帯状皮質って中間管理職なのか

帯状皮質(帯状回)について調べた事柄を本の形式で提示していきます。

帯状皮質って中間管理職なのか (5-2)前帯状皮質(個別機能) 5)「瞑想」(その一) 

帯状皮質って中間管理職なのか
(5-2)前帯状皮質(個別機能)
5)「瞑想」
5-0)「瞑想」と「睡眠」と「脳波」(アルファ波とシータ波)
◎「瞑想」と「睡眠」との違いについて。瞑想をすると、脳波はリラックスした状態である「アルファ波」が出る。次第に浅い睡眠状態を示す「シータ波」(アルファ波よりもさらにリラックスした意識がぼんやりしはじめたときに出る脳波)が現れる。やがて、「意識」が徐々に薄れて「無意識状態」となり眠りに落ちる。つまり瞑想と睡眠の決定的違いは、「意識があるかないか」である。
◎瞑想の深い状態では、「アルファ波」と「シータ帯域の脳波」が確認され、アルファ波の周波数が低くなることでシータ波に移行する。シータ波は、睡眠では、ノンレム睡眠の第1段階、寝入りばなにアルファ波と交代するようにして出現する。この脳波は海馬から出現しリラックスした状態を表す。この状態は覚醒と睡眠の境界上にあり、半覚醒状態で特殊な脳活動がみられる段階である。
覚醒中、脳内で「シータ波」が出ている状態は、「精神的に深く集中」していて効率のよい作業をしている時である。覚醒時でも「外部刺激が遮断」されるような集中した状態では、シータ波が発生し、記憶力が高まる。記憶や学習がはかどる環境が脳内で実現しているときにもシータ波が出ている。
5-1)瞑想の種類(集中瞑想と洞察瞑想)
◎瞑想には、特定の対象(例えば炎や呼吸)に意図的に注意を集中することで、トップダウン型選択的注意が高まり、持続的注意が高まる1)「集中瞑想」と、今この瞬間に次々と生じている感覚・感情・思考などの経験に特定の対象として選び出したり捉われたりすることなくありのままに気づく2)「洞察(観察)瞑想」と二種類ある。その内で洞察(観察)瞑想では、トップダウンの選択的注意が低下することや、平静さが高まる。
◎集中瞑想と洞察瞑想はどちらも、「内省を低下」させるし、「デフォルトモードネットワークの活動をも低下」させる。だから、瞑想は、内省でもDMN活動でもない。
注)自分自身の「認知活動」(主に思考や知覚など)を「内省」的に捉え認知する能力が「メタ認知」であるが、自分自身の記憶を回顧し内省する能力である「メタ記憶」(記憶に関するメタ認知)は、自身の行った認知情報処理を客体化し内省的に評価することが必要となる高度な精神機能である。
◎今この瞬間に生じている経験にありのままに気づく洞察瞑想時に、腹側線条体(報酬系)と脳梁膨大後部皮質(エピソード記憶機能)の結合性が低下する。つまり自分の過去の経験に関する記憶に捉われる程度が低下する。具体的に述べると、過去に自分が怒った体験を思い出すと、その思い出す時点でもその感情がわき出す人では、脳梁膨大後部皮質が活動しているが、そのような体験を客観・冷静に思い出す人では、脳梁膨大後部皮質があまり活動していない。
注1)エピソード情報の想起に関係する「脳梁膨大後部皮質」は、「視床前核」と「海馬」の両方に相互的な接続を持つ。洞察瞑想では、被殼において記憶領域を中心とするDMNとの関係性が減少する。
注2)腹側線条体は、扁桃体(情動)と海馬(記憶)からの強い投射を受ける。その内で腹側線条体は、快感・報酬・意欲・嗜癖・恐怖の情報処理に重要な役割を果たす。
坐禅、瞑想や呼吸法によって、雑念を持たず、リラックスしてただ今だけに集中して研ぎ澄まされている状態(洞察瞑想)になると、背内側前頭前野(額の真ん中部分)と背外側前頭前野の活動が低下する。瞑想によって、思考、感情を客観的に認識する気付きの能力に関する部位である前頭前野背内側部(コミュニケーション、共感、社会性に関わる領域)の容積が増大する。
◎目的の注意対象(例えば、呼吸・炎・仏像など)にだけ注意を集中する場合の瞑想(集中瞑想)では、「前頭極」(10野)と「前帯状皮質」が活性化する。前頭極は、共感、直感および自己意識に関連する。集中瞑想はセイリエンスネットワーク(SN)の活動を上げる。選択的注意や持続的注意は、背外側前頭前野が関わる。
◎モニタリング型(無集中型:洞察:観察)瞑想では、島皮質前部、体性感覚野、前帯状皮質が活性化する。
注)瞑想時や安静時には、「前帯状皮質が活性化」する。より詳細に述べると、集中瞑想の間、前頭前野の活動は広い範囲で抑えられていることが多いが、注意制御に関係する前帯状皮質背側部(24野)だけは活動を続ける。しかし、観察瞑想では、前帯状皮質および前頭前野の活性度は安静時と同じ程度である。