帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 12)「外向性(背外側システム)と内向性(腹内側システム)」

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-2)前帯状皮質(個別機能)
12)「外向性(背外側システム)と内向性(腹内側システム)」
◎「前頭前野」が関わる上位階層の行動制御機構には、
(1)「前頭前野眼窩部」、「前帯状皮質」吻側腹側領域(「25野32野」)、「扁桃体」を中心とする「腹内側システム」(情動系)、
注)腹内側システムは、相互連絡が密な 、扁桃体、前帯状皮質吻側・腹側領域(25野32野)、眼窩部を中心とする制御システムである。刺激、反応、結果の随伴関係の変化に伴い、速やかに反応選択を修正(消去、逆転学習、衝動抑制)する。
(2)「前頭前野背外側部」 、「前帯状皮質」背側領域(「24野」)、「運動野」を中心とする「背外側システム」(認知系)
の 、2つの並列的なシステムが存在する。
参照)「認知」に関しては、「5-2)前帯状皮質」の「8)「認知」と情動と前帯状皮質(インターフェイス)」
◎腹内側システムは、価値競合事態(葛藤状況)におけるその解決に関与する。他方、背外側システムは、内的表象(記憶情報)の保持による下位システムの調整、ならびに、腹内側システムの抑制に関与している。
疑問)2つの並列的なシステム(腹内側システムと背外側システム)の階層(上下)関係はどうなっているのだろうか。
解)両システムには非対称的(対等ではない)相互関係があるが、絶対的な位置関係ではなく、腹内側システムよりも上位にある背外側システムだが、その調整(力関係)には限界がある。即ち、緊急事態においては、例えば、その時点の注意の方向とは関係なく「扁桃体」によって脅威・危機が検出された場合には、逆に腹内側システムへ優先的に処理資源が割り当てられる。つまり、平時においては、背外側システムが、腹内側システムより上位に位置するが、緊急時には、扁桃体を有する腹内側システムが逆転する。というのは、「扁桃体」は、外界からの危機をモニターする「警報装置」であるから。
◎上記の両システムを更に詳しく解説すると
1)側頭・頭頂-前頭葉の機能的連結(ネットワーク化)によって、注意の切り換えのきっかけとして作用する、外部環境や外部刺激に反応して起こる出来事を検出し、意図には依らない(無意識的)「受動(ボトムアップ)的注意」を起動する「腹側注意ネットワーク」(腹内側システム)がある。
2)前頭-頭頂葉の機能的連結によって、意図(随意)的に注意を割り当てる「能動(トップダウン)的注意」を担うのが「背側注意ネットワーク」(背外側システム)である。
1)受動的注意(受動的意識)の神経基盤は、側頭頭頂接合部や島皮質、腹側前頭葉(眼窩部)を中枢領域とする腹側領域(腹側注意ネットワークを形成)である。
2)能動的注意(能動的意識)の神経基盤は、頭頂間溝および前頭眼野(8野)を中枢領域とする背側領域(背側注意ネットワークを形成)である。
◎能動的注意を優先した状態では、受動的注意の活動は抑制される。反対に、受動的注意が機能的に優位な状況である場合(例えば危機事態や内省・瞑想時)には、実行的注意(能動的注意)の活動が減弱する。
注)トップダウン(意識・随意)的に、ある位置に注意を向けるとき、前頭眼野を含む上前頭前野(背側前頭前野)と頭頂間溝周囲の上頭頂連合野の活動の上昇がほぼ両側性に認められる。空間以外の視覚属性に注意を向けている場合も同様に、背側前頭前野-頭頂連合野のネットワーク(外側ネットワーク)が関与する。他方、予期しない、顕著な刺激によってボトムアップ的に注意が惹きつけられる際には、上述の背側ネットワークに加え、主として右半球の下前頭前野、下頭頂側頭境界部、左の帯状皮質と補足運動野の活動の上昇が認められる。このように、「背側ネットワーク」は、トップダウン的、ボトムアップ的な注意のいずれにも関与し、「これらを統合」することで行動に必要となる感覚情報の選択を行う。
◎(前)帯状皮質(24野)は、意識(トップダウン)的能動的注意を必要とする課題において起動する。遂行が自動(ボトムアップ)化され 、注意機能を必要としなくなると、活性化は止まる。
◎「記憶」と「予見(予期)」とには共通する脳神経活動のメカニズムがあり、前頭葉から頭頂葉にかけての大脳皮質の内側ネットワーク(腹内側システム)が、両方に深く関わる。
注)内向性=受動性=腹内側システム=腹側注意ネットワーク=ボトムアップ
外向性=能動性=背外側システム=背側注意ネットワーク=トップダウン
◎悲しみ(感情)を与える刺激を被験者に与えた時には、前帯状皮質腹側領域(32野)の活性化が生じる。その時、前帯状皮質背側領域(24野)と前頭前野背外側部(9野)の活性は低下する。従って、悲しみ(感情)を惹起する時には、認知的活動性(背外側システム)は低下する。逆に、認知的ストループ課題中には、前帯状皮質背側領域(24野)の活性化が増加し、前帯状皮質吻側腹側領域(25野32野)、眼窩部(11野12野)、扁桃体(大脳辺縁系)など、「腹内側システム」(内向性活動)の活性化は低下する。悲しみを紛らわせるには、身体を使うに限る。

内向型を強みにする

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