帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 8)「認知」と前帯状皮質(インターフェイス)

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-2)前帯状皮質(個別機能)
8)「認知」と前帯状皮質(インターフェイス)
◎「認知」とは、知覚・判断・想像・推論・決定・記憶・言語理解、を言う。更に詳しく解説すると、外界から目標対象を取り出して「知覚」し、過去に身につけた経験や知識、記憶、形成された概念を使用した「思考、考察、推理」など(知的処理)に基づいて、外界対象を「解釈する、判断する、理解する」内的行為である。そこには通常「情動が含まれない」。
注)認知症では、記憶・判断・計算・理解・学習・思考・言語を含む脳の高次機能における障害をいう。
◎大まかに言えば、認知は、「大脳新皮質の機能」であり、情動は、「大脳辺縁系の機能」である。記憶過程は、大脳辺縁系(海馬中心)が担うけれども、記憶結果(記憶内容)は、大脳新皮質に貯蔵される。
注)「情動」は、入力された「感覚刺激」への「評価」に基づいて生ずる、1)生理反応(自律神経系、免疫系、内分泌系の反応)、2)行動反応(接近、回避、攻撃、表情、姿勢など)、3)主観的情動体験の3要素からなる。
◎認知機能が働く状況で、更に「情動が誘発」されると、前帯状皮質の認知領域(32野)が、「認知」(大脳新皮質)と「情動」(大脳辺縁系)とを連結させるインターフェイス(連絡接続装置:懸け橋)として働く。つまり、「前帯状皮質」は、「認知」(冷静な知的判断)と「情動」(感情的判断)のインターフェイス(接点)や統合機能(相互作用)として働く。
◎認知的課題においては、前帯状皮質尾側部(24野:認知領域)が活性化する。前帯状皮質尾側部は、背外側前頭前野(9野46野)と双方向性の強い結合関係にある。また、帯状皮質運動野(24野32野背側部)は、前補足運動野や背側運動前野などの運動関連領域と密な入出力関係にある。それによって、情報を運動(行動)として出力する。
注)前頭葉運動関連領域と連絡する帯状皮質領域は、帯状皮質運動野とも呼ばれる。
◎「認知的制御ネットワーク」とは、「背外側前頭前野」、「前帯状皮質」、「前補足運動野」、「前部島皮質」、「前頭葉弁蓋部(44野)」、「背側運動前野」、「頭頂葉後部(下頭頂小葉)」である。この背外側システム(認知的制御ネットワーク)は 、「前帯状皮質背側領域」(24野)と「前頭前野背外側部」を中心とする行動制御システムでもある。前帯状皮質背側領域と前頭前野背外側部の活性化は 、二重課題、「フランカー課題」、ストループ課題など、 「注意」(積極性意識:トップダウン意識)を必要とする「認知」課題において起動する。しかしながら、遂行が「自動化」(習慣化:ボトムアップ処理)され 、注意機能を必要としなくなると、両部位の活性化は止まる。つまり、「運動野」(小脳を含めて)が後を引き継ぐ。
注)参加者に文字列を呈示して、その中央に呈示される文字に対して選択反応をさせるような課題を、「フランカー課題」と呼ぶ。
◎「遂行」機能とは、目的を効果的に達成するための「一連の認知活動」を指す。遂行には、目標設定、行動計画、実行、作業記憶、モニター、修正といった一連の作業内容を含む。1)「背外側前頭前野」がその機能の主体(中心的役割)を担う。そして、2)「前頭眼窩部、前帯状皮質」を中心とする前頭葉内側部も遂行機能に関与する。更に、3)「頭頂葉、側頭葉、線条体視床」などとのネットワークも重要である。つまり遂行機能と認知機能とは、かなりの部分が重なる。
注)背外側前頭前野は、9野、46野である。