、ある言語の音の体系であり、意味の弁別をなす最小の音声単位(例えば、お・ん・い・ん)である。
◎単語音読における「意味処理」には、左前頭葉下前部(47野)と左側頭極(20野/28野/38野)、角回(39野:聴覚性言語野)が関与する。
◎音韻検索には、左後頭側頭接合部下部(37野/19野:紡錘状回)と左前頭葉下部(44野・45野:ブローカ野)・島皮質が関与し、文字・音韻変換には、左縁上回(40野:ウェルニッケ野)が関与する。
◎まとめると、文字を読めば、「視覚野(後頭葉)」で「文字」としての認識分類処理をされた後、「後頭側頭下部」を経て「音韻」(角回)と「意味」(ウェルニッケ野)が検索され、「前頭葉弁蓋部」(ブローカ)と「島皮質前部」で統合的「構音的音韻」処理が行われ、発話に向けての「音声器官」に対応する左右の「運動野」などを経て「発話」される。発話された音声を左右「側頭葉上部聴覚野」が「モニター」する。
◎漢字・かな双方に対して、音と意味の処理で、左前頭葉下部(44野45野)が活動し、意味課題では更にその活動が前下方(47野)に拡大した。漢字を使用した場合、更に右小脳が活動する。かなでは属性によっては左縁上回(無意味かな列)や左上側頭同後部(有意味かな単語)に活動が見られる。
◎発話の「自動性」(意識的努力の必要度)や課題の「新規性」(未習熟で学習が必要な度合い)に応じて、背外側前頭前野と前帯状皮質や小脳の関与が生じる。
◎吃音の子供は、健常児と比較して、前帯状皮質の血流量が低下している。また新しい課題の習得や自己モニターの必要な複雑な課題の実行に関与する帯状皮質の過活動が認められる。吃音者の発話が非吃音者に比べて、自動性が低く、自己発話のモニターと流暢な発話の制御に問題を抱える。
◎言語流暢性課題においては、左前頭前野(背外側部)や前帯状皮質などが活性化する。
注1)言語流暢性とは、ある条件に合致する単語などを、特定の時間内にどれだけ話したり書くことができるか、ということを意味する。この課題は、多くの作業を並行して行うことを要求する。複数の作業には、前帯状皮質がその役割を担う。
◎前帯状皮質は、脳幹の中脳水道周囲灰白質に投射して、発声を制御する。より厳密に言うと、前帯状皮質は、発声に必要な情動的、動機的情報を発する。